1月29日


大阪国際女子マラソン開会式
(大阪府豊中市内のホテルにて)

 シドニー五輪女子マラソン代表をかけた選考会となる大阪国際女子マラソンの開会式が行われ、式では参加選手を代表して、シモンが日本語で選手宣誓を行った。
 開会式には、シモン、弘山、小幡、3度目の代表を狙う有森らが出席したほか、8年前の92年大阪でペースメーカーとして出場しながらそのまま日本最高で優勝、バルセロナ五輪代表となった小鴨由水さん(福岡陸協、現姓松永)、ソウル五輪代表だった浅井えり子さんも一般参加選手として顔を揃えるなど、日本女子マラソンの時代を築いてきたランナー、将来を担うランナーらが揃う、味のある顔ぶれとなった。

「レースの本当の見所はどこか」

 レースにはいくつものポイント、があります。選手の中にはそのコース独特のポイントを頭に叩き込み、それを体が理解するまで試走するという選手もいれば、逆に、下見などを一切しないでその時々のリズムに任せるのだ、という選手もいます。しかし、選考会に限ると、それぞれが「一体どこを攻略すべきか」との青写真は必ず持っているものなのです。
 自分が描いたポイントで勝負をかけられればそれは大成功、逆もまた起きうるわけで、残念なことに、大概の場合は、レース終了後にならなければ、選手の口からそれを聞くことはできないものです。しかし、ここでこのホームページの「客員教授」に、選手が考える本当のポイントについて興味深い話をお伺いすることにしました。

 陸上長距離の客員教授である山下佐知子さん(第一生命)は、1990年、有森裕子がこの大阪でマラソンデビューを飾ったのと同じレースに実は出ていたそうです。私もすっかり忘れていましたが。
 この時は、2時間33分で「一応8位だったような気がする」というくらいの成績だったわけですが、その後、昨年にはマラソンでの最初の教え子となった伊藤真貴子を出すためにコース試走を何回か行うなどしています。「こんなに楽しみなレースはありません」と、観戦者としての立場からも、レースの隠れた面白さを、教えてくれました。

 山下教授は、まずレースの概論としては「自重して、後から粘って拾っていく、という展開は絶対ない」と言います。
 当然のことですが、選考レースでは、先頭集団にいることがすべてなのです。そこで落ちてしまっては、加速する一方の先頭集団からこぼれた選手を拾うことなどできません。ある一定のスピードをキープした中から脱落した瞬間「勝つ」確率は極端に減り、五輪は遠ざかると思わなくてはならないのです。ここが、ほかのレースとは違う展開を意味するものとなります。
「そういう意味では、選考レースこそ究極のサバイバルレースといえます。まず最初のポイントは、頭の5キロです。大阪の5キロは大体17分台です。あすは、16分台の後半から17分くらいで入ると思うのですが、その通過ですでについていけない選手が出てくるでしょう」
 大阪のレースでは、最初の5キロを、ペースメーカーが16分40から45秒で入るとも言われている。

 一方、攻略しなければならないのが、大阪の独特の坂です。東京のように大きな起伏ではないために「大阪は簡単な高速コース」という言われ方をするのですが、有森はこんなことを言います。
「大阪のコースは東京よりも難しいコースなのです。なぜなら、細かなアップダウンがあり、コーナーの数も多いはずです。大阪で記録が出るのは、コースが簡単だからではなくて、東京や名古屋のように急に暑くなってしまうような天候の揺れがないことが一番の理由だと思います」
 確かにコース図をよく見ると、まず14〜17キロで高低差約20メートルを上がり、23キロから27キロの4キロで3つの山を上り下りしなくてはならないのです(※参考資料……関西テレビホームページの98年大阪国際女子マラソンコース図http://www.ktv.co.jp/98marathon/course.html。なお、レース当日にはインターネット中継も行われる関西テレビの『2000大阪国際女子マラソン』ホームページはこちら:http://www.ktv.co.jp/marathon/index.html)。ここがレース最大の文字通り「山場」と捉えられています。
 確かに中間点を過ぎてしかも25キロで上り下りを3度は足にこたえます。これまでのレースでも必ず、ここは放送の盛り上げるポイントになっているようです。

 しかし、山下教授が指摘したのは、このさらに後、31キロから約1キロ、ほんの小さく15メートルほどの山でした。
「自分の時もそうでしたが、あの時は、後半に力を蓄えておく走りのペースだったので、私はかなり持ちこたえたのですが、周囲はそこまで非常に良かった選手も含めて、かなりドッと落ちて行ったんですね。その後も注意して見ていると、意外とこの坂で離れてしまう選手が多いのです」
「足に来る」
 ランナーはこの単語をよく使います。彼らにとって足に来る、とは同時に足が動かない、レベルまでを意味しており、どこで足に来るか、はトレーニングとその日の体調と、レースのどこでどこまで無理をしているか、にかかるでしょう。
 31キロからの1キロほどの坂が終わると、もう高低差はほとんどありません。ほんの小さな山が、レースに与えるかもしれない大きな影響を、みなさん、テレビでどうか観戦してください。

    大阪国際女子マラソン 主な招待選手
    No. 名前 年齢 所属 自己ベスト
    1 リディア・シモン 26歳 ルーマニア 2'23"24
    2 ソニア・オベレム 26歳 ドイツ 2'28"02
    31 エスタ・ワンジロ 22歳 日立 2'25"40
    32 安部友恵 28歳 旭化成 2'26"09
    33 浅利純子 30歳 ダイハツ 2'26"10
    34 小幡佳代子 28歳 営団地下鉄 2'26"18
    35 有森裕子 33歳 リクルートAC 2'26"39
    36 弘山晴美 31歳 資生堂 2'28"12
    39 宮崎安澄 24歳 積水化学 2'30"06


短信

「サッカー日本代表発表」

 2月5日からのカールスバーグ杯(香港)と、その後のアジア選手権予選(マカオ)の日本代表メンバー23人が発表された。
 中田英寿、城彰二はともに召集されず、名波浩は参加する。

    GK:
    1川口能活(横浜)、18楢崎正剛(名古屋)、20曽ヶ端準(鹿島)

    DF:
    2大岩剛(名古屋)、6服部年宏(磐田)、4米山篤志(V川崎)、3松田直樹(横浜)、22中澤佑二(V川崎)、16中田浩二(鹿島)

    MF:
    12澤登正朗(清水)、10名波浩(ベネチア)、8望月重良(名古屋)、7伊東輝悦(清水)、15奥大介(磐田)、21明神智和(柏)、23中村俊輔(横浜)、24稲本潤一(G大阪)、13小野伸二(浦和)

    FW:
    11三浦知良(京都)、9中山雅史(磐田)、14平野孝(名古屋)、19西澤明訓(C大阪)、17平瀬智行(鹿島)

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