「近衛兵の鉄人」陸軍総司令部編


 ロンドンに着いて2日目。真っ先に私が行ったのは陸軍総司令部前の衛兵の交代でした(おバカ)。
 バッキンガム宮殿や聖ジェームズ宮殿、そしてウィンザー城では近衛歩兵連隊が警備についていますが、ここでは近衛騎兵連隊のライフ・ガーズ(緋色の軍服)、とブルーズ・アンド・ロイヤルズ(紺の軍服)が警備についています。
 この日は4月初頭、暦の上では復活祭を過ぎて春だというのに、最高気温がひとケタ。そんなわけで、英国陸軍の最精鋭部隊といえども大外套(グレート・コート)を着ていました。これがまた、英国屈指の兵隊さんに不似合いなほど「らぶりー」なデザインで、ちょっとおかしかったです。
 大外套は寒ければ着て、暑ければ脱ぐようで、後日前を通りかかったら大外套は着ていませんでした。6月1日を過ぎたらどんなに寒くても夏服で登校しろという似非教育者に近衛兵の足の爪の垢を煎じて飲ましてやりたいです。ジャック・ブーツの中でほどよく醗酵して、さぞ……食事中の方、ごめんなさい。


画像をクリックすると大きめの画像が見れます。このページへはブラウザの「戻る」でお願いします。

陸軍総司令部の門衛


 交代前。警備に当たっていた部隊はライフ・ガーズでした。ライフ・ガーズの創設は名誉革命(17世紀半ば)にまでさかのぼります。

司令部敷地内の下馬騎兵


 ナポレオン戦争の頃は第1ライフ・ガーズと第2ライフガーズの2個連隊がありましたが、後に1個連隊に統合されて現在に至っています。

旧警備部隊(old guards)の一部が中庭に入場


 交代式は司令部の中庭で行われます。観光客は自由に門をくぐって中庭に入ることができます。しかし、現場での観光客の整理に当たるのはロンドン市警(新スコットランド・ヤード)の警官でした。

旧警備部隊(の一部)が整列

 バッキンガム宮殿ほどメジャーではないせいか、観光客の数はまばらでした。観光客の話し声も英語が主力で、英国人が多かったように思います。ちょこっとフランス語があったかな? 日本人は私をのぞいて皆無。

新警備部隊(new guards)が入場


 新警備部隊はブルーズ・アンド・ロイヤルズでした。これはブルーズ(ロイヤル・ホース・ガーズ)とロイヤルズ(近衛竜騎兵第1連隊)が統合されてできた近衛騎兵連隊で、それぞれ17世紀に設立された名門連隊でした。

新警備部隊が整列


 ロイヤル・ホース・ガーズは創立当時、英国の騎兵で唯一、青い軍服を着用していたために「ブルーズ」と呼ばれました。なお、ナポレオン戦争の時点で英国陸軍で青い軍服を着ていたのは、軽騎兵と砲兵、乗馬砲兵でした。

新警備部隊の半数が配置に向かう


 どこの「衛兵の交代」でもそうでしたが、交代は半数ずつ行われます。旧部隊半数が入場→新部隊全部が入場→新部隊半数が出場→旧部隊残り半数が入場→旧部隊すべてが出場→新部隊残り半数が出場、という式次第でした。

旧警備部隊が撤収


 とにかく、これだけの馬が集まるので、その臭気は大したもの。私は写真を撮る(しかも、コンパクトカメラで撮る)都合上、場所を選ぶことができませんでしたが、その必要のない人は風下は避けたほうが良いと思います。

新警備部隊の残り半数が配置に

 向かった後に残されるボロ(馬糞)。馬の汗とともに、これも臭いの元。乗馬が趣味の人には芳香だということですけど……ねぇ。「ロンドンは馬の臭いがした」とはホーンブロワーの感想ですが、当時はそれこそ街中、馬だらけだったわけで、大変なものだったことでしょう。

観光客のおもちゃにされる門衛


 馬には直接いたずらをしてる人もいて、馬はマジで嫌がってましたが、乗っている人が頑として「動くな」とやっているので、すごいストレスだと思います。下馬騎兵の周りでは観光客が肩に手を回す真似やアカンベをしながら写真を撮ったりしてました。相手が最精鋭部隊の人間であることはわかってやってるようで、そういうそぶりでした。からかう場合は覚悟を決めて、自己責任でお願いします。


次へ

「英国に行ってきました!」の表紙へ