2月23日

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サッカー

日本代表キャンプ最終日
(福島県・楢葉町、Jビレッジ)

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 今年最初の、日本代表キャンプが打ち上げとなり、各選手が会見を行って合宿の感想や今年の目標、2002年への思いを話した。
 3月10日のJリーグ開幕に向けて選手は一端クラブに戻り、来月20日から予定されるフランス遠征(フランス代表と24日に親善試合を行なう)に備えて、再度中旬から代表合宿が召集される。


「フィジカルではなく頭脳の測定合宿」

 名波浩(磐田)は、今回の測定合宿を振り返って、自ら笑い出した。
「(いい数値が出たもの、の問いに)あったねえ、20メートル走なんてビリだよ、ビリ。まさかと思ったけどね。それと垂直跳びも多分ビリのほうだね。まあ、(フィジカルのいい選手たちに)負けねえぞ、なんて気持ちはハナからないけど、波戸とは20メートルで0.2秒も違ったからねえ」
 もともと、フィジカルは「一般の成人男子より低い」と自負? するアスリートだ。結果に驚くことはなかったのだろうが、名波というサッカー選手の素晴らしさを示すのは、意外なことに、この最低の数値のほうだ。
「だから、オレはいかに頭使ってサッカーやってるか、それがわかったよ。頭だけって感じもするけどね。でも、こんだけの選手が、しかも代表クラスが集まってビリだからね、ある意味じゃあ、面白いというか、自分がわかることはあったと思う」
 名波は、測定したのが肉体的な数値であっても、それが無かったことをむしろ、もっとも重要な「情報」としている。
 こうしたパラドックスにこそ、このレフティの「センス」すべてが集約されているかのように思う。

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 いつの間にかチームで最年長の部類に入った。本人は、「引っ張ってくれる人がいて、自分がそれをサポートするような形がベスト。オレは相談役」と、記者たちを笑わせていたが、若手は、その存在感をこの合宿で感じ入ったはずだ。
 いいプレーには全員が共感し、悪いプレーには文句を言う。こうしたピッチ上のコミニケーションから、若手とベテランの関係といったピッチ外のコミニケーション、その両方が果たされた今合宿を「精神面でも戦う気持ちを持続させて行く上で非常にいい合宿だった」と振り返る。
 4年前を思うと、「早い」と言った。
 すでに予選は始まっていた時期である。中東に遠征し、加茂監督が体調を崩し、再度始まった最終予選で名波がUAEのアウェーのハーフタイム、脱水症状から震えながらロッカーで後半を待っていたこと、フラフラになりながら引き分けをものにしてバスに乗り込んだ姿。どれも極めて強い印象に残っているし、フランスW杯は本大会よりも予選での選手たちの表情、言葉が今も鮮やかな光を持ち続けているようにも思う。
 名波はそんな頃を、市川大祐(清水)引き合いに出して、このチームの可能性を表現した。
「昨日、そんなことを考えて、イチに、お前あの時(98年)っていくつだったの? って聞いたんだ。そしたら、17歳だってさ。オレなんて30歳にリーチかかちゃってるのにさ、いいよね。(サッカーの経験を)やり過ぎだって、市川は」
 市川も言う。
「名波さんに言われたんです。でも、ぼく自身、まだまだですし、あの時、まぶしいくらいに思っていた名波さんたちのプレーって今も輝いてますからね。でも4年前に比べると、本当にいろいろな意味で成熟した代表なのかな、と今回強く思いました」
 森島、名波、服部、城をはじめ、そういう凄まじい経験をした選手の根っこの上に、若く、センスと経験を持った選手たちの力が乗っていくのだろう。
 城も「FWのリーダはオレだ、と思っているし、そういうことをみんなに伝えたい」と笑った。98年は三浦知良の後ろをいつも追いかけていた選手が、である。
 今年のAマッチでどんな戦いをするか、それは占うことはできなかった。しかし、2002年に進んでいくための強固な骨組みは完成していることだけは、間違いない。そう思わせる合宿ではなかったか。

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