三井の、なんのたしにもならないお話 その十七

(2003オリジナル作成/2024.3サーバー移行)


 
 
不完全きわまりない製品、DVD

<増補>


 
 
 
 教材や記録用、研究資料用としても、趣味的にも(別に怪しい画像を集めるというわけじゃありません、主には映画)映像を集めている私としては、これまでの「ホームビデオ」には質的な不満がありましたし、なによりビデオカセット(VHS)が大きく重く、その山に場所を占領され、始末に苦労してきたので、新しいメディアの誕生には大きな期待がありました。

 
 
 これまでも、画質や搭載能力、取り扱い勝手のうえでホームビデオを凌駕している(はずの)ビデオディスクの方にできるだけ重点を置くようにしてきた(つまり、「レーザーディスク」という通称の光ディスク)のですが、ご存じのように、DVD時代の到来とともに、あっという間に市場からレーザーディスク(LD)は姿を消してしまいました。もうそのプレーヤーも、ごく一部でしか売られていません。情けないことです。どうやらLDはいわゆる「アナログレコード盤」の運命をたどってしまったようです。実際大きさかたちもLPレコードにそっくりでしたし。


 
 DVDには多くの利点があるのはこれは認めざるを得ません。

 
1.デジタル記録メディアであり、高い品質とさまざまな機能を盛り込み、維持することができる。

 
2.記録密度が実に高く、LDならディスク1枚半にもなった映画一本が、CDと同じサイズのディスクに収まってしまう(片面では無理で、二層記録になっていても)。実に小さくて扱い便利である。もちろんディスクだからランダムアクセス的利用が自由である。

 
3.それでいて値段が安い。なんといってもディスクは量産効果が大なので、ソフト記録ディスク製品も生ディスクもどんどん安くできる。

 
4.なにより、一般用途の装置で記録書き込み可能なディスクを利用できる。あたり前ながら、プレーヤーでは記録はできないし、市販の記録済みDVD-videoソフト盤には一切記録はできないが、記録書き込み用のディスク規格が開発され、どんどん普及しているので、DVDレコーダーやDVD読み書きドライブ装置などを持っていれば、ビデオカセット並みに気軽に記録保存ができる。もちろん画像だけじゃなく、「digital versatile disk」として、音声、画像はじめいろいろなデジタル化されたデータを記録保存・利用できるのだから、こんなにすばらしいことはない。

 
 
 その記録用ディスクに関し残念ながら規格が乱立し(代表的にはDVD-R/-RWと、DVD+R/+RW )、いろいろ混乱が生じているのはよく知られた話しです。画像などの、記録フォーマット形式などを含めるといよいよ大変なことになります。困ったことではありますが、ともかく映像+音声データの保存と利用に限れば、DVD-videoの規格に揃えておくと、どのDVD装置でも再生できるので、その点では非常に便利、まさしくホームビデオの誕生時と同じ使い勝手が、はるかに小さなディスク一枚で、ずっと高い品質レベルとどこでも利用可能なコンビニエンス性(DVDプレーヤーさえあればよい、あるいはDVD-ROMディスクドライブのついたパソコンがあればよい)を伴って、可能になったのです。


 
 
 けれども喜んだのもつかの間、実はこのDVDにはまだいろいろ問題があることがわかってきました。それはこういった規格の不統一とか、機器の互換性や操作性とかいった高尚な問題ではなく、もっとつまらない、新技術新製品の普及時の混乱の不利を消費者に黙って押しつける、あるいはまだ欠陥や故障の少なくないものを平気で売ってしまうといった、「あっちゃあならない」はずの問題なのです。おかげで、私はこの数ヶ月間いろいろな目に遭わされました。そしてそうした問題が各メーカーや販売店はもちろん、こういった商品のことを取り上げる雑誌などにさえも一切出てこない、それがとんでもないことだと私は申したいのです。あまりに消費者・利用者の立場が無視されている、そんなことをやっていて、DVDのようなものがみんなに受け入れられるものになるとチョー楽観的に考えているんでしょうかねえと、大いに疑問を呈したいのです。



 

 
実は使えないDVDプレーヤーやディスクドライブがたくさんある!

