Q & A −EV基礎講座−

はじめに

ここではイベントなどで良く受ける質問を中心に、EVを知り、EVを作るための基礎的な情報を提供します。
コンバートEV製作の過程はシトロエン2EVについてにでています。
もくじ

重要!!  安全に作業するために



安全に作業するために

 ジャッキをかけただけで車の下にもぐらない、などの一般的な自動車整備の注意事項は省略します。自動車整備のスキルは身についているものとしてEVの作業する上で必要な注意事項を箇条書きにします。

Q: EVはどのくらいの距離を走れますか

 これはどこでも真っ先に尋ねられることです。ガソリン車でも燃料タンクを大きくしてガソリンをたくさん積めば長い距離を走れますが、EVでも全く同じです。ただ、ガソリンに比べてバッテリーのエネルギー密度は極端に小さいのでガソリン車並みの1充電走行距離(レンジ)を得ようとすると普通の鉛電池では電池だけで1トンくらいになってしまい、現実的でなくなります。200-400kg位の鉛電池を乗用車に積んだ場合、市街地での実力はせいぜい50-80kmというところでしょう。もちろん、急加速やハイ・スピードを楽しむと極端にバッテリーは消耗します。現在市場にあるEVは、鉛電池を使う限り、ガソリン2-6リッターくらいしか入ってない状態と言えばわかりやすいでしょう。EVの普及はバッテリー次第と良く言われるのはこのためです。また、バッテリーが改良されても充電に時間がかかるという問題は化学反応の原理から解決できそうにありません。


もくじへ
home

Q: EVの運転法は

 EVの運転は非常に簡単です。まずアイドリングしないので(一部にクーラーのためにアイドリングする車もありますが)発進、停止時にクラッチは必要ありません。メーカー製のEVにはクリープするのもありますが普通はクリーピングはありません。モーターは始動トルクが大きいために普通は変速操作も不要です。アクセルを踏むと走り、ブレーキを踏むと止まるという、遊園地の自動車と同じ操作で走れます。
メーカー製のEVはそれなりに考えられていますが、自分で改造したような車の場合注意が必要な場合があります。

・発進はゆっくりと
 始動トルクが大きいということはコントローラのセッティング次第では始動時に雑なアクセル操作をすると過大なトルクを駆動系に与えることになります。バッテリーの節約のためにも最初の10mはじわっとアクセルを踏みましょう。

・ギヤを入れても止まりません
 モーターはエンジンのように回転方向に抵抗がありませんからギヤを入れておいてもタイヤは回ってしまいます。坂道での駐車などでは注意が必要です。

・エンジンブレーキは効きません
 モーターを逆回転させることでエンジンブレーキをかけ、エネルギーを回収することがでいますが、このような回生ブレーキをアマチュアレベルで装備するのは困難です。転がり抵抗の小ささを利用して惰力走行して電池を節約する電車のような走り方もEVのテクニックの一つですが、下り坂ではブレーキに負担がかかります。


もくじへ
home

Q: コンバートEVとは

 普通のガソリン、ディーゼルなどの自動車のエンジンなどをおろしてモーターとバッテリーを積んでEVとした車をコンバート(convert)EVと呼びます(これに対してフレームからEV専用に作られた車をグランドアップと呼びます)。EVというと滑らかなボディに最新のホイールイン・モータ、回生ブレーキを備える…というイメージのある方は満足できないかもしれませんがちょっと待ってください。今、大メーカーが市販しているEVはほとんどコンバートEVなのです。そしてこれらはびっくりするほど高価なのです。三菱リベロ・バンを改造したEVが1200万円!!。信じられますか。アメリカからキットを買って改造すれば同じ物が100万円もあればできてしまいます(ベース車別)。また、現実的に我々がシャーシから車を作って登録することは費用と技術の点でまず不可能です。車検を受けて路上を走る場合はコンバートEVが一番近道といえるでしょう。ただし、ソーラーカーやレーサー、カートなどの場合はオリジナルで製作するのが一般的です。

