3月27日

「ナイキフープサミット」田臥勇太
(米国フロリダ州、オーランド、ディズニーワールド内体育館)
天候快晴、気温25度

 26日午後には、25日と同じく地元の学生などの混合チームと練習試合を行なった。田臥は、この日は前半のラスト10分と、後半のラスト10分に出場し残り5分から4分、3分と、3本立て続けに速攻からのアシストをし、速攻からの組みたてには必要不可欠な存在であることを印象付けた。
 先発についてガンバ監督(イタリア)は「この大会はスカウティングのためのものでもあり、選手全員(12人)を均等に起用することが重要になる。あらゆる局面で選手の良さをアピールできるような起用をしてやりたいし、1人15分から20分は等しいチャンスを与えなければならない」と明言。こちらで27日朝の練習を待って選抜メンバーを決めるが、この3日間は、田臥がトップで今回の中心選手となるロシアのミロセドフと2人でガードを組むフォーメーションの練習を積んでいる。
 また全米選抜も26日午前、午後と練習を行った。カーリング監督(ユタ州・アルタハイスクール)は「昨年は負けているし、過去の対戦は2対2のイーブン。快勝したいと思っているし、準備は十分に積んでいる」とし、すでにNCAAに進学を決めている10人を擁して合宿を2週間行ったという。完成度は、世界選抜に比べるとはるかに高く、過去の米国選抜史上最強のジュニア、とされている。
 27日午前10時からは(日本時間、28日午前0時)大会前最後の練習を紅白戦で仕上げて、夜には田臥自身が目指しているNCAA(全米大学体育協会)の「ファイナル4」の観戦に行くことになっている。

「NIKEフープサミット」大会ガイド
日時 3月28日午後3時(日本時間:29日朝5時)
場所 フロリダ州タンパ大学内ボブマルティネスセンター(約3432人収容)
主催 全米バスケットボールコーチ協会が、タレント発掘のためにNIKEのバックアップで95年にスタートさせた。
対戦 全米高校生のトップ12人で構成される99年全米男子ジュニア選抜(高校最上級生)と20歳以下の世界選抜12人(出身国は、ギリシャ、マケドニア、ブラジル、クロアチア2人、ロシア、スロベニア、ナイジェリア、ユーゴスラビア、フランス、カナダ、日本)
過去の対戦 2勝2敗
98年世界選抜104−99米国
97年米国97−90世界選抜
96年世界選抜104−96米国
95年米国86−77世界選抜
優秀OBの進路 昨年はこの大会に出場した24人のうち、9人が昨年のNBAドラフトに指名されており、4年間で54人がNCAA35大学へ進学活躍をしている。
適用ルール インタナショナルルール(ただし3ポイントラインについてはNCAAルールを適用)
中継 現地ではESPNが生中継。日本ではスポーツ・アイ−ESPN(CS放送)で3月30日(火)よる7:30より録画中継。

「スペシャル・インタビュー」

 今回、世界選抜の監督を務めるのはサンドロ・ガンバ監督で、過去選手としては2度、監督としても2度のオリンピックを経験し、モスクワでは銀メダルを獲得。イタリア・ミラノ出身で、日本ではサッカーで知られる名門クラブACミランなどで指導経験を持つ、欧州では屈指の指導者。厳しい反面、常にユーモアを絶やさない。
 日本から田臥の取材に来たことを伝えると、「それはよかった。質問がある。私はもちろんサッカーを心から愛するんだが、ペルージャの素晴らしい日本人について、彼の発音は『ナカアタ』(ア、にアクセント)か『ナ・カ・タ』なのか」といきなりジョークを飛ばしてきた。
 監督に話しを聞いた。

――今回の世界選抜をどう思われますか
監督 荒削りだが非常にいいタレントが揃っている。この大会は特殊なもの(スカウティング)で、彼らのいいところを引き出して見せてやらねばならない。パス1本でも、シュート1本でも、非常に重要な意味を持つからだ。ここまで23日から4日間の練習では、大きな成果をあげたと思う。

――日本からも初めて参加していますが
監督 ユタ(ユウタが言いにくいらしく、全員がこう呼んでいる)のことはもちろん事前にビデオや分析で情報は得ていた。しかし実際に見てみた印象は、これほどボール扱いの上手い選手は久しぶりに見た、という気がする。ベーシックなことだが、彼は非常に注意深くボールを扱い、常に「次の何か」に備えている。重要なことだ。もう1点はスピード。ここ2日間は速攻の練習を多くしたが、彼がコートにいるときといないときでは、バスケットのスピードが著しく違っている。速攻からのアシストは、今大会でも注目を集めると思うし、見せ場は作りたい。

――体は小さく、普通のことが普通にできない、と本人は話していました
監督 もちろんだろう。しかし、米国選抜のガードも大きくはない。私自身イタリアでのキャリアをガードとして積んでいる。身長はこの競技において、重要かもしれないが、絶対条件ではない。ダンクを華やかにしても、普通にランニングシュートを決めても2点だ。

――田臥に対して、もっと声を出しなさい、と盛んに指示をされてますが
監督 ナカタも黙々とプレーをしているね。日本人の遠慮の思想と、しゃべることがあまり美徳でないことは私も十分に理解はしている(笑い)。しかし、ユタの場合、遠慮しすぎだ。ポジションがハイスクールとは違う(能代では1番ではなく、ここでは1番、との意味)戸惑いはあると思うが、私から見れば、彼のタレントはどちらでも十分に発揮される。もっと仲間にアピールして欲しい。今回は9か国語が飛び交う構成で、便宜上英語にしているが、ユタは英語が分からない、と言いながら、実はわたしのバスケットの指示をもっとも早く、かみくだいてしまったことを披露しておく。

――この年代の少年たち、しかも何か国もの選手をまとめるのは難しいのでは
監督 本当にそう思う。みな自分がキング、と思っているし、初日、2日目はばらばらだった。わたしが彼らに教えたいのは、いいバスケットをすることはハーモニーであり、相手への思いやりであり、それをいつも忘れずにプレーをすれば、想像もできないほどのプレーが可能になるということだ。若く才能にあふれる選手は時に、何のためのバスケットか、それを忘れる。例えば、ロシアの選手の才能はこのチームでももっとも高いと思う。しかし、彼は時々自分だけのためのプレーをする。わがままなプレーは、結果的に自分自身の才能の芽を積む。強い個人プレーをベースに、それをわがままではなく結集させればいい。

――田臥に、米国での将来はありますか。もちろん、それが簡単なことではないことは明白ですし、NCAAのトップのシーズンはタフなものです。いわゆるリップサービスではなく、率直な意見を伺いたいのですが
監督 誰にも可能性はある、というのが正しい答えで、誰についても同じだろう。彼の希望が、簡単に叶うものではないことは、彼が一番分かっているようだ。ただしこれは言えると思う。今回、発表された選手の資料の中では、彼に関するものがもっとも短いが(英語の紹介文には、日本No.1高校生プレーヤーで、アジア最高のパサー、としか書かれていない)恐らく、これはもっと加えられるし、みんな驚くと思う。彼は、ベストを尽くしてエンジョイすればいいい。すべては後からのことだ。

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