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3.裁判(少額訴訟)を起こすには

こちらの主張が相手側に受け入れられず、どうしても相手に対して納得がいかない
場合、最終的な措置として、裁判を受ける(=訴訟を起こす)権利を行使することも、
選択肢としてはあり得ます。ここでは、その最低限の注意点について述べてみます。

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●1998-12-20 : 新製、 ●1999-01-19 : 一部加筆、 ●2001-10-18 : レイアウト&デザインなど変更+加筆
●2006-03-28 : 請求額上限が60万円までに改正されていることに対応し、古い記述部分(30万円)を訂正(Δ1)

■ 示談がこじれた場合はどうする? ■
示談がこじれたり、いつまで経っても話しが平行線をたどるような場合は、やむを得ず裁判を受ける(訴訟を起こす)ことも選択肢として検討しなければならないかも知れません。つまり、公的な第三者による絶対的な判断を仰ぐという選択です。この場合、訴えを起こすこちら側が「原告」、対象となる相手側が「被告」と呼ばれます。

請求金額が60万円以下(Δ1)の場合、新民事訴訟法による「少額訴訟制度」という手続きを利用することで「一日結審」も可能になりました。以下では、この制度の利用上の注意などについて若干解説します。

(Δ1) 2006-03-28 追記;
請求額の上限については、従来は 30万円でしたが、平成15年に民事訴訟法が改正・施行されて 60万円までに引き上げられておりました。同制度を検討されている方は、ご注意願います。
 

■ 少額訴訟制度(請求金額60万(Δ1)以下)の注意点 ■
少額訴訟制度により、個人であってもあまり煩雑な手続きを経ずに訴訟を行えるようになりました。しかも一日で結審することから利用者も増加しているようですが、たとえば次の点で注意することも必要です。

(1)少額訴訟による判決に対しては、控訴できない。
(2)被告側が「少額訴訟」ではなく「通常訴訟」への
  移行を申し出たら、原告はこれを拒否できない。

まず上記(1)についてです。普通は「自分の主張が正しい」と思って裁判に望むわけですが、裁判官が様々な角度から検討を重ねた結果、判決内容が自分の訴えとは異なることになる・・・といった可能性も当然出てくるわけです。

通常の裁判の場合、判決内容に不服があれば控訴できますが、この少額訴訟制度ではそれができません。 たとえ判決が当初の予測とは異なった内容になったり、あるいは自分に不利な結果になったとしても、自分自身も法的な拘束力のある判決に従わなければなりません。つまり、相手も文句が言えなくなる代わりに、自分も文句が言えなくなるという意味です。

次に上記(2)です。こちらは実際に訴訟を起こす場合の大きな注意点です。たとえば訴える相手側に、相手側の保険屋さんが直接からむ場合、少額訴訟では控訴できないことを先読みして、「通常裁判に移行しよう。」 と申し出てくることも十分考えられます。そうすると、こちら側ではその申し出を拒否することができないのです。

つまり、「相手は企業、自分は個人」という図式になってしまい、結審までの長い期間、労力とお金をかけて闘わなければならなくなります。これでは、せっかく「少額訴訟」「一日結審」にした意味がなくなってしまいますので、実際の訴訟の際には、慎重に検討を重ねる必要があるという意味です。
 

■ 訴訟に必要な書類は? ■
どう考え直しても、やっぱり訴訟しか手がない、という場合もあるかと思います。その場合は周到な準備が必要になりますが、ここでは一般的に伝えられている必要書類について簡単に述べてみましょう。

より詳しい事柄については、やはり弁護士さんなどに直接お尋ね下さい。市役所などの法律無料相談窓口(事前予約が必要な場合があります)を利用すれば良いでしょう。それらの相談窓口以外では、(財)日弁連交通事故相談センターという組織があります。
 

必 要 な 書 類 (必ず必要なもの)

事故証明書
   事故は警察に届け出ているはずですよね?
請求額の根拠となるもの
   具体的には、金額が分かる修理明細表、あるいは事故前後
   での査定表など、請求する金額のより所=判断根拠となる
   資料です。裁判官に正当な金額であると納得してもらうため。

