11月23日

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サッカー

J1 2nd第14節
ジュビロ磐田×東京ヴェルディ1969
(静岡・ジュビロ磐田スタジアム)
天候:曇り、無風、気温:15.3度、湿度:68%
観衆:16,883人、16時4分キックオフ

磐田 東京V
1 前半 0 前半 0 0
後半 0 後半 0
延長前半 0 延長前半 0
延長後半 1 延長後半 0
119分:福西崇史  

<交代出場>
●磐田
 66分:川口信男(河村崇大)
 79分:金沢 浄(藤田俊哉)
 90分:西 紀寛(高原直泰)
●東京V
 79分:小林慶行(ロペス)
 85分:佐野裕哉(桜井直人)
 87分:羽山拓巳(小林大悟)
 113分:田中隼麿(平本一樹)
 Jリーグ10年目にして初となる、第1、第2ステージ完全制覇を狙う磐田は、試合前に、2位G大阪が京都を相手に延長で勝利したために、引き分けで勝ち点1を手にすれば優勝できるという、楽な条件を手にして東京Vとのキックオフを迎えた。
 しかし、過去の対戦でも苦戦を強いられてきた東京Vの、中盤での早いマークと、若さを十分に活かした運動量、またエジムンドのキープ力に翻弄され、磐田は立ち上がりから「らしかぬ」ミスを連発。「特別なことはない」と各選手が試合前から口にしてはいたが、やはり独特のプレッシャーなのか、なかなかフィニッシュまで持ち込むことができなかった。
 前半8分、名波浩のスルーパスを藤田俊哉がシュート。これがこの試合最初のシュートとなり、その後は徐々にリズムを取り戻していった。しかし、動きのちょっとしたズレやパスの行き違いで再三、東京Vのカウンターを浴びる。前半終了間際には、GK山本浩正とDF山西尊裕のミスから、桜井直人にボールを奪われ右サイドから強烈なシュートを放たれてしまった。サイドネットにかかったものの、ミスのない、危なげない試合展開が持ち味の磐田が追い込まれていく予兆となった。

 後半立ち上がりの7分、ミスから奪ったボールを名波が中央で、右サイドを走り込んだ高原直泰の方に向いたまま、左足で逆サイドの中山雅史へ。中山はGKと1対1となったが、シュートは阻まれた。回転の掛かり始めた磐田に対して、東京Vはファールを犯すようになり、ペースは少しずつ磐田に傾いたかに見えた。しかし、10分までに放ったシュート3本を決めることができず、再び試合は膠着状態に。11分、磐田の鈴木政一監督は、ミスの多い河村崇大に替えて川口信男を投入し先に動きをみせた。しかし、流れを変えることができず、さらに残り10分では藤田に替えて金沢浄を入れて打開を試みる。37分、服部から左サイドの金沢へ、そのボールを中に折り返して中山がヘディングであわせたが、これもゴールにならず、逆に、40分過ぎにはエジムンドの絶好のフリーキックを山本がセーブ。これで延長戦に突入した。

試合データ
磐田   東京V
17 シュート 8
8 GK 15
13 CK 4
26 直接FK 22
12 間接FK 2
0 PK 0
 ここで、鈴木監督は、得点王の高原を西紀寛に変えることを決断。西の豊富な運動量に延長での決着をかけた。
 西は、ゴール前、中山とのワンツーからシュートを放つなど、出場してすぐに2本のシュートでチームの勢いをつける。延長前半は0−0で終了し、後半も残り1分を切った14分30秒、東京のカウンターの起点となった左サイドで、金沢が捨て身のスライディングをする。これがラッキーにも、前を走り出した福西崇史への絶好のアシストになり、持ち込んだ福西はドリブルで中央に、右足で強烈なシュートを打ち、これが決まってVゴール勝ち、初の両ステージ制覇を果たした。

 磐田は、シュート17本を放ちながらも大苦戦。なりふりかまわず勝利への執念を結果に結びつけるチャンピオンらしいサッカーで、初の偉業を達成した。これでチャンピオンシップはなくなり、2002年リーグチャンピオンとして、2003年2月に開催される日韓中3か国リーグチャンピオン大会(2003年2月16、19、22日開催、優勝賞金40万ドル)への出場権を獲得した。