もくじへ
home

Q: コンバートにはいくらくらいかかるか

 ご自分の車をEVにしてみたいという方のため2CVのコンバートにかかった費用をまとめてみました。実際にはいろいろな試行錯誤があり、余分な出費があったのですが、ここでは最終的なものを現在製作したらどうなるかを試算しました。ベース車は自分の車を使うという事でタダ、部品の価格はKTA Services Inc. の1998年版のカタログによりました。

輸入するもの
モーター			:Advanced D. C. model 203-06-4001	$1398.00
モータークランプ :EVCC model M008 $ 137.50
コントローラー :Curtis-PMC model 1221C-7401 $ 750.00
スロットル・ポットボックス :Curtis-PMC model PB-6 $ 65.00
メイン・コンタクター :Albright ENG model sw-200B $ 130.00
ヒューズ :Bussman model FWX-500A $ 42.00
ブレーカー :G. E. model TQD-200 $ 125.00
電圧計 :Westberg model 2C5-28X $ 48.00
電流計 :Westberg model 2C6-30X $ 48.00
電流計用シャント :Deltec model MKB-500-50 $ 22.50
メーターパネル :Westberg 2-hole gauge holder $ 5.00
小計 $2772.00
ここまでの合計で\388,000(1$=\140)となります。

カスタム・パーツ製作
 モーターとミッションをつなぐアダプター・プレート、シャフト・カップリングおよびモーター・マウントはミッションとボディに合わせて製作する必要があります。我々の車の場合、両方で20万円ほどかかりました。この部分については形状や材質などで価格は変化します。

バッテリー
 EVの命ともいえるバッテリーですが、2EVの場合、スペースと費用の関係から安売りバッテリー(38B20)10個でわずか3万円しかかかっていません。走行距離を求める場合、Optimaバッテリーが秋葉原で1個25,000円で売られていますので10個で25万円となります。

配線、その他
 バッテリー用の配線は溶接用電線(\800/mくらい)を20m、ターミナルが10組(1組\450くらい)、その他圧着端子類、工具や小物部品で5万円くらい見ておけばよいでしょう。

充電器
 充電器はKTAで買うと8―12万円位します。自作すれば1万円もかからずに小型軽量で少し危険な充電器を作る事ができます。トライアックで位相制御した交流を整流するだけという代物(AC200Vの場合)ですが、1kWの電力を扱いますので製作、使用には危険が伴います。この説明を理解できる程度の電気の知識がある方には詳しい内容をお知らせします。

 以上の合計で70-90万円でコンバートできる事になります。特殊な部品の加工以外すべて自分でやる前提なので人件費は入っていません。輸入する部品に入っているものの中には国内で手に入るものもあります。工夫次第でもっと安くあげる事もできると思います。

 2CVは各部が軽量で簡単なのである程度車をいじった経験があればガレージジャッキと一般的な工具だけで大掛かりな設備なしに作る事が可能です。トライしてみたいという方にはできる限り協力したいと思います。お気軽に松本本部か事務局までご連絡ください。

もくじへ
home


Q: コンバートしたEVは車検を取れますか

 一言で言うと”できます”。ガソリン車からEVに改造するということは原動機と燃料(バッテリーは燃料です)を変更することになります。この場合、改造申請を通す必要がありますが、それには多くの書類が必要です。しかし、モーターに載せかえると、たいていの車はパワーがオリジナルより小さくなります。そしてエンジンを外してそこにモーターを付けるだけの改造であれば細かい強度計算や試験データはほとんど必要ありません。車検では排ガスが重視されますが、EVではもちろん排ガスは出ませんから全く問題ありません。バッテリーを載せるため車重が増えるのがもっとも大きな問題ですが、多少の増加は認められますし、定員や積載量を減らすことで対応できます。1998年6月現在、日本EVクラブ会員の手で41台のコンバートEVが製作され、その内18台が車検を取り、元気に走っています。これをご覧の皆さんも是非挑戦してください。
 手続きの詳細については改造車検の詳細をご覧ください。