 
 うえに書いたように、市販のDVDソフト製品と同じ、DVD-video規格で記録されたディスクなら、「どの機械でも再生できます」というのが、各メーカーなどの表向きのうたい文句です。しかしこれは実はまったくのウソなのです。

 なにが問題か、それは実はディスク自体の規格の問題です。もちろん、DVD-RかDVD+Rか、はたまたDVD-RAMかといったような、はじめから別に作られ用いられている規格の違いを知らず、買ってきたディスクが実は自分のDVDレコーダーにはかからない、もちろん再生もできないといった問題ではありません。

 
 私の経験したことで言えば、それはDVD-R規格のなかにある新旧二つのバージョンの違いから生じている大問題です。早い話が、今売っているDVD-Rディスクを買ってきて、これまた今売られているDVD-Rレコーダーで記録をし、それをDVD-video規格になるよう「ファイナライズ」処理をしたものが、実は多くのプレーヤーで再生ができないのです。画像がちゃんと出ない、途中ですぐ止まってしまう、ギブアップとなります。


 
 その原因は、これらのプレーヤーがDVD-Rのver.2.0規格に対応していないからです。たとえば、私の持っている装置で申しますと、Pi社のDVL-9という、「LD/DVD両用」プレーヤー、DVD登場期の過渡的な需要を満たそうとして売られたもので、その意味ではちょっと古いものであることは間違いないのですが、市販のDVDソフトはみんな元気に再生してくれるのに、DVD-Rはどうにもいけません。

 
 これはちょっと古いんだからしかたないと自分に言い聞かせたとしても、どうにも我慢ができないのは、F社のモーバイルPC、FMVLT86A(愛称Loox)です。これを買ったのは昨年(2002年)のことなんですよ。OSはMS-Windows Xpですよ。CD-RW/DVDディスクドライブ内蔵だからということで、最新モデルとして買ったかなり高価な機械です。これがあれば出先ででも、DVDでの映像を映写やディスプレイ画面上で活用できると期待していたのに、どうにもDVD-Rが写りません。メーカーのサポートに問い合わせ、事情がわかりました。ドライブの故障でもなんでもなく、DVD-R規格ver.2.0に未対応ということなのです。そして実にこっそりと、そのカタログには「DVD-R(3.95GB)に対応しています」と小さく書いてあるのです。

 
 
 しかしみなさん、いまどこの店へ行っても、その3.95GB DVD-Rなどというのは売られていません。すべて4.7GB DVD-R(つまり、DVD-R ver.2.0準拠)しかないのです。このF社には是非、カタログ記載の規格の生ディスクはどこで売っているのか、それは「製造者責任」として明示すべきじゃないのかと申したいところです。S社が「デファクトスタンダード」に敗れたBeta-max方式のビデオカセットをウン十年生産販売し続ける、その1/100位の責任は感じて貰いましょう。


 
 
 これはおそらくF社だけの問題ではないと思います。4.7GBの市販DVD-Rが再生できないプレーヤーやディスクドライブが世に大量に出ているはずです。なんとも消費者を馬鹿にしたやり方です。過渡期の混乱で、新規格が早く出過ぎて対応が間に合わなかった、あるいは新規格が旧規格との関係を十分整理できていなかった、それならせめて、事実を各社もっと堂々と公表すべきでしょうが。聞かれるまで黙っている、それは実に卑怯なやり方でしょうが。

 
 ともかく、新旧両規格をカバーできる代替ドライブやドライバーソフトを償いとして売る(ただで配れとまでは申しません)、旧規格生ディスクを確保し、市販する、そのくらいは本来メーカーの責任でやって当然かと思います。それもできない、やらない、それどころか事実さえもほおかぶりして黙りを決め込む、呆れて言う言葉もない姿勢です。

