哀愁のヨーロッパ オーストリア・ドイツ篇 第8話

1日2食の旅

おいしいものを食べたいけれど

旅行しようがしまいが、人は食べねばならぬ。どうせなら毎日おいしいものを食べたいと思うか、それとも倹約してつつましく食べるか。私はいつもこのせめぎあいで悩む。その結論が、「1日2食」である。ホテル料金が朝食込みであるなら、朝からしっかり食べる。そして、午後の空いた時間に座って食事をする。これは、歩き回ったあとの休養も兼ねる。貧乏旅行には喫茶店よりも公園のベンチが似つかわしい、それは確かだ。しかし、1日に1度は暖かい室内で憩いたい。今回の寒いオーストリア、ドイツ旅行では、昼食か夕食にレストランに行くことが多かったのは、贅沢というよりも、寒さからの緊急避難だった。

ウィーンに夕方着いた

9月18日、ウィーン。夕食なし。機内食をきちんと食べると、おなかが空かないものだ。そう言い聞かせる。

安ペンションの朝

19日。初めての朝食。ゼンメルという円盤状のパンと、バター、ジャム、コーヒー。このスタイルは、朝食の最低限の要素で、要するに安宿でもこれだけは出る、ということだ。ゼンメルは、横から真っ二つに切って上下2枚の円盤にして、あいだにバターとジャムをはさんで食べる。これは、ふたつ先のテーブルで食べている人を真似た。ウィーンでの4日間の朝は、まったく同じ繰り返しだった。

迷っている暇はない

朝7時から歩き回っていれば、当然腹が減る。この日は郵便貯金局にカールスプラッツ駅舎にゼツェシオンに造形美術アカデミーにウィーン美術史博物館を回って午後1時半を過ぎていた。空腹で、本当に死にそうだった。そういうときに限っていい店に出会わないものだ。こういう緊急の時に役に立つ店、セルフサービスで気楽に入れて、しかも間違いなくわかりやすく注文できるところがある。そう、世界中に店があるチェーン店、たとえばマクドナルドだ。ウィーンまで来てなんでマックに行かなきゃならんのだ、そう自問自答したが、本能は早く暖かい所へ、なんか食べるものを、そう要求している。楽友協会へチケットを買いに行く途中で見つけたマックに結局入ってしまった。ビッグマック、メキシカンサラダ、Lサイズのコーラで95シリング(約1104円)也。高い、そう思ったが仕方ない、自分の選択だ。この日の食事はこれで終わり。

スープと煮込みで暖まる

20日。同じ朝食。朝はナッシュマルクトという市場から行動開始。ただし、あまりにも早すぎて店がほとんど開いていない。何も買わず。昼食はミュラーバイゼルという居酒屋風の所で食べた。ビール、クネーデル(肉団子、この店ではレバー入り)スープ、グラーシュというハンガリーの煮込み料理。ふたつともウィーンでは定番の料理だ。クネーデルの本場はドイツのケーニヒスベルクで、料理名にケーニヒスベルク風とあれば、たいてい肉団子料理を指す。グラーシュがハンガリー由来のように、ウィーン名物とされる料理は外国から入って来たものが多い。有名なウィンナーシュニッツェルも、もとはミラノ風カツレツである。ウィーンが国際的都市であり続けている証しでもあるし、ウィーンが食文化では輸入超過でもあるということだろう。とりあえず、スープで暖まった。グラーシュには大量のパテが付いてきて、結局食べきれなかった。188シリングに12シリングのチップで、計200シリング(約2324円)。このあと、防寒用の服を物色して、革のジャケットを入手。ようやく寒さに対抗する備えが出来た。

やっぱり大量のポテトが

21日。空腹で目が覚める。例の朝食。午後1時過ぎにロイポルト・クプファーダハルへ。1階(日本風に言って)は居酒屋、地階はちょっと高めのケラーレストラン。ケラーはワイン倉庫の意で、ケラーレストランはワインを飲ませるところ。この日は1階でターフェルシュピッツという牛肉の煮込みと、白ワインを頼んだ。牛肉なのに白ワインなのは、ふたつ理由があって、一つはドイツ語文化圏では例外(フランケンワインのような)を除いて白においしいワインが多いこと、二つ目は、ターフェルシュピッツが薄味な煮込み料理で、赤よりも白が合うように思ったから。昨日の教訓を生かして、料理は一品にした。案の定、山盛りのポテトが付いてきた。ソースが二種、りんごとホースラディッシュを摺ったものと、タルタルビネガー。これをつけてターフェルシュピッツを味わう。エスプレッソでしめくくって255シリング。それに25シリングのチップで280シリング(約3254円)。ウィーンでは最後の贅沢な食事になった。

