オオクワガタの変態サイクルと積算温度についての一考察  (Page 2/8)

k−sugano



有効積算温度

生物は子孫を残すことが生きていく第一の目的です。
昆虫は比較的短命で、ハチの数種などの一部例外を除き、♂♀の交尾によって生殖産卵を行います。このような種は、第一の目的を達成するために、成虫の出現時期を合わせる必要があります。
このため、有効積算温度を孵化・蛹化・羽化などの各ステージで、出現時期を合わせるための仕掛けに用いていることは合理的であるといえます。
では、この出現時期を合わせるための仕掛けについて簡単に理解しましょう。

<図−2>は、1年1化で春に孵化して蛹化まで有効積算温度70度が必要な虫を想定しています。もちろんこれはモデルですので実際このような虫がいるということではありません。青い部分は温度を示しています。式で現わすと次のようになります。

 有効積算温度(=70)=Σ(T−t)、但しT−tは正または0
 (T=環境温度(気温)、t=加算分岐温度) 

上段と下段とは同じ環境ですが、産卵された場所やらなにかの事情で、上段のAの個体の方が下段のBの個体より6日早く孵化したとします。季節は春ですから気温は右上がりに上がっていきます。
さて、6日早く孵化した個体Aは孵化後19日目に有効積算温度70度を超えます。6日遅く孵化した個体Aは同じく孵化後13日目に有効積算温度を達成しますから、結果的に蛹化は同じ日となります。

図に挙げたモデルは非常に簡素化したものですが、孵化の日に差があっても、結果的にその差は縮まるという仕組みは理解されたことと思います。

実例としては、3月中旬に人工孵化させ室内飼育したメスアカミドリシジミ幼虫と4月末に野外採集後室内飼育した同種の幼虫の幼虫期間は明らかに後者が短く、またヒサマツミドリシジミやアイノミドリシジミなどでも人工孵化した同じ母の幼虫達が、孵化時期にばらつきがあっても蛹化時期はそれほど変わらないということを経験しています。

 

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