 
 この辺、下手をすると各メーカーはPLによる責任をとらされかねないので、その逃げ道だけは、各社抜け目なく作ってあります。いま売られているDVDレコーダーやDVD-R記録ディスクドライブ、あるいはそれを内蔵した製品などのカタログや説明書には、DVD-video規格での互換性をうたうだけじゃなく、DVD-Rについても必ずこう記されています。「すべてのDVDプレーヤーでの再生を保証するものではありません」、「使用するDVDプレーヤー、ディスクや記録状態によっては再生できない場合があります」と(じゃあどういう「場合」なんだとは、これではまったくわかりません)。そういったあいまいなもの言いで責任は免れようとするこざかしさと、どうにも消せない規格の時間差問題へのごまかしぶりとは、どこまでいっても整合しないのです。



 
 

 
ちゃんと記録できない最新機械

 
 DVDにこれからの私の映像メディアを切り替えようと思ったのは、VHSビデオカセットデッキと一体になったDVDレコーダーの登場でした。ともかくボタン一つでビデオから中身をディスクにコピーできるのです。これを使えば、ビデオカセットの山を崩すことができる、有り難い話です。実際やってみると、さすがデジタル記録、MPEG2画像にはいささかの品質低下もなく、小さなディスクにどんどん収まっていってしまいます。

 
 こうして買ったのが、最新の人気商品、Pa社のDMR-E70V-Sという製品です。決して安いものではありませんが、これでいろいろ片づくのなら有り難い限りです。

 
 しかし喜びもつかの間でした。これを使って、DVDへの記録をいろいろやっているうちに、妙なことに気づきました。ともかく、せっかくコピーを終えたと安心していても、テスト再生してみると、どうもトラブルが起こるのです。傷のついたLPレコードのように、同じところを繰り返し再生して、やっと先へ進む、逆に「飛ぶ」、初めのうちはできの悪い傷んだ映画フイルムのようでまあご愛敬かとも思いましたが、それが頻発するとなれば黙っていられません。放置できません。

 
 明らかに書き込み記録時の問題です。トラブルが起こるのは同じ箇所です。しかもこれが、再生するプレーヤーによってずいぶんトラブルの程度の差が出ます。なんとか乗り切って先にいくこともあれば、そこでハングアップし、他の操作も受け付けなくなる場合もあります。記録に用いたレコーダーだからおこらないというわけでもなく、トラブルは実在再現されるのです。

 
 これが頻発するとなれば、どうにもたまりません。ビデオカセットテープ再生と同時進行でかかった録画記録の時間は無駄となり、もちろんウン百円するディスクはパアになります。時間とおカネの浪費にはため息が出ますが、それ以上にかなわないのは、外見からはまったくわからないディスク上の記録に残った欠陥が、だいじなときに発現する危険です。実際、やってくれました。こうして用意したDVDに記録を移したビデオ番組を教材に使おうとして、二校の授業でそれぞれ、上映途中で止まってしまう、先に飛ぶしかないといったトラブルが別々のディスクでおこり、出席者諸君にも多大の迷惑をかけることになってしまいました。信頼性を確保できないのです。つまり別の言葉で申せば、「つかえない」のです。

 
 こうなるともうなんとか手を打たなくてはなりません。事態をともかく冷静に振り返り、思いをめぐらせ、いくつかの推測が出てきました。一つには、このように順調に終わりまで記録されたと思えたうちに生じていた隠れたトラブルだけでなく、記録開始後まもなく突然止まってしまい、記録作業解除になってしまうというトラブルもかなり生じていたことです。最初の操作の具合やディスクのセットの調子などでおこる可能性もないとは言えない(VHSカセットテープでも、はじめにから回しでの早送りや巻き戻しをしてやらずにいきなり録画にかけると、テープが順調に送られず、止まってしまうことがある)という気もしたし、失敗した記録のトラック部分はあとで記録削除するようにすればディスクは使えると思っていたので、あまり気にしませんでしたが、よく考えるとこれはうえの異常記録の最悪のケースとも思えます。事態は本当に頻発していたのです。

