7月1日


札幌ハーフマラソン前日記者会見
(札幌円山競技場―東札幌折り返し、男女混合レース21.0975キロ)

 シドニー五輪の女子マラソン金メダル候補の高橋尚子(積水化学)が、五輪前の公式レースとしては唯一となる札幌国際ハーフマラソンに2日出場する(午後2時2分スタート)。その記者会見が1日午後、札幌市内のホテルで行われ、現在はピークの4割程度という体調だと話し、「結果は関係ない。負けても、タイムが悪くても、今自分はこういうレベルなんだ、という現実をきちんと受け止めるためのレース」と、位置づけた。高橋のハーフマラソンは、昨年12月の千葉マリンマラソンで1時間8分55秒をマークして以来となる。大会記録は、昨年シモンがマークした1時間8分51秒。

「防腐剤を入れたところ」

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 高橋と小出監督は当初、米国のボルダーで長期合宿を張り、そこからシドニーへの下見を繰り返して本番を目指すことになっていた。しかし、ビザの関係で一度は米国外に出ることになっていたことから、予定したシドニーではなく、あえて札幌でのハーフマラソンを選ぶことになったという。
 監督は反対した。今の状態は昨年のベストに比較してもまだ4割程度、今回のシドニーを家の建築に例える監督の言葉を借りるならば「地面をならして、基礎を作って柱を置いて、木に防腐剤を入れたくらいに過ぎない」からだ。
「こんな時に(試合に)出て負けるのはオレは嫌だなあ。良くて1時間10分とか、10分30秒くらいだろう。何も日本に帰って負けることはないぞ」
 反対する監督に高橋が言った。
「何言ってるんですか。関係ないでしょう、勝ち負けは。今ボルダーでいい練習が積めているかどうか、それを確かめるために走るんですよ。私は全然気にならない」
 もし結果が悪ければ様々な憶測は呼ぶかもしれない。しかしレースの結果ではなく、あえて出場を決めたことのほうに、高橋が「今の自分」を模索する意味があるのだろう。
 高橋は「今は基礎練習を終えたところです。3から4割くらいでしょうね。マイヤーさん(南アフリカ)を含めて日本選手も非常にいいので、私も今の力を出し切ってゴールに戻ってきたい」と、会見では少しだけ茶色く染めたのか明るい色になった髪を弾ませた。今回は、長く伸びた髪を日本で切ること、そして1時間9分20秒で戻れれば監督からご褒美も出るということ、この2つ楽しみにするそうだ。
 昨年のセビリア世界陸上の前には、絶好調の中で上ばかりを見たために結果は最悪の欠場となった。練習過多で、ちょうけい靭帯を痛めたその教訓を監督は今も引きずる。
「慎重と臆病は難しいが違うんだね。今までは石橋なんてたたいたこともないのにさ、今はもう毎朝高橋が、監督、と呼ぶだけで(昨年、不調を訴えられた朝を)もう思い出してさ、ドキ、っとするんだよ。俺より高橋のほうがずっと冷静だよ」
 選手を先生、と呼ぶ監督だが高橋を「同級生くらいになってきたな」と笑わせる。気象、レース展開にもよるが目標はスタート直後の下り坂、ゴール手前ののぼり坂をシドニーの起伏のイメージに心身とも重ね合わせることになる。記録は1時間9分30秒付近。クリアできれば建築もいよいよ基礎工事終了。金メダルを狙う師弟にとって防腐剤を入れる作業は思いのほかデリケートである。

    ほかの出場選手

菅平、広島での合宿から入った小幡佳代子(営団地下鉄)「今の状態はあまりよくはありません。けれども、ここできちんと走った結果を、(今の状態をはかる)現実のものさしにします」

ハーフマラソンのスペシャリスト、アトランタ五輪ではアキレスを痛め不本意に終わったマイヤー(南アフリカ)「アトランタでは非常にがっかりしましたし、怪我は非常にシリアスなものでしたので、今再起できたことは非常に満足している。あすは、日本の選手のすばらしい力に負けないようなレースをしたい」

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