    ◆優勝決定後の磐田の会見から

中山雅史「とにかくこのステージを勝って、年間王者になれたことに安堵感を抱いている。今日は体のキレがみな悪かったなという試合で、ここまで試合を長引かせてしまうのはまだまだ自分たちの未熟さがあると思う。とにかく、チャンピオンシップがない(Jリーグがリリースを発表した)ということで安心してます。どの試合も厳しかったし、楽なものはひとつもなかった。中でも、というのなら、マリノス戦(10月26日)までの3連戦を勝ちきって終わったことが流れを作ったと思う。それと延長Vゴールの試合をしぶとく拾ってきたこと。自分達のサッカーを年間通じて見せられたことが何よりうれしいし、各ポジションにリーダーがいて、これでいいやというのではなくて、さらに上を上をと勝ちたい要求を持ち続けたことが勝因だった。(G大阪の結果は)僕は全然知りませんでした。何も言ってくれないということは自分たちに不利なことが起きていて勝たなきゃだめなんだと最後まで思ってましたし、第一、ここにいる方たち(監督と服部を見ながら)は知っていたんでしょうけどね、まあ僕には何も言ってくれませんでしたからね。(人間関係)いろいろありますから(会見場で笑いが起きた)」

服部年宏「年間チャンピオンは第2ステージに優勝したらまあおまけみたいについて来たものでしたからね。今日の試合ははっきり言ってひどかったと思います。これだけのお客さんに見てもらうのに、申し訳なかった。自分も本当にしんどくて、延長後半に入ったときにはさすがに『もう引き分けでもいいか』と弱気になりかけた。チャンピオンシップ独特の盛り上がりがあって好きなんですが……、あれがないとちょっと盛り上がりに欠ける気がしますけど、ここまで目の前の1勝、1勝を大事に積み重ねた結果です」

福西崇史「まさか僕がゴールを決めるとは思わなかったので驚きました。あそこまでしっかり守って踏ん張ったDFと、中山さんの積極的な動きと、(金沢)浄の捨て身のスライディングがあって生まれたゴールです。どんなに苦しんでも、自分たちで勝って優勝を決めたかった。その執念が、もしかするとあのゴールになったかもしれません」

名波 浩「(年間王者と聞かれて)それよりもうれしいのは、これで大きな目標のひとつだったアジアチャンピオンシップに出られること。このところ出ていなかったし、移籍や代表だけでなくて、クラブももっともっと海外で厳しい試合を経験していくことが本当のレベルアップになるはずだから。国際大会を経験して、またひとつ上のレベルを目指すことができると思うと、それがうれしい」

藤田俊哉「延長を勝てるのは、トレーニングの賜物でしょう。みんな体力で負けることはないと信じてますし、走り負けなどしない。勝負へのこだわりが最後に出たのかな、と思う。ああいうところでスライディングがアシストになって、それでゴールするんだから、執念でしょう。今日は噛み合わなかった。固くはなっていないと、みな思いながら、じつは固かったのかもしれない。勝てて本当によかった」

金沢 浄「まさかあれがパスになると思わなかったので、本当に驚きました。相手の速攻を防ぐために飛び込んだら、たまたま当たってしまって……。自分で何が起きたのか、なかなかわからなかったですね。途中で入ったので、試合の流れを壊さずに行けるように準備をしていました」

田中 誠「早く点を取って楽にしてくれよ、とずっと思いながら守っていた。G大阪の結果は全然知らなかったので、とにかく勝つことだけを考えて、絶対に点はやらないと言い聞かせていた。最後、福西が決めたときには、思わず、(グラウンドで選手が重なり合った)山の頂上に飛び乗ってしまいました。去年はリーグを勝ち続けて鹿島に負けた。あの悔しさは忘れなかった」

鈴木秀人「早く(点を)入れてくれ! と思って守ってました。延長に入る前に、引き分けでもいいと言われたのですが、どうせなら勝って、と考えていた。Vゴールを入れてみんなで喜びたいな、と願っていました。後ろの選手が0点に抑えれば、と前には出なかった。終わるときというのは、ああいう(あっけない)ものかもしれませんね。去年の、あれだけ勝っていたのに年間(優勝)を取れなかった悔しさを、辛くなったときに思い出してがんばった。メンバーが何年も続けてやってきた完成度だと思う」

鈴木政一監督「今日の試合を見てもわかるように、Jリーグのチームというのは、どれも紙一重の実力の中で大変厳しい戦いだけを続けてきた。しかし、昨年の鹿島に負けたチャンピオンシップでの悔しさを一度も忘れずに、ここまで戦ってきた。選手はあの気持ちを忘れずによくやった。しかし、まだまだレベルを上げていきたいとも思う。高原の交代は、疲れが見えて、少しボールを取られ始めたから、元気のいい西に替えて打開しようと思っていた」