 
 それから、ディスクとの「相性」も考えられました。DVD-R生ディスクは、M社製のものとH社製のものとを買ってきて使っていました。もちろんどちらも同規格の、4.7GB記録タイプです。どうやら、M社製ディスクだとほとんどトラブルが起こっていないのに、H社製ディスクで頻発するのです。ちなみに、よくメーカーが「警告」するようなノーブラの安物などではありません。


 
 
 ともかく、こんなに時間とおカネを浪費してくれる、信頼を置けないものはこれ以上使えません。Pa社のサポートのサイトにまず、事情説明と問い合わせを送りましたが、案の定、「サービスの方で現物を見てみないとなにもわからない」という返事のみでした。かくして、買ってからわずか一ヶ月半でメーカーの修理に持ち込むことになりました。

 
 Pa社サービスステーションはなまじ私の住まいから比較的近くにあるので、重い思いをし、機械を担いで2-3キロも歩いていきました(私のように人力でかついて持ち込む人間がいるなんて、そこの連中は誰も想像だにしないでしょう)。持っていくと、悪い予感があたったことに、受付の女性は私の差し出した、本社サポート担当とのメイルのやりとりのコピーをさんざん睨んだあげく、なにやら書き始めます。その書きぶりたるや、「ダビング時に動作が止まってoffになってしまう」といった具合、おいおいそりゃ違うんだ、よくこのメイルの文のコピーを読んでくれ、この添付したトラブルディスク(見本3枚)を使って事態を再現して貰わないと、原因解明にならないと申しました。そうでないと、いつもながらに担当係が試しにまずディスクを入れて、記録にかけてみたら、終わりまで「止まらずに」いった、はい故障なし、異常なしですなんて戻されても困るのです。なんの解決にもなりません。

 
 そういろいろ文句を言って、ともかくよく調べてくれと念を押し、預けてきたらあっと驚くことに、それから週末を挟んで3日後には「完了」の札をつけられて送り返されてきました。最悪のシナリオかと思いましたが、サービスの説明にはこう記されていました。「当社製ディスクでは再発せず 念のため光ピック交換各部調整(別紙参照) 付属ディスクは記録状態不良です」。
 「再発せず」の文字は悪い予感の通りのものですが、それならなんで「ピックアップ交換」をしたんだという、この矛盾が笑えます。そして、たしかによくなってしまいました。以来H社製ディスクでもいまのところ同じトラブルが生じません。「付属ディスクは記録状態不良です」という、ひとごとのような言いぐさにはもっと笑ってしまいますが(その機械で記録したんだよ、「凶悪犯罪少年の親」と同じで、「不良」を作ったのはあんたのところの製品なんだと言わなくちゃなりません)。


 
 
 ともかく、この顛末をもってPa社の対応がよくないとか、欠陥品を平気で売っているとか、申すつもりはありません。このようなハイテクと精密加工組立技術のかたまりを、この値段の消費財として、互換可能な市販メディア対応の機能をになって、大量に製造販売すること自体が、いまの世界でも相当の離れ業です。それに「予期せざるトラブル」があることはある程度避けがたい、その意味「運」もありうると思います。それだけに、作り手も売り手も買い手も、みんながそれぞれなりの「覚悟」はして臨んだ方がいいのでしょう。そのかわり、いろいろなことはできるだけ「情報公開」「情報共有」する、メーカーのサポートでも、ありうるトラブルくらい重々わかるはずなので、それは「FAQ」として把握しておく、その方がお互いのためではないでしょうか?そんなことを「情報公開」すると、せっかく買おうかと思っている顧客がためらうことになるから売れなくなって困る、そういったけちな根性はなしにすべきではないでしょうか。

