9.マット発酵初期段階を疑似体験してみる。

 ここまでの推論でマット発酵初期段階における推論材料が大部揃ってきました。
そこで、発酵マット初期段階を疑似体験してみようかと思います。条件としては、
マットは茸の菌によって侵食された材をクラッシュしたもので、組織が破壊され、
表面積が大きく、分解された糖鎖(糖質)が存在する。いろんな菌にまみれてはいる
が、アルコール発酵をする菌や糖鎖(糖質)を分解する菌や酵素が存在する。水分は
菌が活動しやすいように使用時よりも若干多め。温度は25〜30℃。といった所
でしょうか。開閉可能な容器にいれ、良く撹拌し蓋をしました。
 まず、単糖類を利用可能な菌が活動を始めました。温度も高く水分も豊富、よく
クラッシュされ、手頃な糖鎖や破断面がいっぱいあります。菌や酵素がどんどん
糖鎖を分解し始めました。単糖類を利用可能な菌がますます活発に活動繁殖をして
います。酸素もどんどん利用され、容器下部の方は既に酸欠気味です。単糖類を
利用可能な菌がアルコール発酵をはじめました。菌の活動で温度も上昇しています。

 ここで最初の分岐点です。蓋を開けず、しばらく放っておきました。容器内は完
全に酸欠です。どんどんアルコール発酵が進んでいきます。ここで思い切って蓋を
開けてみました。アルコールが多量に生成されている所に通気されました。酢酸発
酵が起こり始めました。かなりすっぱい匂いがします。アルコールもきついが酢酸
もきついです。ちょっとやばい匂いです。蓋を開けて素手で撹拌なんかとんでもあ
りません。温度も高温で、沢山増えた菌の餌もなくなってきました。どんどん菌が
死滅し、一時的に菌体蛋白質が増えました。蛋白質は分解されて腐敗が起こり始め
ました。匂いを我慢して、なんとか混ぜます。酸素が供給され、腐敗物がさらに
分解され、多量のアンモニアが生成されはじめました。前にもまして臭いです。
色はちょっと赤っぽくてなんか聞いていた話とは違います。辛抱して混ぜ混ぜして
頑張っていると徐々に温度もさがって、安定してきたみたいです。臭いけど。ある
程度のアンモニアは菌に再利用され、菌の構成物として使われた様です。蓋を全開
にして乾燥させると匂いも飛び、色も黒っぽくなり、何とか使えそうな感じです。

 ここで分岐点に戻ります。蓋を開けて毎日良く混ぜ混ぜします。定期的に酸素が
供給され、糖は酸化分解されて二酸化炭素と水になっていきます。発熱量も大きい
ので、温度はかなり上昇しており、熱いくらいです。それなりに臭いですが、腐敗
してるって感じではないようです。温度も徐々に下がり始め、色もどんどん黒っぽ
くなってきました。最後は糖を利用していた菌も糖がなくなり、死滅し始め、徐々
に他の菌に世代交代してきた様です。放線菌の種類が繁殖しているのでしょうか、
何か土っぽいようなインクっぽいような匂いがします。色も黒っぽくなりました。
 だいたいこんな感じでしょうか。最終的にはとりあえず利用可能な糖鎖(糖質)は
分解され、後には分解しにくい状態のマットが残ります。再度ガードされた状態に
戻ったということになります。しかも、何らかの菌によって均衡状態(安定状態)も
築かれているようです。上記の疑似体験では分岐は2回しかありませんし、どちら
の過程で作られたマットが幼虫に良いかは知りません。(そんな無責任な〜。(^^;
しかもあくまで想像ですし。)手間は若干かかるけど後者の方が気分的にはいいなぁ。

 お酒のCMで何とかって酵母をつかいました。というのを見た事があると思いま
す。あれは、ある特定の菌株がお酒作りにおいて独特の香り、味を造り出し、他の
同種の菌株では異る味になることを意味しています。つまり、菌は同種であっても、
菌株により、性質が異り、そのバリエーションは無数に存在します。菌を使った
食品に味、匂いといった違いが多いのはこういう理由からです。従って、菌を扱う
世界ではこういう菌株を単離純粋培養して門外不出にしてたり、登録とかして製品
として売ってたりします。このことは各家庭で同じ条件で発酵マットを作成しても
色、匂い、効果が異るものができる事を意味します。しかも、繁殖する菌種に到っ
ては混ぜ混ぜするお手手についてる菌でも左右されそうです。(糠漬けと一緒やね。)

 色々条件や材料真似てもダメな時は上手くいってる人から種菌としてマット分け
て貰うのも手かもしれないです。(くれない時は拉致って混ぜ混ぜさせ...。)


戻る 進む