2003年8月2日

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Jリーグ

J1 1stステージ第15節第1日
横浜F・マリノス×ヴィッセル神戸
(神奈川・横浜国際総合競技場 )
キックオフ:19時4分、観衆:59,728人
天候:晴れ、気温:27.5度、湿度:81%

横浜FM 神戸
3 前半 0 前半 0 0
後半 3 後半 0
67分:中澤佑二
77分:中澤佑二
83分:奥 大介



 今季から岡田武史監督が指揮を執った横浜F・マリノスが、第1ステージ最終戦にもつれこんだ優勝争いを制して、3年ぶり3度目の優勝を果たした。
 首位の横浜FMは勝ち点29、2位磐田は28、3位市原も27と3つ巴で迎えた最終戦で、横浜FMは前半、6万人近い観衆の声援と優勝を目前にしたプレッシャーから動きが硬く、ショートパスをつなぐ慎重なプレーに終始し、サイドチェンジもできなかった。守備を固めカウンターを狙う神戸を崩すことができず、フリーキック以外ではシュートわずか1本と、完全に相手ペースに巻き込まれた格好となった。しかし後半、サイドからの攻撃と効果的な縦パスから、DFラインの後ろをつく形で揺さぶりをかける。後半22分、ゴール前の混戦からDF中澤佑二がこれを拾ってヘッディングで先制。緊張が切れた神戸にたたみかけるようにゴール前へサイドからクロスを展開し、32分には左コーナーキックからまたも混戦となり、中澤が右足で押し込んでゴール。目前の神戸を突き放すとともに、そのわずか2分前、磐田スタジアムで優勝の望みをかけてFC東京に先制した磐田をも突き放した。
試合データ
横浜FM  
神戸
14 シュート 7
3 CK 3
0 PK 0
 38分には、奥 大介がフリーキックをゴール左隅に決めて3−0とし、横浜FMは、後半戦の再開から5試合で5連勝、順位も5位から優勝と、鮮やかな逆転で優勝を決めた。
 磐田は勝ち点を31に伸ばして2位、台風の目ともなった市原は勝ち点27のまま3位となった。
 横浜FMの3度の優勝はすべて第1ステージ。また3回とも最終戦に勝って優勝を手にする勝負強さを誇る。

日産自動車/カルロス・ゴーン社長(横浜F・マリノス名誉会長)「バランスの取れた非常にいい試合だった。すばらしい勝利だ。中澤はいるべきところにいたと思う。6万人ものサポーターが集まってくれて非常に感動的な試合となった。日産創立70周年の祝賀で、社員35,000人をここに招待していてよかった。マネージメントは、結果に基づいてのみ評価される。優勝したということは優秀であることを意味している。第2ステージも同様に戦ってほしい。ボーナス? それは左伴(マリノス社長)が決めればいいこと」

Jリーグ/鈴木チェアマン「こうなるのが普通の展開(首位が勝って優勝)だと思っていたが、F・マリノスも前半は非常に硬く、スコアは3−0でも楽勝というわけではなかっただろう。今日は3会場(磐田、国立)ともお客さんが入ってくださったようだし、第2ステージには降格もかかってくるゲームがあるのでまだ盛り上がっていってほしい。F・マリノスは、泥臭くてもみんなで勝ったという感じだ。市原はよくやったが、監督のマジックだけでは足りないということでしょう」

神戸/副島監督「F・マリノスの両サイドと大きなサイドチェンジは特に注意をするようにシフトし、それは非常によく機能を果たしていたと思う。しかし、失点の場面でも同じだったが、ファーストリアクションは抑えられても、セカンドアクションで集中力が流れてしまったと思う。こういう試合は、やはり、(戦術とかテクニック以上に)勝負に対して強いか弱いかという戦いであって、そこでうちとF・マリノスが分かれたと思う」

前半、後半で2本、相手DFのミスから一人で持ち込んだ神戸FW・三浦知良「最後は力負けしてしまった。自分には2度チャンスがあり、どちらかを決めなくてはならなかった。2点目は、自分では入ったと思っていたんだが、GKは足でよく止めたと思う。この暑い中でみんなよくやったけれど、及ばなかった。(相手に優勝がかかって、やりにくさはあったか、と聞かれ)特にはない。やるべきことは決まっているから」

    ※これまで目前で優勝を決められた経験はなかったという三浦は、「相手の優勝など見てうれしいものではないから」と、チームで一番にロッカーから出て行った。第1ステージ13位の神戸はこの日、チーム全員が横浜に帯同。「こうした満員のスタジアムで重要な試合を勝ち取るために」とベンチ入りしない若手メンバーも全員試合をスタンドで観戦させていた。