 
 「光ピックアップ交換」したら解決してしまうトラブル、現在の技術のあり方を前提にすれば、「原因解明」の追求よりも、それくらいはとりあえずの「解決方法」のルーティンを作っておいた方がお互いに安心できると思います。まあ言いかえれば、DVDというのにはその程度に、まだに詰められていない、除かれ切っていない問題が、さまざまなところに転がっているのではないかと思われます。この小さなディスクに、こんなに膨大な情報を詰め込んでいる、それをどのディスクにも同じ状態で記録・再生できる、どの機械でも同じように再生できる、それにはまだまだいろいろなややこしい問題は伴わざるをえないでしょう。




* このほかにも、手間ばかり大変、マニュアルと首っ引きで、なお何度も何度も時間のかかる作業を繰り返し、ようやくディスク一枚のDVD-videoを作れる、つまりまるっきり意味のないパソコン付属のDVD-Rドライブとソフト使用による超マニアック・実用性ゼロの世界とか、いろいろピンボケなことも出現しています。PCデータの保存やディスクのバックアップといったことと、映画やドラマ、ドキュメンタリー、音楽などの映像メディアの記録や利用といったこととはまるで意味が違うことがわからない、「使い勝手」二の次、「あれもこれもできます」を誇る、相も変わらぬ技術やさん的発想優先のものごとは繰り返されるのです。


 もちろん、誰が考えたか、実にせこいねらいから「リージョン制」なるものを作り、市販ソフト入りディスクをある地域でしか使えないようにした、こういったゲスな根性にも呆れます。この「リージョン」が現行のTV方式ともずらしてあって、同じNTSC方式の米国と日本のあいだでさえ互換製品がない、本当にいやらしいやり方です。なぜか日本と西欧は同じリージョンに指定されたのですが、どのみちTV方式が違うので、使えないようになる(本来はデジタルデータなんですから、TV受信機とモニターを介さなければ、PCなどのうえではどっちも写せる可能性があると思うのですが)のですから、事実上完全な「ローカル規格」をわざわざ作ってしまったわけです。

 「グローバリゼーション」をひごろお題目のように唱える連中がなんでこんな仕掛けに一所懸命になるのか、なんとも理解ができません。間違いのないことは、世界中どこでもどの「リージョン指定」でもTV方式のもとでも、すべて同じソフトを売っているのではない限り、「外国で買ったソフトのディスク」は日本では見られないというような事態をわざわざ作ってくれたという現実のみです。私はかつて在英中に買ったビデオソフトや録画したビデオカセットテープを大量に持っており(もちろんその多くは日本では入手できません)、それを日本でもなんとか見るために、マルチ対応のビデオデッキやTVセットを入手しました。最近はデジタル技術のおかげで、PALやSECAM方式とNTSC方式とのあいだの自動変換をやってのけるビデオデッキも出ているのですが、ほとんど売れていません。これも持ってはいます。しかしここへ来て、おかげさまでまた新しい壁を作ってくれました。ホントに有り難い限りです。

 入出力のTV信号を自動コンバートする、あるいはマルチ方式対応といったDVDレコーダーやプレーヤーがすでにあるのか、いまのところは確認していません。しかしあったところで、少なくとも市販ソフトのディスクについては、この「リージョン指定」が越えられない壁になります。その「壁」を破る「裏技」ももうマニアのあいだで研究開発され、市販品もあるらしいのですが、なんとなく後ろめたい、犯罪を犯しているような思いまでなんでしなくちゃならないのか、まったくもって理解不能です。「コピーを大量に作られて、もとが売れなくなる」といった問題とはまるで違うんですよ、わざわざ買ってあげようというんですよ。客の足を引っ張る、手を縛るのがなんで「グローバリゼーション」なんだと、これは言わざるをえないでしょう。


 そういったわけで、誰がいったいDVDの普及に熱心なのか、クエスチョンだらけの現実をあらためて実感したという顛末です。



 