あ っ た ほ う が 良 い 資 料 

車の売買契約書
   対象としている自分の車の新車価格が分かるもの。裁判官にとっては、
   車名やグレード名だけでは車の価格が分からない場合が多いようです
   ので、車としての客観的な価値を判断してもらうための資料として用意
   します(※ただし、値引き額が大きな場合は不利にならないようにする
   ため、新車販売価格表にしておく方が無難です)。
修理前後での写真
   事故の規模を裁判官に「目で見て」理解してもらうための資料とする。
   自分で持っていなくても、たいていは修理工場や自分の保険会社の
   アジャスター(修理査定員)さんが写真を取っている場合が多いので、
   確認するのが良いでしょう。
過去の判例
   あったからといって、必ず役に立つとは限りませんが、担当裁判官に
   対して 「過去にはこのような高額の評価損が認められています。」 と
   いう資料として、提出します。
   一日で結審するような裁判では、なるべくこちら側が有利なるような
   資料を用意しておき、裁判官に見てもらうように努力するのが良いで
   しょう(※必ずしも判定に左右するかどうか分かりませんが、こちらは
   正当な請求を求めて自らも努力しているのだ、という姿勢をアピール
   するのが良さそうです)。
その他、上申書など
   これはぜひとも裁判官に見てもらいたい、といったもの。自分の意見
   が客観的に筋が通っていることを主張した上申書(書面にまとめた
   もの、書式は自由)を提出するもの良いでしょう。
■ 請求先はどこにする? ■
請求先は、通常は相手(加害者)本人にします。
請求先を相手の保険会社にしてしまうと、個人が企業相手に闘うことになり大変です。実際には、請求先を相手本人としても、相手は通知を受けた時点で相手の保険会社に連絡を入れるでしょうから、(仮に相手が敗訴した場合)事実上は相手の保険会社から評価損の金額を回収できることになる場合が多いようです。

次に書類の提出先と請求範囲についてです。
住居地、または事故現場、のどちらか近い方の管轄簡易裁判所になります(費用は、印紙代やはがき代などで約5000円だそうです)。その際、請求範囲は評価損=「物損に対する損害」であることを明言します(判決が人身面にも及んで、人的な保証権利を喪失する恐れを避けるため)。

ちなみに、保険会社では人身と物損で担当部署が異なる場合があるそうです。したがって、示談も人身と物損とで別々に行われることも多いそうです。

■ そ の 他 の 事 例 の 紹 介 ■
訴訟を考えている方々は、もうすでに事故にあってしまったわけですが、幸いにも(?)まだ事故にあわれていない方々のために、こういう事例もあるという紹介を最後にしてみます。

・車の中に、紙と筆記用具(鉛筆不可)を用意しておく。
・事故にあった場合、その場で相手本人に 「評価損が
 生じた場合は弁済する」 旨を、自筆で署名してもらう。
・その後、相手の保険会社と交渉する際に「そちらの契約者から直接
 署名をもらっていますから、評価損が御社で 支払いできない ようで
 あれば、契約者に支払っていただくようお願いします。」と主張する。

 
これは、「当事者同士の約束事は効力を持つ」という原則を利用した対処法だそうです。事故などの万が一のときのために、車の中に使い捨てカメラを常備する方は意外と多いかも知れませんが、現場で紙と筆記用具を相手に見せて一筆書いてもらう、という発想はなかなか浮かびません。しかし、これくらい割り切って行動した方が、後々のトラブル防止になりうると思えば安いものですね。紙に証拠が残るわけですし。ただ、納得しない相手を恐喝したり無理強いして書かせた場合は、もちろん無効になるでしょう。

上記は、示談交渉の場合(裁判まで発展していない)に念書が生きた例です。裁判になった場合、相手(加害者)の「念書」 はほとんど法的な効力を持たないと法規上は解釈されるとの指摘を読者の方からいただきました。逆に言うと、相手の念書を有効利用できるのは示談の場合、ということになりそうです。いずれにせよ、普段から「もしも」の際にも落ち着いて行動できるよう、心構えを作っておいたり備品を用意しておいたりしたいものです。昔の人々は「備えあれば憂い無し」とはよく言ったものです。
 

■ あ と が き ■
もしも裁判まで進んだ場合は、自分の判決が判例記録として後世までずっと残り続くのだ、ということを自覚して、ぜひとも勝訴を勝ち取りたいものです。

多くの保険会社では、「修理を行って現状復帰するまでが保険の範囲である」 との考え方に立ち、なかなか評価損自体を認めようとしません。しかしその一方で、判例では 「修理費の約3割を評価損として認めた事例が過半数であり、修理費の約2割を評価損として認めた事例も約2割を占める」 という指摘もあります。

結局のところ、「訴訟を起こしたり裁判を起こしたりする」・・・という行動に出る出ないを決めるのは、その当事者ご本人であり、評価損がどれくらい認められるのならば満足できるか、というのもご本人次第なのですが、問題解決のために 「前向きな姿勢」 で徹底的に交渉していくことも、時には重要であると思います。

以上、評価損(格落ち)に関し、私なりに調べたことを簡単に紹介しました。なにぶん素人ですので、至らない表現もあるかも知れませんが、読んで下さってありがとうございました。この次のページからは、読者の皆さんからいただいた投稿(実際の体験談)を紹介させていただきます。
 

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