黄金色のカツレツ

22日。ザルツブルクへ移動。ホテルを決めて荷を解き、早速市街に出かける。昼食はゲトライデガッセという目抜き通りにあるブラウエガンスにする。メニュー(定食)から、ウィンナーシュニッツェルを選ぶ。スープとデザート付き。それにビール。スープはまたレバーのクネーデルだった。ウィンナーシュニッツェルには大量のポテトが付いてきた。薄くたたいた牛肉のカツは、宮廷では金粉をまぶしたそうで、庶民は色だけでも真似ようとこんがり黄金色に揚げることになったそうな。真偽は不明。デザートは杏のワインシロップ漬け。実はザルツブルクには有名なデザートがあって、その名をザルツブルガーノッケールという。巨大なスフレなのだが、とうてい一人では食べきれない。ひとつ向こうのテーブルでカップルが食べていたが、その大きさは半端じゃなかった。ウィーンでザッハー・トルテを試さなかったのも、そのすごい甘さを敬遠したからだが、ここでも見るだけにしていた方がよさそうだ。168シリングにチップ22シリングで190シリング(約2208円)。

高級レストランでパスタ

23日。ザルツブルクで泊まったホテルの朝食はビュッフェ形式で、パンもいろいろ。チーズ、ハムも数種類ずつある。ジュースもオレンジ、グレープフルーツ、トマトの3種類。それにシリアル。ミルク、バター、ジャム、それにコーヒーか紅茶。かごにりんごが山盛り。ウィーンの宿とはえらい違いだ。この日はヒトラーの別荘ツアーに行き、雨にたたられる。ツアーの後もモーツァルトの住家と生家を回って午後3時45分にホテルに戻り、シャワーで暖まり、衣類を着替えた。食事がまだだ。5時35分にホテルを出て、旧市街に向かう。途中、CDショップに寄った。イツァーク・パールマンのモーツァルトのコンチェルト集を買う。クレジットカードが使えなかったので、現金で払ったら、小銭しかなくなってしまった。カードが効くところで夕食をとるしかない。7時30分までにマリオネット劇場に行かなければ、と考えると選択の余地がない。手頃な値段のツム・モーレンでは満席だと断られてしまう。少し高いが、K+Kへ。ターシェルというパスタを頼んだら、ほうれん草と小麦粉で練ったラビオリだった。これに、ハーブとチーズがかかっている。生野菜のサラダが付いて128シリング。白ワイン、パンにバター、エスプレッソで結局221シリングをカードで払い、サービス料20シリングが勘定に入っていたが、小銭13シリングをチップにする。これで、オーストリアシリングはほとんど使い果たした。そのために、マリオネット劇場のパンフレットが買えなかった。計234シリング(約2719円)。

ミュンヘンならやっぱりビールとソーセージ

24日。朝食。今朝はぶどう、なし、りんごと山盛り。移動時の食料にとりんごを持って帰る。この日はミュンヘンへ。ホテル探しは3軒目でようやく空いていた。Hotel Helvetia。それから、新市庁舎で仕掛け時計を見物。明日の「アイーダ」のチケットを求めて駆けずり回る。そしてノイエ・ピナコテークへ。ここから電話してようやくチケットが取れた。さあ、食事だ。3時35分。ところが、店がない。結局レーンバッハ・ギャラリーまで歩いてしまった。おなかが静まらないまま、カンディンスキーなどを見る。りんごは部屋において来てしまった。5時5分、ギャラリーを出て、オデオン広場まで歩く。もうバイエルン州立劇場のすぐそばだ。ようやく、居酒屋っぽい店、ツム・フランツィスカーナーを見つけた。手前はカウンターの立ち飲みスペースで、奥に大きな8人掛けくらいのテーブルが2列に並んでいる。6時。もう夕食の時間だった。白ソーセージに白ビール。デザートにアプフェルシュテーデル(りんごのパイ)のアイスクリームがけ。途中からストラスブールからの観光客の老夫婦と相席になる。最後にエスプレッソ。味も量も満足だったが、勘定が遅い。これから、オペラの当日券を買おうという時に。ようやく24.3マルクに3マルクのチップで27.3マルク(約2010円)を払う。「イドメネオ」を観て、帰って寝る前にりんごを食べた。