追加


 その後いろいろ確認できたこと。

 上記のように、リージョンコードとTV方式と、さらにDVD-RだDVD+Rだとディスクの種類でがんじがらめ、さっぱり分からないように分断されたDVD映像メディアの世界ですが、まず一つの朗報は、予想通りにリージョンが合えば、TV放送方式の違いにかかわらずPC用のDVDドライブでは再生可能ということです。デジタルデータをデジタルで画像・音声再生するのですから当然です。もちろんそれをTV画像用に出力しても、今度はTV方式が引っかかってくるでしょうが。まあ少なくとも、これで日本と同じリージョン2に指定されている欧州向けDVDソフト(旧USSR圏を除く)は、PALでもSECAMでもかかわりなく日本国内仕様のPCで見ることが可能です。

 それからこれも当然ながら、各国向け仕様になっているDVDプレーヤーは多々存在します。それをそれぞれの国ではなくても、日本の秋葉原の旅行者向けショップへ行けば入手可能です。もちろんそれはちょっと危なそうな改造品ではなく、れっきとした市販製品です。

 これらは残念ながら一般には各リージョンに複合対応はしないもの(そうしたものも若干ある)のですが、欧州向けプレーヤー製品ではリージョン2ながらPALやSECAMとともにNTSC対応のものが多くあり、しかも画像出力として両方式のあいだのコンバーターを備えたものもあります。それならば、欧州市販のPAL方式のDVDでも日本のNTSC方式TVで見ることが可能になります。もっとも画像の品質は落ちますし、若干トラブルも出そうですが。


 欧州関係と日本とのあいだではこのようなかたちで、実践的にはかなり互換性ある利用が可能です。しかし最大マーケットの北米大陸(リージョン1)、さらにリージョン3の東アジア諸国、リージョン6の中国、リージョン4の中南米・オーストラリア、この辺はリージョンの壁に引っかかってしまい、かなり困難です。

 実際のこれらの国々の市場でどのようにDVDソフトが売られているのか、まだ確認はできませんが、少なくとも私が訪れたシンガポールの店では、かなり不思議なことがおこっていました。つまり、指定されたリージョン3のDVDだけでなく、アメリカ製のリージョン1、欧州製のリージョン2といったものも堂々並んでいるのです。リージョンをあまりはっきり記していないもの、またちょっと危なそうな「All Regions」とされるものもあります。

 こうした国の一般家庭では以前から、異なるTV放送やビデオを見るために、マルチ方式対応のTVディスプレイが普及していますので、リージョン問題がクリアーできればかなり見ることができましょう。




二追

 上記のことには追加すべき新事実があります。

 中国メーカーなどの製品には、はじめからNTSC、PAL各方式対応になっているものがあり、最近日本の代理店を通じて広く売られるようになりました(ディスプレイ一体のポータブルプレーヤーなど)。もちろん日本の消費者は「聞いたことのある」ブランド品しか手にしないので、そのうち店頭から消えてしまう恐れも大ですが。


 それだけではなく、「PAL対応」とまったくうたっていない製品が実はPAL方式等対応になっている「隠れマルチ方式プレーヤー」もあるのです。純粋国産品がです。

 私の手元にある、パイオニアのDV-U7というのがその一つで、私自身もそのことに最近まで気がつきませんでした。たまたまPAL方式のDVDをかけたら、ちゃんと再生するのです。もちろん出力がPAL方式なので、マルチ対応ディスプレイでないと写りませんが。
 このことは奇妙にも製品の取扱説明書にも明記されていません。したがって、同じような製品は相当数「隠れている」可能性があります。試してみる価値はありましょう。あくまでデジタルデータを再生し、それをデジアナコンバート・TV映像信号化をするだけ、この辺はユニット部品化されていますから、同じ回路部品が各製品で使い回されている、あまり不思議なことではないのかも知れません。



