§.横帆船(square-rigged ship)



 船首尾線に対して直交する帆桁に取り付けられる、左右対称の帆を横帆と呼ぶ。この横帆を主とする帆船が横帆船(おうはんせん)である。シップ、ブリッグ、ケッチなど。

ここに掲げた画像はすべて帆船模型同好会「ザ・ロープ」展示会で展示されたものでである。


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シップ、全装帆船(ship, full-rigged-ship)

3本以上のマストすべてに横帆を備えた比較的大型の帆船。shipの語は船舶一般をさすとともに、特にこの装帆を指す場合がある。

シップ装帆は軍民ともに広く用いられた。英国海軍では排水量400トンほどの等外艦(砲18門前後)から3000トンを越す1等艦(砲108門)までがシップ装帆で、東インド会社も英国=インド間の航路の輸送船(East Indiaman: 東インド貿易船)にこの装帆を採用していた。

 
バーク(bark)

3本以上のマストのうち最後尾のもののみ縦帆、それ以外は横帆を備えた比較的大型の帆船。船首像や船尾回廊はない。商業的な利用を目的として建造されたため、フリゲートに比べて船体が太く、積み荷を多く積めるように設計されている。英国では特に石炭輸送船に用いられ、キャットと同じように頑丈な構造であった。

なお、地中海には同音・同綴ながら、全く異なった装帆の「バーク」があるので、注意が必要である。

キャット(cat)

3本のマストのうち、最後尾のもののみ縦帆、それ以外は横帆を備えた、比較的大型の帆船。ほぼ同じかたちのバーク(上記)との違いは各マストが1本の円材でできており、トガンマストがないことである。

キャット船は主にノルウェー、スウェーデン、デンマークなどの北欧で用いられ、英国でも石炭輸送船として用いられた。船尾は細く、中甲板は深く作られており、船体全体が頑丈にできている。また、船首像を持たない。

ブリッグ(brig)

2本のマストに横帆を備えた比較的小型で、2本マスト船としては最大級の帆船。後方にあるのがメインマストになる。主として商用に使われたが、軍艦としても重宝された。

英国海軍では砲14〜18門を備えた等外艦として沿岸警備や通商護衛に用いられた。排水量に対して武装が極度に大きく、転覆しやすかったようである。また、船内容積が小さく、乗組員は上下二重にハンモックを吊るなど、居住性が悪かった。

スノウ(snow)

2本のマストに横帆を備えた比較的小型で、2本マスト船としては最大級の帆船。軍民ともに使われた。ブリッグとの最大の違いは特殊な構造のメインマストにある。

メインマストのロワーマストが前後2本になっており、トップで接合されている。後方の細いマストにスパンカーが取り付けられる。この形のマストは特に「スノウ・マスト」と呼ばれる。また、軍艦では細い方のマストをホース(horse)と呼ばれる静索に換える場合もある。

ケッチ(ketch) 、ホーカー(howker)

2本マストの小型帆船。前檣が後檣に比べ異常に大きいことが特徴で、横帆艤装の場合と縦帆艤装の場合があった。前にあるマストが主檣になる。

「ケッチ」は主に軍艦を指す言葉で、商船は「ホーカー」と呼ばれていた。軍艦としてのケッチは主に連絡用に用いられた。その他に、広大な前甲板を利用して臼砲を据えた爆弾ケッチ(bomb ketch)があった。爆弾ケッチに関しては後に詳しく触れる。


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