サッカー

J1 2nd第14節
サンフレッチェ広島×柏レイソル
(広島・広島ビッグアーチ)
天候:晴れ、気温:18.6度、湿度:22%
観衆:18,404人、14時4分キックオフ

広島
2 前半 0 前半 0 0
後半 2 後半 0
64分:沢田謙太郎
67分:高橋 泰
 

(レポート・古賀祐一)

 年間総合15位の広島は23日午後2時から、ホームの広島ビッグアーチで同12位の柏と対戦した。広島のホーム最終戦とあって、スタンドには1万8404人が詰め掛けた。そして、気温18.6度の暖かな日差しの中でキックオフ。「90分以内の勝利」がJ1残留の可能性をつなぐ唯一の条件である広島は、前半から攻守に積極性が目立ち、0−0で迎えた後半19分、茂木弘人がパスカットし、久保竜彦から高橋 泰、そして右サイドの沢田謙太郎とつなぎ、沢田が落ち着いて左隅に蹴り込んで先制した。この得点が広島のリーグ通算500号ゴールだった。この1点で勢い付いた広島は、さらに後半22分に、先制点を決めた沢田が中盤でインターセプトし、そのボールを拾った久保がドリブルで突進して、高橋に絶妙のパスを送り、高橋が冷静にGKの脇を抜いて2点目を決めた。

 一方、柏は「90分で同点以上」ならこの試合でJ1残留が決まる。その影響なのか、立ち上がりからプレーが消極的で前半のチャンスは14分にエジウソンのパスから平山智規がハーフボレー気味にシュートした場面だけ。前後半を合わせても放ったシュートはわずか3本だった。後半は左肩亜脱臼の影響で戦列を離れていた北嶋秀朗や大野敏隆、加藤 望と矢継ぎ早につぎ込んだが、流れを変えることはできなかった。

試合データ
広島  
16 シュート 3
6 CK 1
21 FK 29
0 PK 0
 広島は最終戦(対札幌)で負けか引き分けなら降格決定となり、勝っても神戸、柏の試合結果次第となる。依然、自力での残留決定はない。しかし、鹿島、柏を下した勢いは無視できない。逆に柏は最終戦で勝てば残留が濃厚だが、広島、神戸の結果次第では得失点差の争いになる可能性もある。柏は調子が下降気味なうえに、最終戦の相手がかつて柏を率いた西野 朗監督のG大阪だけに決して楽な試合ではない。J1残留枠1つを巡る3つどもえの戦いはまったく予断を許さない。

広島/木村孝洋監督「多くのお客さんに来てもらって大きな力になった。前半10分まではバタバタしたが、徐々に自分たちの形になった。特に守備は相手に決定的な形をほとんど作らせなかった。後半は『点を取りに行こう』と話した。欲を言えば3点目を取りたかったが、勝ち点3を取れたことが大きい。年間15位という数字は変わっていない。最終戦に勝って初めてチャンスが来る。厳しい2試合を勝って、ムードはいい。望みを捨てず、いい結果を出したい」

広島DF/沢田謙太郎「サポーターの応援がすごかったので、前半からトップギアに入れることができた。勝たなきゃいけない中で結果が出せてよかった。局面局面で負けないようにした。シュートはいいボールが来たから。ファーに打てば入ると確信した。サッカー人生の中でこういう状況でプレーすることはそうないが、苦しいけど得るものも多い。柏が古巣とか意識はなかった。自分のチームのことで精一杯」

広島FW/高橋 泰「自力での残留決定はないのだから安心はしていない。勝たなければ可能性はない。最終戦も集中して臨みたい」

広島MF/森崎浩司「皆を信じてやれば点が取れると思った。沢田さんがいいところで取ってくれて、2点目もすぐ入って楽になった。皆の考えが1つになっている。ボールを取る時は皆で一緒にプレッシャーをかけているし、攻撃でも皆が出て行き、共通理解ができている」

広島DF/上村健一「この前の試合(鹿島戦)も勝てたので今日も行けると思っていた。いい守備もできた。相手が引いて守ってきた。セカンドボールをどれだけ拾えるかが重要、と試合前に話していた。相手のミスでしっかり点が取れたことは大きい」

柏/アウレリオ監督「覇気もやる気もなく、自分たちでこういう結果を招いてしまった。2失点はパスミス、守備の集中のミスから生まれた。叱らなければいけない。試合前には有利な状態にあったのに、墓穴を掘ってしまった。今度は自分たちで取り戻さなければならない」

柏GK/南 雄太「気持ちの中に引き分ければいいというものがあった。後ろから見ていて、攻める気持ちがなかった。意識のずれを感じた。意思の統一がなかった。試合前に『勝ちに行こう』と話したが、失点しないことばかりが先に立って、引いてしまった。1点取れば楽だったのに」