おまけのぼやき


 先日、ドジをやってしまいました。

 某非常勤出講先大学院の授業で、DVDに記録してある映像ものを教材として見せようとして、私愛用の携帯DVDプレーヤーを壊してしまったのです。


 この大学は高い授業料を取っているくせに院生諸君の待遇はいいとは申せず(そう書くと、どこの大学かわかってしまいますが)、授業は20人以上出席しているかなりマスプロ(一番はじめの年度ではそれどころか50人以上もいた)、しかも設備や備品はかなり古くなったままなのです。DVDを見せようと思ったが、教室にはプレーヤーが備えられておらず、講師室で聞いたら、これを持っていってくださいとビデオデッキつきのでかいやつ(つまりうえに延々と記したのの同類)を示されました。こんなの担いでいくのもいささか業腹なので、行き帰りに電車の中で見るのに持ち歩いている、現在愛用の携帯DVDプレーヤーでいいじゃないと決めた、それが運の尽きでした。
 これを教室内AV設備にセットして、テストも済ませ、いざ本番、首尾よく写しはじめたものの、ちょっと教室の照明をいじろうと余計な動きをしたとたん、自分でDVDプレーヤーの電源コードを引っかけてしまい、プレーヤーごと派手に落っことしてしまったのです。

 もとより、電源を壁のコンセントからではなくAVコンソールの方から取ればよかったのですが、それがPCやらなにやらで満杯状態(机上の自分のPC用に電源を取っている学生までいて)、それでも第一、バッテリー内蔵のDVDプレーヤーなんですから用心深く電源を外から取らなくてもよかったのです。なに、帰りの電車の中でバッテリー切れで見られなくなるのも寂しいとセコいことも考えた報いなのですが。


 派手に落っこちたプレーヤーからはディスクが飛び出した状態、これはいかんかと拾い上げ、再度ディスクをセットし、回してみるとちゃんと動きます。液晶画面にも異常はないようです。やれやれと思いましたものの、どういう加減かディスクのカバーが閉まりません。授業の時間を無駄にしたくないので、とりあえずカバーのうえに本を積んだらなんとかなりました。それで予定の教材を見せることはできました。

 授業を終えたのち、明るくしたもとであらためて調べてみると、カバーを本体に止める部分がうまく働きません。ふたが閉じないのです。ふたにはスプリングで開く仕掛けがあり、またふたが閉まっていないと本体は動作しないので、困ったことです。よくよく見てみれば、カバーについている小さなカギ型のノッチが折れてしまい、その破片が床に落ちていました。ほんの数ミリの小さな部品ですが、これがないとふたが本体に引っかかってとまるようにならず、プレーヤー全体が動かないわけです。携帯用なのですから、本を積んで無理にふたを押さえておくわけにもいかず、えらいことになったとようやく覚りました。


 こんなことになるのならば、あのでかい備え付けプレーヤーを担いでいった方がよかったという後悔も先に立たず、ともかくなんとか修理できないものか聞いてみるしかない、まだ買って半年なのだけれど、自分の愚かなヘマで壊したもの、保証は効かないだろうが、直れば有り難いものと割り切り、買った○○カメラの修理窓口に帰りに持ち込みました。
 さすが情報化のすすんだ○○カメラ、保証書を持っていなくてもいつ、どこの店で買ったものか顧客DBで調べ出します。しかもそのアクセスを自由にできるわけじゃなく、電話で問い合わせているところも「個人情報尊重」的です。「まあ、直せると思いますよ」というのが窓口担当者氏の言いぐさでした。彼もこのほんの小さなノッチが折れただけのものは修理可能だろうという楽観的な見通しを持ったようです。

 それでも私は半信半疑でした。プレーヤー本体のふた部分の内側にとりつけられた小さなツメですが、これが別部品ではあるものの、ふた部分に組み込まれてついています。こうしたプラ成形はいまどき、別の部品を「組みつけ」たりはしない、一体成形で複数工程を経る中で組み込んでしまう、これがかつては高等技術、いまでは「世界の常識」化しているからです。このDVDプレーヤーをつくったであろう中国の工場ででも当然そうやっているでしょう。そうでなければなんでこの値段で出来ますか。