もくじへ
home

Q: コンバートに必要な技術は

 乗用車や小型トラックをEVにする場合、エンジンや燃料タンクなどを取り外すことから始まります。まずこの作業ができるだけの整備の知識と工具類が必要です。基本的なハンド・ツールとガレージジャッキ程度があればとりあえず何とかなります。リフトやチェーンブロックがあれば文句ありませんが、空き地と数人の人手だけという条件でもエンジンを降ろすことはできます。
 複雑な機械加工は外注するとして、問題は電気配線です。端子を加工するための圧着工具は適正なものを購入することが必要です。バッテリーは高圧、大電流なので感電すれば死亡する危険があり、ちょっとした配線のミスで接触不良があれば火災になることがあります。これらの事故を防止するため、電気に関する基礎的な知識、技術、感電防護の知識と保護具が必要です。
 12Vの自動車電装では感電ということはまずないのでこれに慣れているとかえって危険です。家電の修理や電気工事などの経験がある方がEVを作るには有効です。


もくじへ
home

Q: EVはスピードが出ますか

 EVというと「遅い」と思いがちですが、普通の直流モーターでもエンジン並みの回転数は楽に出せますからガソリン車と変わらない速度を出すことができます。歴史的にも世界ではじめて100km/hの壁を破った車はEVでした。1899年、今から100年以上も前の話です。1902年には200km/hの壁を破ろうとしたEVも作られました。現在ではレース用のEVで230km/hの最高速度の車があり、最先端のEVでは2名乗車で100km/h以上の速度で1時間以上走れる物も開発されています。
 しかし、ガソリン車でもスピードを出せば燃費が悪くなるようにEVでもスピードを出せば消費電流は加速度的に増加し、バッテリーが消耗します。一般的なコンバートEVではバッテリーの容量を考慮した実用的な速度としては60km/h以下の市街地走行が適していると言えるでしょう。
 スピードを出さないとしてもモーターはその特性から低回転域のトルクが大きいため発進直後はゆっくり出ないといけませんが、そこからの加速は同じような重量のガソリン車よりも強力で息の長い加速が選られます。EVが普及したとしても交通の邪魔になるようなことはないでしょう。それよりも普通の乗用車にアクセルを踏むとビュンと飛び出すような「気持ちの良い」加速が必要なのかどうか、安全性の面も踏まえて今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。


もくじへ
home

Q: 燃料電池自動車とEVの違いは

 燃料電池自動車(FCEV)もEVも電気でモータを回して走る点は同じなのですが、燃料電池は、電池という名前はついていますが、水素と酸素を反応させて電気を起こす(電気分解の逆)発電機です。外で発電した電気をバッテリーにためて走るEVとはこの点が違います。燃料電池は1960年代のアポロ計画で実用化され、自動車への応用も1960年代にGMやシェルによって実験されましたが、近年、次世代の低公害車として開発が進み、ガソリン車と変わらない性能のものができています。FCEVの問題は高いコストと燃料の水素をどうやって作るかという点です。従来のインフラを使えるという点からガソリンから水素を取り出す方式が有力視されていますが、この場合、大きな発熱と二酸化炭素が排出されるのが問題です。将来は自然エネルギーで発電して海水や植物から作ったメタノールなどから水素を取り出すようになると思われます。しかし、充填には高圧の水素が必要になり、圧縮に要するエネルギーがばかにならないこと、分子量の小さい水素ガスの漏れを完全に防ぐのが難しいなど、課題がたくさんあります。一時期はFCEVがエコカーの主役といわれていましたが、様々な技術的、経済的な問題から、実用化にはかなりの時間がかかると思われます。

バッテリー式のEVは充電時間が長い、一充電走行距離が短いという欠点はありますが、
 ・エネルギー源を自由に選べる
 ・構造が簡単で比較的低コスト
 ・排出ガスがまったく出ない
といった特徴を生かしていける用途を中心にバッテリー技術の向上によりより普及していくと考えられます。

もくじへ
home