オクトーバーフェストで1リットルのビール

25日。同じホテルだが、部屋を替わるので、荷造りをする。朝食は、ザルツブルクほどではなく、パン、バター、ジャム、コーヒー、ハム、チーズ、レバーペーストとクリームチーズ。今日はオクトーバーフェストに行くので、食事は当然そこになる。午後1時半ごろ、会場内のビヤホールへ。1リットルのビールが10.4マルク(約800円)。メッツガー・プラッテというソーセージの盛り合わせが20.5マルク(約1577円)。内訳はプフェルツァー、シュヴァインスヴュンスト、ブラウヴュンスト、レーベンクネーデル(以上すべてソーセージの種類の名)にザウアークラウトが山盛り。これだけで満腹で、パンを食べようとかサラダをとかいう気はおきない。

大聖堂を見ながら

26日。ミュンヘンからケルンへ。7時22分発、マンハイムで乗り換え。ライン川を右に見ながらケルン着が午後1時3分。駅を出てすぐに大聖堂がそびえたつ。しかしここは、逆方向に駅の裏に出て、ホテルを探す。あるある、勘が当たって小さなホテルが並んでいる。Hotel Brandenburger Hbf.。部屋の中にシャワーはあるが、トイレはない。一泊80マルク(約6154円)だから、まあいいか。駅を通り抜けて、大聖堂を見上げるオープンカフェで昼食。こういう場所は高くてよくないというのが通り相場だが、ケルン大聖堂の正面をゆっくり見上げる気分はなかなかのものだ。ケルシュビール(ケルン風ビール)はホップが効いていておいしい。それにグッゲレ・レスティというのを頼んだら、炙ったチキンをクリームソースとマッシュルームで和えたものだった。きゅうりとレタス菜がほんの少しに、大量のじゃがいものロティが付いてきた。計21.3マルク(約1638円)。ケルンでの3泊はゆったりしたもので、旅行途中の骨休めでもあった。この日も、大聖堂を見て散歩し、サッカーのチケットを買っただけ。あとは、ホテルでテレビを見ていた。

中華でお昼

27日。さあ、朝食。パン、バター、ジャム、ハム、チーズ、ゆで卵、ヨーグルト、オレンジジュース、コーヒー。今日は列車で1時間ほどのアーヘンへ行く。シャルルマーニュ(またはカールまたはカロルス)大帝のフランク王国の首都だ。ここでは、カロリング・ルネサンスの精華を見ることが出来る。めずらしい八角形の建築プランの大聖堂と宝物館を見ると、もうお昼だった。駅に戻る途中で見つけた中華料理店に入る。KINK LON(金龍飯店)。焼きそばと適当にビールを頼んだら、甘い黒ビールが出てきた。これは食事には合わなかった。いろいろなビールがあるものだ。焼きそばにはスープが付いていて、牛肉としいたけの酸辛湯(サンラータン)だった。汗が出るほど辛いがおいしかった。つづいて料理を温める台がまず出てきて、焼きそばの皿はそこに載せられた。それとは別に取り皿が出るというややこしいサービスだった。中身は、チキン、もやし、ねぎ。量が多くて往生したが、何とかたいらげる。計15.3マルクにチップ2マルクで17.3マルク(約1331円)とサービスの割には安くすんだ。この日はサッカーを観る日でもあった。サッカーの帰りに、あまりにおなかが空いたので、駅の自動販売機でチョコバーを買った。1マルク(約77円)の夜食。