 「修理費見積もりのうえ」という、近ごろ多い修理引き受け条件で、そして10日近くたって返答が来ました。「使用上の事故による破損なので有償修理、本体交換をする」、それが回答です。要するに直せません、新品と代えますが、一台買うより安くしますというだけです。これはさもありなんと思いました。うえに書いたように、すべてが一作業、一部品ユニット化しているのです。ふただけ交換もできなさそうなつくりです。それをバラして、もう一度組みつけなおし、組み立て直ししていたら、おそらく一台の値段の倍くらいになってしまうでしょう。仕方ないではありませんか、結局本体を買った値段の55%くらいの修理費を払って、新しい本体に交換をして貰う、これを納得しました。付属品の充電池やリモコンやうらみのAC電源などを差っ引いてみれば、おそらく本体一台の裸の値段とほとんどちがわないのではないかと想像しますが、そのままではゴミと化す、残されたこれらの付属品などのことを思えば、また自分の愚かさへの手痛い処罰と考えれば、半年使ったことを含めてこの出費に納得するしかありません。

 
 まあ、たいした額でもないこの出講の給与の1/10近くを一瞬のヘマで私は失ってしまったわけです。もう絶対に校務でわが私物を犠牲にはしないぞ、なにがなんでも授業などでは備品以外は使わないぞと、あらためて決意をしました(そのちょっと前、本務先の構内で、やはり授業のために、別の私物をあっという間に持ち去られ、潰されるという目に遭わされました。これは現物弁償して貰いましたが)。

 それにしても、いまどきの電機もの、こういったものがほとんどでしょう。なかみのメカは「組み立てるに便利な」、つまりもうバラすこと不可能なつくりに徹し、単なるモジュールの塊+一枚のPCB基板、外はワンショット一体成形、ネジ一本も見あたりません。故障したら基本的に捨てるしかないようになっているのです。それでこの値段でつくれるわけです。事実上使い捨て製品化したケータイなどと、DVDプレーヤーが違っているはずもありません。ま、落っことしてもそう簡単にはイカレないケータイと比べれば、ちょっとヤワな感じもしますが、しょうがないですよね。



(2024.2)  もう20年以上経てば、DVDという映像などのデータ記録/再生用に便利な製品などという発想自体、時代遅れになってしまいました。薄いディスク一枚にこれだけのデータを記録/再生できるというのは誠に優れているといまも思うのですが、ともかく「手元に保存する」という発想自体が時代錯誤のようです。再生するにもプレーヤーなど要りますし。
 すべて、何でもかんでも「須磨甫で済ませる」時代がやってきて、動画だって手元のスマホがいつでも撮ってくれる、それで済むんですから。インターネット上だろうがスマホ本体のメモリだろうが、どっかに保存しておけばいいんですから。


 ただ、私も懸命に時代に取り残されないよう、私なりの一工夫はしております。

 シュミの映画やTV番組などを、PCデータとして保存しておき、USBメモリだのPC付属のメモリだのに入れておいて、好きなときに見る、そうすればプレーヤーも要らないし、です。もちろん、「んなことは出来ないはずだ!」とどっかから一喝される恐れもあるのですが、それを可能にする、二段階空中ひねりのような技と手段を、実は持っているのです。大きな声では言いがたいのですがね。

 ただ、それにしてもますます中途半端なのが、BDブルーレイディスクでした。DVDより画質がいいのが売りでしたが、そんなに顕著な差(アナログのビデオテープやLDに比べ)もないし、それでいてプレーヤーなどでかくて重い、しかもがんじがらめのプロテクトがかかっていて、絶対に「コピーできない」ですしね。絶滅も近いかと思われます。



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