10月22日


ペルージャ対ネスター
マルシアーノ(ペルージャ郊外40キロ)
天候:晴れ、気温:22度

 ペルージャは毎週木曜日に恒例の地元アマチュアクラブとの練習試合を行う。この日は、ペルージャからローマ方面に向かって約40キロにあるマルシアーノのクラブ「ネスター」と対戦し、先発メンバーは前半45分を4対0で終了。中田は、2点目となったストラーダへ右足でロングパスを出し、これがアシストとなった。また27分、PKを得た際には、カスタニェル監督らベンチと選手からの「ヒデ、ヒデ!!」のコールによって、中田がキッカーに指名された。右足でネット右上にゴール。
 後半からは、開幕戦出場以来2軍に落とされていたメッリ、21日に加入したばかりのペレイラらが出場した。

 ペルージャのフォーメーションは4−4−2。

GK
ロカッティ
DF
リーパ
リバス
ゼマリア
マロネロ
MF
オリーベ
カンポロ
中田
ストラーダ
FW
マスペロ
ブッキ
前半の得点経過:
 04分 1-0 オリーベ
 10分 2-0 ストラーダ(中田からのパス)
 27分 3-0 中田(PK)
 44分 4-0 オリーベ

「ペルージャのキッカーはナカタ?」

 試合後カスタニェル監督は「中田はPKを決める力のある選手だし、たまにはフィールドゴールばかりじゃなくてPKも蹴れるって見せとかないとね」とジョークを飛ばしながら、開幕前の練習試合以来のPKを中田に促した理由を説明した。中田のセリエでのPKには「経緯」もあり、決してジョークだけのものではない。
 移籍して最初の練習試合ノルチャ戦ではPKでの初得点を決めている。また、開幕のユベントス戦では2ゴールを奪った後に、これを決めればハットトリックというPKチャンスが巡ってきた。しかし、チームメイトは中田にボールを渡さなかった。
 この一件を巡って「ハットトリックというビッグチャンスなのに、なぜ中田に蹴らせないのだ」と怒った会長に反論したトバリエリが完全に干され、その後も火種を消すことができないまま、21日解雇されている。
 さらに、この日の試合後行われたイタリアメディアと監督のインタビューによれば、このチームで常にPKを蹴ってきたベルナルディーニもサレルニターナに移籍し、交換要員にMFのテデスコが加入する緊急トレードが実現する可能性が高いという。
「ナカタには今後もPKを蹴ってもらいたい」と監督が最後に話した通り、この試合で中田にいわば「PK権」を与え、仲間にもそれを示しながらチーム全体の「パワーバランス」を整える、中田のPKにはそういう意味合いが込められたようだ。
 そういえば、中田のプロ初PKは入団した年、満員の国立競技場で行われたスーパーカップだった。川崎との対戦はPK戦にもつれ込み、当時の古前田監督とニカノール監督は高校を卒業したばかりのルーキーにPKを蹴らせた。結果は外れ。そして敗戦。しかしその時、監督が「PKを蹴るというのは、環境が変わったときには非常に重要なものです。私とニカは中田を新人扱いするつもりは毛頭ない、という意味を込めて蹴らせた」と、話していたのを思い出した。
 東洋人への差別、チーム内では「会長のお気に入り」という有り難くないレッテルを貼られ、仲間との様々な軋轢を越えて、「お前が蹴れ」と言われるPK。地元のアマクラブとの対戦で決めたこと自体には何の意味もないが、カスタニェル監督の狙い通り、ある権利を手中に、しかも開幕からわず1か月目で手したPKだったとしたら、決してどうでもいい1点ではなかったように思う。

「まあまあ、かな」

 グラウンドの横には小屋のようなロッカーがあり、そこからバスまで約100メートル、中田がロッカーを出ると、地元の子供や年配のファンに囲まれて身動きが取れない状態となってしまった。バスに乗り込んでもなお、こちらのファンはタフで、バスに一緒に乗り込んでしまう。特に子供たちはあきらめず、試合終了後、バスが出発するまでそこにへばりついていた。大変な人気である。年配のファンが、サインをもらってガッツポーズをしているのを見て、おかしくなった。
 あまりの混乱で中田と直接話すチャンスがなくなってしまった。しかし、バスに乗り込んだあと窓からこちらを見つけて、「ソーソー」と、これはポルトガル語で「まあまあ」というような意味で、手のひらを揺らす仕草で応えて笑顔を見せていた。ブラジル選手・ゼマリアとは非常にいいコンビネーションで、彼は「ナカタとのプレーは非常に楽しい。セリエではもう何年もやっているような選手だ」と話す。 
 22日には地元のインタビューを受け、セリエA6試合目となるパルマ戦については「守備も重要なポイント」と話し、「自分が得点できなかったことにがっかりしているか、それとも勝ったことがうれしいか」と聞かれて、「もちろん勝ったこと(ベネチア戦)」と答えていた。
 23日は午前練習1回でその後日本のマスコミとの定例会見。Jリーグでは試合前の前泊が基本だが、ペルージャは金曜日の晩から2泊の合宿でホームゲームに臨むそうだ。

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