スピーカーの話・リローデッド

スピーカーの話は 1年半ぶり である. このヤマハのスピーカーについては, 読者の方から「ウチのも変な音です」というレポートをいただいたので, つまりそういう製品なのだろう. 変造して多少まともにはなったものの, もう一つのスピーカー をまとも?なアンプで駆動したほうが, 当然良い音がする. なので, 結局アクティブスピーカーの方は捨ててしまった.

しかし, アクティブスピーカーを使うこと, それ自体をあきらめてしまった訳ではない. というか, ネットで「これはイイ!」という記事を読むとほしくなるという, つまり通販にハマるパターンそのものである (笑). で, はまった結果買ったのがこれ.

TimeDomain Miniタイムドメイン ミニ

激賞記事はインプレスと, iPod 関連のどこかにあった気がする. 仕様や素性は メーカーのサイト を見ていただきたいが, ほぼ同じ形の OEM 版が富士通のパソコンにバンドルされ, さらにその後秋葉原に大量に流れたということなので, 知っている方は意外に多いかもしれない. 買ったのは本家が売っている方なので, なかなかすごい値段である.

肝心の音は, 前回のヤマハよりはずいぶんとマシである. 「今まで聞こえなかった音が聞こえる」というのは嘘ではない. というか, 実は「低音も高音も出ないので, 中間で埋もれていた音が聞こえる」といったほうが良いように思う. しかし, 低音はともかく高音までないのはどういうことなのだろうか.
しかも, ロック系音楽で時として安っぽい, ラジカセ的な音が出てくることがある. メーカーは「そういう音楽を聴くようには作っていない」というかもしれないが, クラシックだけならたいていのへぼスピーカーでも「それなりに」は再生できると思う. 第一, スピーカーは楽器ではないのだから, 「この音は出ません」では済まないのでは?

しかし, ここで不思議なことがある. このスピーカー(目玉の部分)のリードに直接外部アンプをつなぐと, ロック再生時の破綻がないか, あまりないかで済むようである. もちろん高音も低音もあまり出ず, 茫洋とした音ではあるけれども, この方がよほどマシだ. ということは, 問題はアンプ部なのだろうか. そこで, 例によって分解してみよう.

基盤表側.  アンプは東芝製基盤表側 基盤裏側.  半田付けは手作業?基盤裏側

半田付けは手作業のようで, 中国でしか作れないだろうという点については納得. アンプの IC は東芝製ラジカセ用で, スペックはそれほど悪くはない…が, よく見ると測定時はスピーカーのかわりに 4Ωの抵抗がつながっていた. スピーカーはコイルだからインピーダンスは周波数に依存するが, まともな抵抗はそうではない. こんなことで良いのだろうか.

コンデンサと抵抗については, 大体東芝の測定回路と同じになっている. アンプの - 入力のコンデンサだけ大きめになっているのは, 低音を稼ぎたかったからだろうか. 抵抗には名前が書いてないので素性はわからないが, ケミコンは 中国製 の標準品のようだ. 中国製はともかく, なぜオーディオ品ではないのだろう. もしかしてアンプは OEM 品と一緒ではないだろうか?

いい加減がっくりきたけれども, よく考えてみるとこれで心置きなく変造できるというものかもしれない. 「今日トク」 推奨は電流帰還アンプ (「負荷帰還アンプ」の方がしっくりくると思う) だが, この IC はゲインを決める抵抗が半分だけ内蔵されていて自由度が乏しく, それはまだ良いとしても基板のパターンカットが必要なので元に戻すときには大変である. それに, 「標準品のケミコンではオーディオはムリ」とは聞いているが, どのくらい差があるか聞き比べたことはない. そこで, 出力のカップリングコンデンサだけ, サンヨーの OS コンにしてみることにした. ここを選んだのは, もし効くとすればここだろうと思ったからである.

標準品と OS コン.  サイズはおよそ倍左:純正 右:OS コン

しかし問題が. OS コンは純正品よりもかなり大きく, どう考えてもオリジナルの場所には入らない. 少し考えて, 電源スイッチを取ってしまうことにした. ケースを切ればコンデンサを縦に実装できるだろうけれど, 後で元に戻すことを考えて横向きにする.

実装後.  スイッチのあった場所から見えるのが OS コン実装後の状態

これで音を聞いてみる. プラシーボ効果のおかげか (笑), 今までよりも破綻は少ないようだ. しかし再生音域は元のままで, ヘッドホンはおろかソニーの普及品スピーカー (+ マランツのアンプ) にも負けている. つまり, ウチではこのスピーカーの出番は依然としてなさそうだ.

よく考えてみると, これは不思議な商品である. 確かに定位は優れているが, BGM を聴くには定位は必要ない. 中音域に限って言えば細かい部分まで聞き取ることができるが, それは高音域と低音域の犠牲の上にあるようだ. ヘッドホンならば (モノにもよるが) 高音も低音ももう少し聴ける上に, 細かい部分もきちんと聞き取れる. だいたい, スピーカーで音楽を聴く人のどれだけが細かい部分を聴こうとするのだろうか.

メーカーはいったいこれをどう使わせるつもりなのだろう.

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