7.どんな菌が繁殖するのか?

 これが一番の謎で、よくわかりません。でもそれでは話が進みませんから、与え
られた条件の範囲で考えてみましょう。アルコール臭がする。糠漬けの様な匂いが
する。すっぱい匂いがした。最後はインク臭とか土の匂いがする。ホダ木は元々茸
(椎茸)の菌がいた。これらの事からだけでも酵母菌、乳酸菌、酢酸菌、茸、カビ等
多種多様な菌がいる事が想像つきますし、繁殖した菌もまちまちの様です。
 厳密に言えば、不特定の培地(樹種、繁殖した茸の種類、腐朽度の異るマット)、
不特定の水分量、不特定の温度条件、不特定の環境で殺菌を行わず、不特定多数の
菌が存在する条件ですから、毎回違う菌が繁殖し、毎回違ったマットができるのも
当たり前といえば当たり前ですよね。これらの条件をクリアするのは実際の所、
非常に困難ですし、発酵マットの長所であるお手軽、安価が失われてしまいます。
 同定もせずに、菌種の特定を行う事は困難ですから、どんなことをする菌がいそ
うか考えてみます。(本当は実験すればいいんだけどねぇ。)

 発酵が起こる根幹はマットがクラッシュされていろんな長さ、結合の糖鎖(糖質)
や内容物が菌にさらされるからであると記述しました。一般的には木材はセルロー
スとリグニンが主体で分解が難しい素材であるという概念が大きいが、マット原料
は朽ち木であり、既に菌による分解、生成を受けた素材であるため、十分いろんな
状態の糖鎖(糖質)が存在するはずです。たぶん、マットに水を多量に加えて濾過
(一般的なろ紙レベル)すると、可溶性の糖鎖(糖質)がかなりの量、抽出可能である
と思います。濾過後のマットにも破断面には分解利用可能な末端が存在すると考え
られます。これらの分解利用可能な糖鎖(糖質)はいろんなサイズ、結合であり、
このサイズ、結合が菌や酵素にとっては重要です。まず、単糖類や比較的分子の小
さい糖鎖は結構いろんな菌が利用可能で、酵母菌は単糖のグルコースを主体に利用
可能です。発酵初期段階でアルコール臭があることや植物表面には天然酵母が付着
している事からも酵母菌が発酵に関与している可能性は高く、逆に酵母菌が利用可
能な単糖の存在がうかがえます。(アルコール発酵自体は結構いろんな菌ができて、
例えば納豆菌=バチルス納豆で嫌気状態下グルコース培地でアルコール発酵する。
なんかいやなアルコールだなぁ。) 比較的大きめの糖鎖は菌自体と言うより、菌の
出す酵素によって加水分解されていると思われます。この分解によって生じた単糖
が酵母などの菌により利用されていくのですが、大きめの糖鎖の分解は、多種多様
な結合やサイズの糖鎖であるから、特定の菌による分解はありえず、多種多様の菌
にまみれるからこそ起こり得る分解であり、これがマット発酵の秘密の一つでしょ
うか。


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