99.02.04 
 
……は、ないですね 
 
 大学のある研究室にみんなが集まって作業中、ふとAさんがBさんに問いかけました。その会話。 
Aさん「××さんから連絡ないですか?」 
Bさん「……は、連絡ないですね。」 
 ここの「……は、」を「ha」ではなく「wa」と読んでいただきたい。つまりBさんは「××さんは、連絡ないですね。」というのを省略して、「……wa、連絡ないですね。」と言ったわけです。 
 注意して聞いていると、Bさんはよくこの「……は、」を使っています。口癖なんでしょう。Bさんばかりでなく、この「……は、」を使う人はときどきみかけます。僕も使っているかもしれません。 
 「は」は助詞の一つです。助詞は、もちろんほかの単語に付属して使われるものです。それが文頭に来ているというのは、面白いですね。たとえ「××さんは」の省略であるとしても、文頭であることには違いない。 
 以前に触れた、文頭に使われる「だよね。」もこれと似ているかもしれません。この「だ」は、助動詞といわれるものです。助動詞も、他の単語に付属して使われるのがふつうですが、「だよね。」とか、「ですか。」などと文の始めに使われることがあります。 
 よくよく考えてみると、こういうふうに、文頭に使われる助詞・助動詞と、使われにくい助詞・助動詞があるようです。 
 たとえば、
 
「君でもそんなテレビドラマを見るの?」 
「*……を、見るんです。」
 
なんて言えるのかどうか。ちょっと難しいでしょう(「*」は架空の印)。「が」「に」「を」などという格助詞は無理っぽい。 
 一方、助詞でも「は」「も」などは文頭に立ちそうです。「は」は上に見たとおり。「も」については、以前、「も、ある。」とだけ記した広告コピーがあったような気がしますが、あれは何のコピーだったか? 
 「あるけれども」とか「あるが」などの「けれども」「が」(接続助詞)が文頭に立つと、それは「接続詞」と呼ばれる。でも、成り立ちとしては「……は、ないですね。」と同じようなもんでしょう。 
 助動詞では、「だよね。」の「だ」のほかに、「らしい」なども文頭に立つことができます。 
「今日は休みかな?」 
「らしいね。」
 
 一方、「れる・られる」「せる・させる」などの助動詞を文頭に持ってくることはなさそうだ。 
「君、振られちゃったの?」 
「*れちゃったんです。」
 
 これはあり得ない。 
 こうしてみると、ひとくくりに「助詞・助動詞」といっても、文頭に立つか立たないかで、何か性格の違いみたいなものがありそうな気がします。あるまとまった概念をうける助詞や助動詞は文頭に立つことができ、そうでない助詞は立てないということかと思いますが、詳しいことはまだよく調べていません。 
 
 
追記: 990515(おまけ)に関連記事。
 
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