「怪説・世界のクワガタ」 第7回 オニクワガタ (1)

A.CHIBA


 オニクワガタ属 Prismognathus は、東アジアから、台湾、タイランド、ヒマラヤまで分布しており、シベリア、サハリンなどの寒冷な地にも分布している。 現在知られている種の他に、まだ新種が見つかる可能性が有ると思う。 小〜中型でこの属の一番大型種であるキンオニクワガタでも最大で40o前後だろう。

fig3

 fig3は Prismognathus dauricus キンオニクワガタとして良く知られている。 ♂の体色は少し黒っぽい銅色で僅かに金属光沢を帯びる個体とそれよりも明るい銅色(赤色)をした個体がいる。 ♀は殆ど黒色に近い。 大腮に一本の上向きの歯が有り大型の個体は大腮が長く伸びてなかなか良いカタチをしたクワガタで、個人的には好きなクワガタである。 左から対馬竜良山採集の個体、真ん中は中華人民共和国吉林省長白山(中国東北部)で採集されたもの、右はロシア産(産地不詳)の個体。 対馬産は最大のもので38oを少し越える程度(月刊むしギネス)だが、大陸産は対馬産より平均して大きい個体が多く、最大サイズはもう少し大きくなるかもしれない。 朝鮮半島では個体数が対馬などよりも多いらしく、産地では朽ち木採集などでわりと普通に採れると言い、朝鮮民主主義人民共和国産のものは標本商でも見かける。 中国、ロシアについては、ロシア産の標本が入って来ているようである。

fig4

 fig4左は Prismognathus davidis cheni タイワンキンオニクワガタ。 前種のように大腮は長くならないが、体色の変化は殆ど同じで大きさは最大でも30o程度。 台湾中部の山地(2000b以上)に分布していると言うが、稀な種なのかあまり標本を見た事が無い。 中華人民共和国にはPrismognathus davidis davidis が分布しているが、台湾産のものと良く似ている。 台湾産よりもさらに日本に入っている標本は少ないようだが、やはりかなりの山地に分布しているとすれば採集は困難かもしれない。

 真ん中は Prismognathus formosanus タイワンオニクワガタ、台中県梨山。体色が赤っぽく日本産の様な黒い個体はいないのか少ないのか、まだ見たことが無い。 やはり山地帯で採集されているが、普通種で産地では稀ではないと言う。

 右は Prismognathus piluensis ヘキロクオニクワガタ、花蓮県碧緑。銅色で薄く金属光沢が有る個体もいる。 タイワンオニクワガタに似ているが、大腮の形状や体色で区別出来る。 産地は限られているようで採集される数も少ないようである。
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