1月27日

※無断転載を一切禁じます


大阪国際女子マラソン* 開会式
(大阪市内・千里阪急ホテル)
*長居陸上競技場発着、往復コース42.195km

お知らせ

増島みどり著
シドニーへ
彼女たちの
42.195km

発売中
詳細はこちら

 8月のエドモントン世界陸上選考会となる大阪国際女子マラソンを前に開会式が行われ、昨年このレースでベスト(2時間25分14秒)をマークし、シドニー五輪補欠となった小幡佳代子(東京陸協、営団地下鉄)が選手宣誓を行った。
 29歳の小幡にとって今回は15回目のレースとなり、セビリア世界陸上でも8位に入賞している。今回も大阪からの出場権獲得で世界選手権連続出場を狙う。

 また今回注目を浴びるのは、初マラソンとなる三井海上の渋井陽子(20歳)で、同僚で2時間24分台を連続してマークしている土佐礼子とともに世界陸上代表を狙う。渋井は中国・昆明で高地合宿(2000m)を土佐とともに行っており、代表選考の条件となる2時間26分突破を目指す。

 海外招待選手では、シドニー五輪6位のアレム(エチオピア)らが出場。1994年の安部友恵(旭化成)以来、日本人が優勝を果たすか期待される。


「オリンピックではないけれど」

 昨年、シモン(ルーマニア)と弘山晴美(資生堂)がわずか2秒差でデッドヒートを繰り広げてから1年、同じレースの開会式に集まった報道陣の数は、昨年の3分の1だったという。
 シドニー五輪代表の選考レースとなった昨年は、弘山の走りに注目が集まった。レースは2時間22分台、しかも終盤37kmからのマッチレースと非常にレベルの高いものでありながら、選考に漏れる結果となった。昨年の大阪を思うとき、胸のどこかにささくれが残っているかのような気持ちになる。
「本当に信じられないくらい早いですね。去年に比べると7割、8割くらいの出来ですが今回は勝負にかけたいと思っています。落ち着いて、いいレースをしたい」
 開会式を終えた小幡は、ユニホームを点検しながらしみじみと言葉をかみしめた。

 弘山が走り、有森が代表を狙い、安部、浅利純子(ダイハツ)らが復活にかけた大阪国際から1年が経過し、もう一度長居のスタートラインに立つのは小幡ただ1人である。五輪選考レースでも世界陸上と大阪と、唯一2レースで好成績を収め、その調整力は群を抜いている。

 小幡はいつでも、トップ選手の輪から少しだけ離れたところで、自分の価値観と懸命に戦っている。さして才能に恵まれなかった選手が15回のマラソンで30分近く記録を更新。昨年の大阪では5位に入りシドニー五輪補欠を務め、史上最強といわれた3人の代表を支えていたはずだ。営団地下鉄の事故によって、部活動は突然休止。「営団地下鉄」と名前の入った活動はできず所属を「東京陸協」としなければならなかった。4月のシドニーマラソンに出場した際、ランニングパンツの端に小さな喪章をつけて、レース直前に黙祷していた姿を思い出す。
 そして補欠として、誰も知ることがない正式エントリーの締め切り日、それは五輪出場の可能性が完全に消えた日でもあるが、その日を1人で数え、ひっそりと迎えていた。
 今回は奄美大島で合宿を行ったが、足の甲を痛め思うように距離が踏めなかったという。また今春で営団地下鉄が廃部を決めており、小幡にとってこのレースは重要な意味を持ち、さまざまなものを背負って走ることになる。
「若い渋井選手も力があるし、楽しみにしています。いろいろなことがあったこの1年を噛み締めて走ろうと思います。勝つ試合をしたい」

 28日の日曜日、昨年この大阪で代表権を争った弘山はおそらく合宿の合間となる東京でテレビを見るのだろう。3度目の五輪を狙った有森はゲストとしてアメリカから帰国し、棄権した浅利は引退を表明し、やはりゲストとして、代表の山口衛里(天満屋)は同僚と小幡の応援のために、そして高橋尚子(積水化学)はイベントに出席するため、奇しくもそれぞれが長居陸上競技場に集まることになった。
 しかし、ランニングシューズを履き、ゼッケンをつけてここに戻ってきたのは小幡だけである。五輪ではないが、「勝負」をするために戻ってきたのは小幡1人なのだ。

マラソンに初挑戦する渋井「初マラソンなので、いいのか悪いのか、本当のところはよくわからないです。やれることはやったと思いますので思い切り走るつもりです。ペースは気にせず、自分で押して行きたい。土佐さんと一緒に世界陸上に出場したい」


短信:高橋尚子が大阪五輪招致イベントに
 午後6時から市内ホールで大阪五輪招致イベント、「スポーツパラダイス大阪」が行なわれ、高橋尚子、小出義雄監督がトークショーを行なった。高橋は今後2月4日の丸亀ハーフマラソンに出場する予定だが、いまだにスケジュール多忙のためまだジョッグペースで走る程度で、丸亀も「80分くらいで」と目標を置く。春の賞金レースまで2か月で仕上げることは現実的に難しい状況で、小出監督もこの日のトークショーの中で、従来は「春のレースでひとつ走って秋のレースで世界最高を」としていたのを「マラソンは秋に」と微妙に変化したニュアンスで発言をするなど、復帰には当然のことながら時間を取る方向で行く方針で、秋のベルリン(9月)かシカゴ(10月)のどちらかに絞るようだ。

BEFORE LATEST NEXT