柏DF/永田 充「向こうの方が、勝ちたい気持ちが上回っていた。僕らも必死になっていたけど、向こうが上だった。相手は3トップで前からガンガン来ていたので、裏を取られないように下がってしまった。勝てたと思うし、やっぱり痛いです」

柏FW/北嶋秀朗「ベンチで見ていて、出たら前線でキープしてあげることが必要だと感じていた。でも、久しぶりの試合だったこともあって、周囲との距離を感じた。皆が疲れていたこともあると思う。やっていることは間違っていないと思う。自分たちでやっていくしかない」


「残留への意識」

 勝った広島の森崎浩はこう言った。
「皆を信じてやれば点が取れると思った。皆の考えが1つになっている。ボールを取る時は皆で一緒にプレッシャーをかけているし、攻撃でも皆が出て行き共通理解ができている」と。
 負けた柏の南はこう言った。
「気持ちの中に引き分ければいいというものがあった。後ろから見ていて、攻める気持ちがなかった。意識のずれを感じた。意思の統一がなかった。試合前に『勝ちに行こう』と話したが、失点しないことばかりが先に立って、引いてしまった」と。
 互いの信頼と共通理解を備えたチーム広島と、意識のずれと意思の不統一を抱えたチーム柏。キックオフ前から結果は見えていたのかもしれない。

 こうした両チームのメンタル面の違いには、J1残留に必要な条件が大きくかかわっていた。試合開始前の時点で、年間総合15位で通算勝ち点23の広島は、この試合で「90分以内の勝利」を達成する以外に残留の可能性を残すことはできなかった。つまり、負けや引き分けはもちろんVゴール勝ちを収めたとしても来季のJ2降格が決まっていたのだ。それに対して、年間総合12位で通算勝ち点29の柏は「90分以内の勝利」もしくは「90分で同点」で残留が決定するはずだった。つまり、実際の試合には延長戦はあるが、柏にとって延長戦は(残留を狙うためには)意味のないものであり、90分の試合を引き分ければいいということになる。まさか勝ち点を計算しながらプレーした選手はいないだろうが、この“有利な”条件が柏の選手たちに消極性を与えてしまったのだ。

 試合前、アウレリオ監督は「勝ちに行こう」と選手に言った。選手間でも「勝ちに行こう」と確認し合った。しかし、潜在意識に潜んだ“安全指向”を消し去ることはできなかった。そして、攻めるのか、守るのか、意思の統一がないまま柏はピッチに飛び出したのである。

「皆硬かった。守備ばかりで、攻撃の意識が薄かった。プレスが早く、すぐにコースをつぶされた。(引き分ければいい条件は)意識しないようにしたが、結果的に意識していたのかもしれない」と言うのは平山だ。左サイドの平山は何度も攻撃参加しようとしたが、周囲の反応が鈍いため、ボールを持ってパスコースを探す間に、広島の選手にすぐにパスコースを消され、ボールを奪われる場面が目立った。平山ばかりでない。足元のボールを失う黄色いユニホームの無残な姿が頻繁に見られた。

 北嶋は9月7日の名古屋戦で左肩を亜脱臼し、それ以後、戦列を離れていた。この日が負傷以来の出場だった。出場は後半25分からだったが、ピッチに出てしばらくして違和感を覚えた。
「周囲との距離を感じた。原因はわからない。皆が疲れていたこともあると思う」。以前の柏にあったサポート、押し上げがなかったということだ。時間帯も原因には違いないだろうが、必死になって攻める場面でも柏の攻撃に対する意識は希薄で、ボールへの反応は鈍かったことを証明している。

 柏は、残留争いの直接対決に敗れた。それでも、年間総合15位で降格圏内の広島とは勝ち点3差、得失点差でも2点上回っている。有利な状況には変わりはない。しかし、意思の統一、共通理解をしっかりさせてから戦いに臨まなければ、最終戦でもこの日と同じ結果が待っているだろう。まして、対戦相手のG大阪を指揮するのは、柏を最も知る男・西野 朗なのだ。

■J1 年間総合順位 下位5チーム(2nd第14節第1日終了現在)
順位 チーム 勝点 状況 最終節の対戦
12  仙台 32 残留決定 東京V
(away)
13  柏 29 最終節で
降格1チーム
が決定
G大阪
(home)
14  神戸 28 清水
(home)
15  広島 26 札幌
(away)
16  札幌 13 降格決定 札幌
(home)



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