6月24日


Jリーグ2ndステージ開幕戦
柏レイソル×ジュビロ磐田
(柏の葉公園総合競技場)
天候:雨、気温:19.0度、湿度:89%
観衆:11,773人、19時6分キックオフ

磐田
2 前半 1 前半 0 1
後半 1 後半 1
27分:北嶋秀朗
56分:北嶋秀朗
川口信男:53分

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 第1ステージ終盤では、トルシエ監督の去就問題に絡んで少なからず「余波」を受けた柏は、開幕から優勝候補の筆頭・磐田を迎え撃った。
 前半から開幕戦の緊張感と、降りしきる雨のために両チームともピッチをとらえることができずに、ミスを連続。落ちつきのない序盤となった。
 開始直後にシュートチャンスをものにした柏はこれを外し、続くコーナーキックでも絶好のチャンスを決めることができなかった。しかし27分、細かいこぼれ球を盛んに拾っていた柏にチャンスが訪れる。DFラインでボールを奪った大野敏隆が左サイドの明神智和にロングパス。30メートル以上のパスが正確に明神に入り、そのまま加藤望とつなぎ、最後は北嶋秀朗がGKと1対1になって、冷静にループシュートを決めて先制した。
 後半8分には、磐田の川口信男のシュートが決まって同点となるが、直後のプレーで今度はシュートを決めたばかりの川口が北嶋にペナルティエリア内で足をかけて転倒させこれがPKに。1本目はフェイントを取られてやり直しとなったが、北嶋は2本目のPKも決めてわずか1分で勝ち越し、そのまま2−1で磐田を下し、悲願のステージ制覇に向かってまずは好調な滑り出しを見せた。
 一方磐田は、試合中のボールにすべて出遅れてしまうフィジカルの重さに加え、第2ステージから加入した新外国人、ジウゴビッチ(ユーゴ)が中盤で機能せず、藤田俊哉とのやり取り、あるいは前線への配給でも連携でも「ブレーキ」気味となった。後半、奥大介に替えると動きが良くなった、再三柏ゴールを襲ったが、候補筆頭としては「J1随一」と言われる中盤には課題がのぞいた。

磐田・ハジェブスキー監督「試合の序盤だけ柏が良かったが、その後はこちらが少しずつ挽回した。審判に文句を言うつもりはないが、それにしてもPKは同等に扱ってもらいたかった。そして(ロスタイム2分の表示にも)時間に満たないで終わってしまった。選手はすばらしい働きをしたし、これからもっと良くなるはずだ」

柏・西野朗監督「ありがとうございました。非常に大事な試合で、結果には満足してます。黄 善洪(韓国のファン ソンホン)が加入し、北嶋との2トップで準備していたが、彼が離脱したので試合への持って行き方が非常に難しくなった面があった。しかし選手はみな高いモチベーションでコンディションも非常に良かった。私自身、これほど落ち着いて余裕をもって試合に臨めたのは初めてのことだった」

第1ステージも同じ磐田からVゴールを奪った北嶋「(加藤が動いたためPKのやり直しとなったが)GKはPKでは受身ですから、落ち着いて蹴れば大丈夫だと思ったし、1本目よりも落ち着いて蹴ることができた。監督からキッカーはお前、と指名されているので信頼に答えたいです」

試合データ
  磐田
13 シュート 10
8 CK 2
20 FK 23

「わずか、がなかなか埋まらない」

 柏にとって第2ステージを奪いたいというのなら落とすことのできない開幕戦だったはずである。
 これまでの悩みだった「オプション不足」を脱するための切り札、昨年のJリーグ得点王・黄が準備の甲斐なく離脱。酒井直樹も足を痛め、モロッコのハッサン国王杯に故障を抱えながらも参加。試合に出ることなく帰国した明神も万全の体調ではなかっただろう。
 もっとも大きなマイナス要因は、もしかすると監督にあったのかもしれない。
「ここまで優勝を狙う圏内にいながら、あとわずか、というのが埋まらなかった。それを埋めるには、私自身、選手以上に積極性と攻撃性を持って、新たな境地に挑みたい」
 監督の毅然とした口調の影には、苦く辛い数週間があった。

 トルシエ監督の去就に関する協会の混乱ぶりに西野監督は間違いなく翻弄された。第1ステージのもっとも大事な時期、「2002年W杯監督へ」という報道の大洪水に、監督は心の中でやりきれない思いだったのではないか。協会関係者からの直接の打診を具体的に受けたわけではない。柏のチーム関係者も、報道を頼りに確認などできない。
 一方では、西野ではダメ、五輪で決勝進出できなかった監督よりトルシエがいい、2002年は日本人、しかも(釜本強化推進本部長と同じ)早稲田出身だから、といった勝手な比較論が盛んに耳に入る。
「選手も自分も何も変ることはなかったんだ。しかし、相手チームが異常なほどの敵意みたいなものをむき出して来た。本当になんとかしてくれ、静かにしてくれ、と……」
 監督はそう振り返る。
 結局、名前は挙がったが何も「具体的な交渉」はないまま、終わった。監督には、マイナス評価と黒星、Jリーグの優勝の消滅という現実だけが残った。
「今も、どうしようもない怒りというか、感情は残っているんです。一体この気持ちをどこにぶつければいいのか……」
 監督はこの日、勝利を手にした後のロッカー前で、静かにつぶやいた。
 しかし、この気持をどこにぶつけるか、その答えだけははっきりしている。
 初のリーグ制覇である。

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