駅の中はちょっと高い

28日。同じ朝食。今日はヨーグルトとゆで卵を持ち帰った。この日はやはり電車で1時間ほどのメンヒェングラートバッハへ。現代美術で有名なアプタイベルク美術館をゆっくり見て回る。駅を戻る途中に魚介類専門のセルフサービスのチェーン店ノルトゼーを見つけたが、あまりに混んでいたので、見送る。ケルンに戻って駅の構内のレストランにした。白ワインとよくわからないものを頼んだら、一昨日と似たようなチキンのマッシュルームソースだった。今回はライス添え。それにサラダ菜のヨーグルトソース。計31.5マルク(約2423円)はちょっと高かった。それからケルンの美術館を2軒はしごした。

チョコバーを2本買って帰る。ゆで卵と合わせて夜食にする。

トルコ料理を楽しむ

29日。ベルリンへの移動日。7時10分の列車に乗るつもりだったので、朝食をあきらめて、昨日のヨーグルトでしのごうと思っていた。が、6時40分のチェックアウトの時に「朝食を食べていかないのか」と聞かれて「え、もう食べられるの?」と聞き返すと、「もちろんOK」ということで、食べていくことにする。ゆっくりしている暇はない。またゆで卵とヨーグルトを取って置いてバッグに入れた。ベルリンまで5時間半。インフォメーションでホテルを予約し、てくてく歩く。ホテルに着いて、まず衣類を替え、ゆで卵でおなかを落ち着けてすぐに郊外のダーレム美術館に急ぐ。明日の月曜日は美術館の休館日なのだ。どうにか、1時間ぐらい見ていただろうか、5時5分前にドラを鳴らされた。午後5時、閉館。市内に戻る。夕食はトルコ・レストランのハジールで。メニューがドイツ語とトルコ語だったので、あせる。解読を試みる。ラムを白ワインとトマトソースで何とかしたもの、まではわかったので、それにする。やってきたのは、石鍋の煮込み料理で、サラダとライス、トルコパンが付いてきた。これもかなりのボリュームで、パンには全然手が付けられなかった。ベルリンに来たからには、飲み物はベルリーナー・ヴァイス。ただし、これはシロップ入りビールなので、食事には合わないと思ったが、やはりそうだった。面白かったのは、「赤か白か」と聞かれたことで、とっさに「赤」にした。仕上げにトルコ・コーヒー。計28マルクにチップ2マルクで30マルク(約2308円)。夜食は持って来たヨーグルト。

サラダバーでビタミン補給

30日。朝食はパン、バター、ジャム、ハム、チーズ、ゆで卵、ヨーグルト、フルーツシロップ、シリアル、オレンジジュース、ミルク、コーヒー。例によって、ゆで卵とヨーグルトは持ち帰る。今日は市内めぐり。カイザーヴィルヘルム教会やブランデンブルク門などを見て回る。明日のベルリン響のチケットを買う。壁博物館で時間を食ったので、5時20分にようやく食事。シュラスコというステーキのチェーン店。なぜかというと、ここにサラダバーがあったから。ここのメニューは英仏独露西伊蘭日の各国語。私はステーキ(ミディアム)とサラダのセットにアルトビール(茶色のコクのあるビール)。さっそくサラダバーへ。ズッキーニ、ねぎ、ピーマン、ハム、トマト、にんじん、きゅうり、レタス各種、マカロニなどと、3種類のドレッシング。ここでビタミン補給を図る。ステーキは150グラムだったせいか、付け合わせがないせいか、大きな皿に小さく見えた。ふと左を見たら初老のカップルが1キロはありそうな巨大な肉塊を取り分けていた。さすがは肉食民族だと深く感じ入った。エスプレッソでしめくくる。計25.15マルクに2.85マルクのチップで28マルク(約2154円)。そしてこの日は「インデペンデンス・デイ」を見てゆで卵を食べて寝た。

