12月3日

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サッカー

第23回トヨタ ヨーロッパ/サウスアメリカ カップ
レアル・マドリード×オリンピア
(東京・国立霞ヶ丘競技場)
キックオフ:19時15分、観衆:66,070人
天候:晴れ、微風、気温:11.3度、湿度:66%

レアル・マドリード
(スペイン)
オリンピア
(パラグアイ)
2
ボール支配率:
57.8%
前半 1 前半 0 0
ボール支配率:
42.2%
後半 1 後半 0
14分:ロナウド
84分:グティ


 

<交代出場>
●レアル・マドリード
 82分:グティ(ロナウド)
 86分:ソラリ(ジダン)
 90分:パボン(カンピアッリ)
●オリンピア
 65分:バエス(コルドバ)
 81分:M.カバジェロ(M.ベニテス)
 スペインのレアル・マドリードとパラグアイのオリンピア、ともにクラブ創立100周年という節目を迎えた両チームによるクラブチーム世界一決定戦、第23回トヨタカップがこの日、W杯決勝の舞台と同じ横浜国際競技場で行われた。ロナウド(ブラジル)、ジダン(フランス)、フィーゴ(ポルトガル)、ラウル(スペイン)といったスーパースターたちを擁するレアル・マドリードが、その実力をいかんなく見せつけ、押し気味に試合を進める。14分、ロベルトカルロス(ブラジル)からの低いクロスをラウルがスルー、見事なトラップでボールをさばいたロナウドがゴールに蹴り込み先制点を奪った。オリンピアもロベルトカルロス、ミチェルサルガド(スペイン)の両サイドバックが上がったスペースをつけ込むようなカウンターで何度かチャンスをつかむが、シュートがポストにはじかれるなど、ツキにも見放され得点にはいたらず前半はそのまま終了。
 後半に入ってもレアル・マドリードは攻撃的な姿勢を崩さず、果敢に追加点を奪いにくる。しかし、GKタバレリ(パラグアイ)の好セーブもあり、1-0のまま試合は終盤を迎えた。82分、ロナウドに代わりグティ(スペイン)がピッチに登場。その2分後、右サイドを抜けたフィーゴがクロスを上げると、グティがディフェンダーに競り勝ちヘディングシュート。これが決まり2-0、試合を決めた。
 レアル・マドリードはこれで4年ぶり3度目のクラブチーム世界一。最優秀選手賞(MVP)は、先制ゴールを決めたロナウドに贈られた。

オリンピア/プンピド監督「前半の大きなチャンス3本を生かすことができなかった、それが試合を分けてしまったと思う。レアルの印象は特別にはないが、大きなチームであり、花形選手がいる。しかしオリンピアはパラグアイの代表として、ゴールに迫るチャンスを何度も作りいい試合をしたのではないか、私はそれを誇りに思っている。相手はドリームチームであり、それでも同等に戦う試合でゴールは奪おうとしていたのだから」

レアル・マドリ-ド/ボスケス監督「東京に来た目的を果たすことはできたことがうれしい。トヨタ杯のタイトルを持って帰ることができて、100周年を迎えるわがチームにとってもこれは特別のことになる。レアルはスター選手が揃っているといわれるが、しかし決して4〜5人ががんばって勝つスタイルではない。ほかの選手の活躍があってこうした結果が生まれるのだ」

    ◆レアル・マドリードの試合後の選手コメント

フィーゴ「BIGカップを持って帰ることができてうれしい。(自分にとって)初めてのこととして記憶に残るものだろう。(もっと圧勝できたのでは? と聞かれ)サッカーにはどんな試合でも簡単な試合などはないことを言いたい。簡単に勝つことなどは、できないし、もし試合を簡単にしたければ、ピッチでのひとつひとつのプレー、パフォーマンスに注意を払わなければならない。例えば、1−0になったとき、得点は取ったが、私達は、引き分けを狙おうとするオリンピアに苦しんで非常に厳しい時間帯を戦わねばならなかった(スタンドで見ているような試合と、ピッチは違うということを表現)。ロナウド、ロベルトカルロスは非常に素晴らしい選手だ。しかし、それにしてもチームに貢献しようという気持ちがなければどんなにいいプレーをしても生かされない」

ロベルトカルロス「このスタジアムで2試合のタイトルを続けて戦い、連続でタイトルが取れた。ブラジル代表として、レアルとして、ともに素晴らしい経験で、私個人として今年は非常に重要な、意義ある1年になったと思う。チャンピオンになるには、90分を通じて戦うことが大事で、全体のボール支配率、チャンスを作ることで、私たちは上回っていたのではないか。確かに、私はトヨタ杯では、バスコダガマ戦(98年オウンゴールを誘う)、ボカとの試合(2000年1得点)、そして今日はロナウドへのパスを出し、すべてのチャンスに絡んでいる。アジアという地域は私にとって特別に相性のいい場所なのではないか。(Jリーグに来るのか? と聞かれ)私を買ってくれるクラブがあるのかな。いつかは、ここに来たいとは思っている。今年は、バロンドールも取れると思っている、そのことについてはとても楽天的に考えている」