横浜FM/岡田監督「いくら優勝と遠くを見たところで、やれることは目前の体調を整えることしかできない、と今日まではあえて遠く(優勝)を見させないようにしてきたが、今日は、あえてこれを乗り越えることで常勝チームになれるのだとプレッシャーをかけた。前半はリスクをなかなか犯さない展開で、たとえばパスにしても3つつないでサイドを変えるようなことをしていたので、ハーフタイムには、このまま引き分けで優勝するくらいなら(リスクを負って)戦って優勝を逃がしたいと話をした。後半は、選手が本当によく戦ってくれた結果だった。すばらしい選手たちとできて幸せで、スタッフにも感謝している。棚から牡丹餅がポタポタと落ちてきて、こんなにうまくいっていいのか、何かほかに落っこちてくるのではと思ったが、運はどこにでも、普通に流れていて、それを使い損ねたくないから、選手にはベストを尽くしてそれをつかめと言っている。すばらしい練習をしてくれた結果だ。
 10試合を終えてトップと4差でこれは可能性もあるかと思ったが、中断期間後、びっくりするほど選手が伸びてくれた。常勝チームへはまだまだ長い道のりがあるが、これでひとつ何かを乗り越えてくれたはずだ。
 眼鏡は佑二(中澤)に壊された。弁償してもらう」

2点を奪い、試合を決めた中澤「あのままでは雰囲気的に引き分けという感じだったので、セットプレーは狙っていこうと思った。まさかこぼれてくるとは思わなかったけれど。前半は、相手も引いていたし、6万人の観衆の独特な雰囲気もあって、自分たちのサッカーができなかった面がある。初めて優勝を味わい、運はつかみ取るものだと思ったし、岡田監督はいつもそう言っていたので文句は言えない。これからも黙ってついて行きますよ。ちょっと涙腺が緩いんで……。最近ドラマ以外で泣くこともなかったんですが、でも第2ステージのことが頭をよぎって、ここで泣くのも、と、こらえました。チームにはいつでもみんなが話せるムードがあり、誰も殻にはこもったところがない。(岡田監督の眼鏡を壊したようだが、と聞かれ)岡田さんに飛びついたのは、ここはやっぱり行こうか、と。1点目はスローだったので(混戦だから)、ああいってこうやって、といろいろと考えるもんです」

柳 想鐵「2000年は国立競技場だった。今日はホームで自力の優勝を果たすことができて、喜びはひとしおだ。合流してから5連勝ということだが、少しは幸運を持ってきたのかもしれない。サッカーは11人でやるもの。スタッフの力もある。完全優勝を目指したい」


    ◆岡田監督の一問一答

――何を指示したか
岡田監督 前半はコーナーキックがなかったくらい(1本)、最後まで攻めていくことができていなかった。サイドまで回していった、縦に流して起点を作ってもう1枚裏に出て行こうと話をした。

――ワンランクアップといっていたが
監督 中断前からフィジカルでも精神的にも、ワンランクアップということを言っていたが、新潟での(中断期間の)合宿を経験して、久保、松田らベテランを含めてタフになってくれた。それがチームに大きなものをもたらしてくれたと思う。具体的には攻撃では、ゴールに向かう姿勢を持っていくこと。先制した試合は、ナビスコ杯も入れてだが、7勝1分で、先制された試合で勝ったのは鹿島だけ。こういう試合をしないように、しっかりとボールを支配する中で自分たちのペースを保つようにしてほしいと思った。守備では、コンパクト・フィールドを常に意識していった。

――前半は流れの中で取れなかったが
監督 確かにプレッシャーがあったと思うし、内容には満足していない。しかし、これに勝ったことで壁を乗り越えられたと思う。

――試合前、何を話したのか
監督 話せば長くなるのだが(会見場も笑いに包まれる)、短めに。友人が、煙突を壊すときの話をしてくれたんだが、100メートルの煙突を壊すのにも、20メートルくらいでの(終わりに近くなっての)転落事故がもっとも多いという。(危ないはずの上では事故が起きないのに近くなると事故が起きるのは)遠くをせいて、近くが見えなくなるからで、飛び降りたら怪我をする。しかし今日だけは、近くの勝ちを取らなくてはいけない。でも宙返りして降りる必要はない、と。長くなりましたが。

――課題は
監督 ワンランクアップし、もっとボールをシンプルにまわしていかないとならない。そして常勝のためには選手層を厚くし、競争をしていってほしい。

――監督のプレッシャーは
監督 確かに、昨日まではまったくなかったが、今日バスで移動する頃には、この運をつかみ損ねるわけにはいかない、とプレシャーを感じた。札幌で昇格したときのほうが、もっと「やったな」と実感があったが、今日はそれよりも、運に助けられてここまできたと思う。今度はぜひ自分たちの力で優勝を勝ち取りたい。

――DF松田直樹が迷惑をかけたと話していたが
監督 苦しい期間だったと思うが、彼は間違いなくそれを乗り越えたと確信する。日本で唯一、海外に通用するDFだと思っている。



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