6月23日

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サッカー

J1リーグ1st第12節
浦和レッズ×コンサドーレ札幌
キックオフ:19時04分/観衆:19,277人
/天候:晴れ/気温:24.0度/湿度:74%
(さいたま市浦和駒場スタジアム)

浦和 札幌
2 前半 2 前半 0 0
後半 0 後半 0
10分:永井雄一郎
20分:永井雄一郎
 

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 98年6月の初対戦以来6戦で1勝4敗1分け、勝利は98年10月以来と(99年は札幌がJ2のために対戦なし)長らく札幌に勝つことができなかった浦和は、相手のカウンターを徹底的に封じて勝機を見出そうとした。浦和は前半からロングパスを積極的に多用するなどして札幌陣営に押し込む。開始10分、中央からトゥットがアドリアーノにパス。これをアドリアーノがポストとなって左に走り込んできた永井雄一郎へ流す。永井はこれを落ち着いて決めて先制し、これで試合の流れを引き寄せた。
 また、移籍を目前としている小野伸二も高い集中力と、両足から巧みに操るパスで札幌の4バックを翻弄する。20分には、左中盤の底から左足でサイドを競りあがったトゥットの足元へ正確にパスを通して、これをまたも中央を走り込んできた永井へ。DFにあたったもののゴールが決まり、序盤で永井がシュート2本で2得点(今季3点目)という「超効率」的なプレーで試合を決めてしまった。
 中盤でのためがなかなか作ることのできない札幌に対して、浦和は小野がボールの流れを作り、試合を組み立て、すべてにおいて重要な役割を果たす。後半には、開始から10分で小野とトゥットのコンビで相手ゴール前でGKとの1対1を連続して作ったものの、これは惜しくも決められなかった。また、バックラインも札幌の14本のシュートを防ぐとともに、カウンター封じのためにボールを回し、最後尾から慎重に組み立てるなど集中した攻守を見せた。試合はそのまま2−0で終了。浦和はこれで「3年越し」で札幌を破り順位を10位に。下位グループ脱出の足がかりとした。

浦和/チッタ監督「我々は一日一日ごとに良くなっているし、経験を積んでいる。しかし満足したか、と言われればそうではない。なぜなら2−0ではなくて、5―0で終えられる試合だったからだ(シュート17本)。(試合中小野への指示は? と聞かれ)最初に、審判がイエローカードを持っているか聞いてもらった(会見場は爆笑)。2度目は、あまりくだらないファールで試合を壊さないように、と伝えた。2週間で4試合をしている私たちのほうが、フィジカルで不利ではないかと思ったが、フラビオ・フィジカルコーチのおかげでいいコンディションだったと思う」

札幌/岡田監督「浦和はすばらしい出来だったと思う。スタジアムの雰囲気もあるが、うちの選手はなぜか前半から怖がっているようなところがあって、怖がらずに行け! と何度か言ったが、どうしても行けなかった。中盤のためがないので、前線への効果的な攻撃がいまひとつ噛合っていなかったような状態だった。小野だけをマークするようなシステムの指示はしてないが、トゥットと小野がうまくタイミングが合えば、そうは止められない(強力な)コンビだ。負けたが、私たちとしてまだ目標があるのでそれに向かって前進して行きたいと思う」


「半径×半径×3.14」

 小野が、フェイエノールトで来週予定していたメディカルチェックは、代表の日程を優先させるために流れてしまった。関係者は、「メディカルチェックをすることで、むしろ、メンタル的にもリフレッシュをさせたかったのだが仕方がない。これが延期されれば浦和との約束をきちんと果たすためにも、第1ステージをすべて終了してからでも決して遅くはない」と話し、キリン杯を挟んで再開されるJリーグ3試合を消化した7月21日以降に、移籍を完了する選択肢をもあげた。先方との最終的な契約書の詰め、また代表日程を消化することからフィジカルなど、様子を見ながらとなりそうだが、小野は「今、目の前にある試合に集中するだけです」と、落ち着いた様子で話している。
 G大阪とのナビスコ杯(20日)で、「久しぶりに自分らしいプレーができた」ともらしたという。代表で左サイドでのプレーをしたことで、自由な感覚を取り戻したかのようだ。この日のプレーで印象的だったのは、小野の「プレーイング・ディスタンス」の圧倒的な幅である。
 小野を円の中心として、半径、直径を見ていると、実に広く、大きな円を小野がピッチに描き続けていることが明らかに分かる。怪我の時期と比較することは必ずしも正確なものではないが、コンフェデレーションズ杯以前と今を比較しても、小野が描く円がかなり広範囲になっていることは目で見てすぐにわかる。
 ボールを起点として、あるいはボールを受ける動作でも、小野は自らのプレー範囲、いわば半径を一試合ごとに長く伸ばしている。第一には技術の高さがあり、第二にそれをより楽に発揮させるだけのフィジカルの充実、3番目には、簡単にいえば視野の広さであり、小野独自の青写真を現実のシーンに変えるイマジネーションの充実ぶりがある。
「勝とうという気持ちと、自信がうまく噛合ってきたと思う」
 小野はそう話して競技場を後にした。代表のゲームでメディカルチェックは流れても、おそらく、移籍先のチームはプレーを見るだけでメディカルの情報の多く、そしてメンタルの充実ぶりを判断するのではないか。


「不敗神話は続く」
文・松山 仁

 5試合ぶりの先発出場で2得点をあげた(今季3点目)永井雄一郎は、「2点とも危なっかしい得点だったが、とにかく入ってよかった」と笑った。特に、1点目(前半10分)は、トゥットからアドリアーノにボールがわたった瞬間、スペースをみつけてうまく飛び出したまではよかったが、肝心のフィニッシュは当たりそこないだったという。2点目(前半20分)もキーパーのいないゴールに向けて落ち着いて打ったはずのシュートがDFに当たってしまい、一瞬ひやりとした。
「当たりそこない」の2本のシュートのみでの2ゴールは、自らのドリブル突破と小野とのコンビから再三チャンスを作り、7本ものシュートを打ちながらも無得点だったトゥットとは正反対で、まさに「結果オーライ」と「継続」という、FWの仕事の面白さと難しさを対照的に表現していた。
 これで永井がゴールを決めた試合で、浦和は17勝2分け。この不敗神話にも「この流れは続けていきたいけれど、逆に言えばまだ19試合でしかとっていないということですね」とあくまでもストライカーとしての貪欲な姿勢をみせる。
 今は、チームの戦術を優先して、得意のドリブルは封印しているという。しかしストライカーとしては、自分のドリブルをチームの戦術にするという意識でプレーすることも必要ではないか。この日の、5月6日のヴェルディ戦以来となった得点を、進歩への足掛かりにできるはずだ。



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