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孫と歌

2011.12.09. 掲載
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孫は3歳1ヶ月となった。3歳までの孫の成長記録を年内にまとめたいと思っている。成長記録は14のカテゴリーに分けて記載してきた。その13番目のカテゴリー「音楽」について、エッセイ形式でまとめ、成長記録をまとめる模索練習としたい。

14のカテゴリーのうち、高度な人間的行動のカテゴリーに属すると考える「気質」「鑑賞」「音楽」「自我」の4カテゴリーは、孫の成長の中で最後(0歳10ヶ月〜11ヶ月)に出現した。

その一つである「音楽」のカテゴリーの記録は0歳11ヶ月から始まる。それ以前にも孫の周りには音楽が豊富にあり、それを楽しんでいたのかもしれないが、観察記録には入っていない。

私は書斎に「朝の3時に(THREE O'CLOCK IN THE MORNING )」というジャズ・ソングを口笛で吹く人形を置いている。ワインを右手に持ち、左腕を欄干に巻付けた酔っ払いが、首をふりふり口笛を吹く。これは99年に函館のオルゴール館で買ったものだ。



図1.「朝の3時に」の口笛を吹く酔っぱらい人形

函館のオルゴール館でこの口笛人形を触っているところへ妻がやってきた。てっきり、私が口笛を吹いていると思ったらしい。妻が間違うほど、私の口笛に音色や吹きかたが似ていたようだ。そのころ、私はよく口笛を吹いていた。夜の梅田の地下街をほろ酔い気分で吹く口笛は心地良かった。

また、この「朝の3時に」という曲は、私たち夫婦の結婚披露宴で、新婦お色直し後の再入場の際のBGMとして、マントヴァーニ管弦楽団が演奏するこの曲を流したという因縁もあった。もちろん、酔っ払いのための曲ではなく、時を忘れ、朝の3時の鐘の音が聞こえるまで踊り続けた恋人たちのための曲である。3時を告げる教会の鐘の音が効果的に使われていたのを思い出す。そういうわけで、この酔っ払い口笛人形が気に入り、購入したのだった。

孫はこの人形も、それを操作して口笛を吹かせることも好きだったが、それ以上にこの曲が好きで、祖父母宅に来ると、必ずこの曲を鳴らし続けさせた。私たちは聞き飽きて、うんざりするのだが、止めるとすぐに聞きつけ、再開させる。だから、孫が祖父母宅にいる限りこの曲は鳴り続けていた。

孫は、重いこの人形を自分で持ち運び、スイッチの「ON」「OFF」を操作し、バッテリーが切れれば鳴らなくなることを知って、うまく音が出ないときには、バッテリーを交換するように身振りで指示をした。

この口笛人形に、それ以来7ヶ月ばかり愛着を持っていたが、1歳7ヶ月からは、人形も曲も避けるようになり、私たちはほっとした。2歳2ヶ月から、また愛着を持つようになったが、今度は以前ほどの執着はなく、たくさんあるお気に入りの一つになっている。口笛人形について「オサケヲ、タクサンノンデ、フラフラシテルネー」と言うのは、以前そのように祖父が説明したのかもしれない。

孫が「歌」に関心をもつようになったのは、1歳の誕生日に聴いた「ハピーバースデイ、トゥユー」だろう。そして1歳3ヶ月には「キラキラ星」を「キラキラヒカル、オソラノホシヨ、マバタキシテハ、ミンナヲミテル」と歌い、1歳7ヶ月では「バラが咲いた」を「バラガサイタ、バラガサイタ、マッカナバラーガ、サービシカッタ」を音程もリズムも正しく歌った。

翌月1歳8ヶ月からは、祖父が出演するミュージカルに興味が集中するようになった。祖父が持ち帰る練習ビデオを何度もくり返して見ながら、真似をして歌い、祖母に手伝ってもらって踊る。そして、その中に出てくる「キツツキツイスト」「らくだのダンス」「ヤンキモンキーベビ」などのたくさんの歌を覚えてしまった。