ロナウド「W杯のファイナルの時にはもっとテンションが上がっていたかもしれない。このスタジアムは自分にとってとてもハッピーであることは間違いないが、大事なことは、幸運とは自分で呼び寄せることだと思う。ホームでまた頑張りたい。(ブラジル代表よりレアルのほうが強いのでは? と聞かれ)全く異なる性質、状況の2つを比べることは意味がないし、難しいものだ。ただ(多くのタレントを発掘するという点で)レアルの仕事には敬意を払いたい、すばらしいチーム作りをしている」

ラウル「大変うれしい。ただ、オリンピアはサッカーを知っているチームだったので、楽ではなかった。日本の観客は、サッカーをじっと集中してみているのだと思う反面、あまりに静かでちょっと冷たい感じもした。(今週は、1週間で非常に厳しい試合が続いたが? と聞かれ)確かに、心身とも非常に苦しい戦いだった。しかし、タイトルを持って帰ることができて、本当に満足だ」

ジダン「大変うれしい。ロナウドとのプレーというのは、いつでも私を楽しくさせるものだ。彼がピッチにいると、本当に楽しく、いいプレーをすることができる。日本のファンは、サッカーをよく知って、じっくり味わっているという印象がある。その前で戦い、勝つことができてうれしい。(W杯ではいい思いができなかったが)それとは別のものだったが、今日負けていたら、また別の借りを作ることになってしまっただろうから、とても晴れ晴れした気持ちだ」

試合データ
レアル・
マドリード
 
オリンピア
20 シュート 10
7 GK 12
15 CK 8
14 直接FK 14
3 間接FK 3
0 PK 0


「300円のキーホルダー」

 擦り切れた茶封筒は、おそらく、在日中に使うことのできる小使いを仕分けして、保管していたからだろう。小銭の中から一円玉や十円を分けて、百円玉を一枚、一枚、レジのカウンターに取り出していく。滞在中の「暮らし振り」がはっきりと窺えるような小銭の山に、レジの女性は苦笑いしながら、間違いがないかを数えていく。小銭の山に苛立った別の客が、「早く数えてよ」と迷惑そうに覗き込む。
 物静かで小柄な男性がパラグアイのFWミゲル・アンヘル・ベニテスだとわかったのは、99年の南米選手権(パラグアイ)で日本を相手に2得点を奪った選手だったから。この日の昼時、宿泊先である横浜のホテルで見かけたベニテスは、売店で一人、土産用にキーホルダーを選んでいた。ひとつ300円から高いもので500円ほど、ガラス細工が施してある。ひとつずつ、ガラスの色、形を手にとっては吟味する。

 日本が初めて招待された南米選手権のパラグアイ戦で、小柄ながら足元の細かく、正確なテクニックと、目の覚めるようなカウンターを見せ、2得点を奪った姿は、なぜか印象に残っている。32歳。
「レアルは誰もが知っているように特別なチームだと思う。まるでいろいろな、違った宝石がすべて詰め込まれたような。今日はいい試合をしたいと思う。ベストを尽くして、あとは神様の審判を待つだけだ」
 一緒に小銭を数えるのを手伝いながら、ガイドを交えてそんな会話をした。国内では全く無名だったが、20歳でスペインに渡り、才能の花は遠慮がちに開いた。マドリードで、けれども、宝石箱のほうではなくて、アトレチコでプレーをした。2部のクラブからエスパニョールに移籍し、パラグアイ代表として98年のフランスW杯に出場。この晩、宝石の中でも、いっそうの輝きを放つジダン(その試合は出場停止)のフランスに、Vゴールで敗れた。
 同じ舞台に立ちながら、スポットライトはなぜかいつでも彼の横に照らされ、影を作る。
 99年には、ひざの靭帯を断裂する大怪我で手術、リハビリと苦しんだ時期もあったという。

 トヨタ杯の晩、ベニテスはレアルを相手に決定的なチャンスを含めて、4本のシュートを浴びせた。チーム最多である。後半36分の交代の際、静かに十字を切って天を仰ぎベンチに腰掛けた。試合後、ミックスゾーンを一人で過ぎて行く姿を追いかけると、静かに笑って、「ありがとう」と握手を返された。
 結局、100玉で2800円分、7個のキーホルダーを紙袋に入れて売店から手を振りながら去っていった昼間の姿と、ミックスゾーンに消える後ろ姿を見つめながら、宝石の輝きにも、しかし、いろいろとあるのだと思った。ベニテスのキャリア、この日のプレーにも間違いなく、「輝き」はあった。
 ダイヤでも、エメラルドでもない。そう、彼が土産に買っていたガラス細工のキーホルダーにも、「美しさ」はあるのだと。



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