テイクアウトのピザ

10月1日。夜中に目が冴える。ヨーグルトを食べてまた寝た。朝食。レバーペーストを見つける。またまたヨーグルトとパンを持ち帰る。ペルガモン博物館、エジプト美術館と回ってノイエ・ナショナル・ギャラリーに行ったらなんと休館。それもなんと今日10月1日から11月2日まで! 何という不運。ふてくされてベンチに寝転がって空を見ていた。仕方がない。東側の巨大な工事現場沿いに歩く。途中のキオスク/インビス(という屋台というか売り場)でトルコピザ2.5マルク(約192円)と缶ビール2.8マルク(約215円)を買う。その場でピザを食べ、歩きながらビールを飲む。ピザはぼそぼそしておいしくない。ポツダム広場駅からザクセンハウゼン収容所跡へ向かった。1時20分。そして雨に降られて帰ってきて、ホテルの手前の店でピザとコーラ・ライトをテイクアウトする。合わせて7.4マルク(約569円)。ピザは電子レンジで温めてくれる。部屋に帰ってからゆっくり食べる。ツナとトマトのピザはなかなか美味。久しぶりに魚を食べた。そしてベルリン響のコンサートへと出かけたのだった。

ブックフェアのフランクフルトは高いぞ

2日。早い朝食の後、フランクフルト行きの列車に乗る。最終的にはミュンヘンまで乗り換えなしで行く予定の長距離列車だ。ところが、遅延。しかも、途中のゲッティンゲンで乗り換える羽目になり、結局1時間遅れで着いた。午後3時40分。フランクフルトは、恐れていた通り、メッセ(見本市)の時期だった。それも、ブックフェアだった。よっぽど行こうかと思ったがプライベートで来ているのに仕事に関係したことを考えるのも業腹なので、行かないことにした。ホテルは通常時の2倍。それでもなかなか空いているところはない。なんと220マルクに朝食25マルクの245マルク(約18845円)! 狭い上にテレビはこわれていて、ミニバーがあるわけでもない。とりあえず、ヨーグルトを食べて落ち着く。

アルスター・ビールは美味

シュテーデル美術館へ。7時に美術館を出て、レストラン探し。すでに暗い。やっと見つけたところは満席。マイン川の南域を東上する。7時55分、ようやくトルコレストラン・タンデューレで席を見つけた。もっと正確にいえば、アナトリア・レストランというのだろうか。ツュリュルという、ラムと野菜を小さな土鍋に入れたポット・ローストと、アルスター・ビール。野菜は豆、じゃがいも、ズッキーニ、トマトなど。ビールは酵母が生きていて、やや甘く、コクがものすごくあってホップが効いている。やはり、ドイツのビールはレベルが高いと思った。クスクスのようなものが付いてきたが、結局手をつけなかった。たぶん、鍋に入れてスープでふやかして食べるのだろう。途中から若いカップルと同席になったので、食べ方を注意して見ていたら、やはり、そうだった。トルコ・コーヒーはベルリンの店よりおいしかった。計26.5マルクにチップ3マルクで29.5マルク(約2269円)。

ドイツ最後の食事はイタリアン

3日。いよいよ日本に帰る日。25マルクもの高額の朝食は、と思ったら、スモークサーモンがあった。あとは、だいたい同じ。今日はシリアルとミルク、ハム、チーズ、ヨーグルト、コーヒーにする。8時半にチェックアウトして、駅のコインロッカーに荷物を預ける。飛行機の出発は午後7時40分。時間は有り余っている。がらくた市を冷やかし、教会の鐘を聴き、ゲーテハウスを訪ねる。ストリート・ミュージシャンを聴いて回る。ドイツ最後の食事はイタリア・レストランのオープン・カフェでとった。リストランテ・ラファエロ。生ハムとトマトとモッツァレラのピッツァにフランクフルト名物のアプフェルヴァイン(りんご酒)。ピザはイタリア風に薄くクラフティーな生地で、パリパリとおいしい。りんご酒は甘酸っぱく、フルーティではあるが、食事にはあまり合わない感じ。道ではギター、バイオリンとフルートのトリオが音楽を奏でている。空は青く澄み、太陽の陽射しは優しい。最後の日は、本当によく晴れた。まだ、午後2時15分。「アヴェ・マリア」。「イエスタディ」。食後にはエスプレッソ。計18マルクにチップ2マルクで20マルク(約1538円)。

空港に向かうまで、私は大道のさまざまな音楽家たちを聴きつづけていた。

哀愁のヨーロッパ オーストリア・ドイツ篇 第8話 【1日2食の旅】 完

text by Takashi Kaneyama 1997

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