1歳9ヶ月の時にミュージカルの公演が3回行われたが、孫はその3回とも、喜んで聴き楽しんだ。翌月の1歳10ヶ月には、祖父がミュージカルで歌った「美しき国・美しき人」というスローバラードを、音程正しく歌うのに、祖父母は驚嘆してしまった。

大人に本気でほめられ、感心されたということは、孫にとって大きな自信となり、この歌を自分の十八番(おはこ)と思ったようだ。それに気づかず、祖父は孫が一人で歌おうとするのに割り込んで、孫のプライドを傷つけてしまったこともあった。

2歳2ヶ月ころまで、ミュージカルのビデオを見ながら、孫が歌い踊り、指揮の真似をする日が続いた。この祖父のミュージカル出演が孫の音楽、歌への関心を高め、楽しさを教えたことは間違いあるまい。祖父がこのミュージカル出演を承諾した一番大きな理由が、孫に見せてやりたいことだったので、選択は間違っていなかったと思っている。

2歳3ヶ月には、祖父の携帯メール着信のメロディー「いつか王子様が」に、孫は耳を澄ませた。2歳6ヶ月の時に、祖父母が小樽土産で買ってきたメリーゴーランドのオルゴールの曲が、この「いつか王子様が」だった。これはディズニーアニメ「白雪姫」の中で、白雪姫がこびとたちに歌って聴かせる曲で、ジャズでもよく演奏される。



図2.「いつか王子様が」を演奏するメリーゴーランドのオルゴール

祖父がオルゴールのメロディーに合わせ、「Someday my prince will come, someday we'll meet again, りおちゃんが好きよ、りおちゃんが好きよ」と歌うと喜び、真似をして孫も歌う。もちろん英語はあやふやなのはしかたがない。

2歳7ヶ月ころから、ジブリのアニメ主題歌を好んで歌うようになった。「さんぽ」「トトロ」「崖の上のポニョ」がお気に入りである。「崖の上のポニョ」を歌っているとき、祖父はいつも相の手をいれる箇所がある。それは「あのこが大好き まっかっかの」の「まっかっかの」を「りおちゃんが好き」と叫ぶのだが、孫は笑っている。

2歳8ヶ月、林正子の「風の谷のナウシカ」の歌を聞いたあと「りおちゃんも大きくなったら、この人のように上手に歌えると思うよ」と言うと、すぐに高音の部分は裏声を使って、同じ音程でメロディーの最後を歌ったのには仰天した。

2歳9ヶ月にはアニメの主題歌「さんぽ」を替え歌で歌った。これが替え歌の最初で、「歩こう 歩こう わたしは元気」を「コアラ、コアラ、コアラコアーラー」と歌った。コアラのマウスパッドを見て思いついたのだろう。それから約2時間後、デパートから帰りの車の中で、信号の緑を見て、「ミドリ、ミドリ、ミドリハーミドリー」と歌い、その10分後には「ラララ、ラララ、ララララ、ララララ」と「ラ」で歌った。

2歳11ヶ月、噴水が終わって残念だったね、だけど仕方がないねと祖父が言うと「シカタガ、ナインダ、キミノタメ」と「星影のワルツ」を唱うので吹き出した。両親がこのような歌を教えるわけがないので、これは祖父が歌ったことがあり、それを覚えているのだろう。会話ではよくあるが、歌でもとっさに適切な表現ができるのに感心する。

3年間、孫の成長を観察してきて、音楽の好きなこどもであること、リズム感が良く、歌う音程が確かであることを知った。音楽好き、リズム感が良いことは環境の影響もあるかもしれないが、歌う音程が狂わないのは、持って生まれたものではないかという気がする。普通こどもは、小学校に入るころまでは、音程の不安定なことが多いのに、孫は「キラキラ星」を歌った1歳3ヶ月から、音程が安定しているからだ。

今は音楽的才能に恵まれているように見えるが、どのように成長していくのだろうか? 残念ながら、それを見ることのできる時間はあまりない。しかし、この子には幸運が待っている気がしている。


<2011.12.9.>

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