病理組織検査

 
 

 病理組織検査は、患者の患部より切除された組織をホルマリン液で固定した後、数ミリの幅に切り出し、パラフィ ンで固めてブロックを作製します。次にパラフィンブロックミクロトーム(薄 切装置)で4μmに薄切し、スライドガラスに張り付け、細胞や線維を観察するための色々な染色をして顕微鏡で観察できるようにする重要な作業です。病 理診断は、患者の手術方針や治療の予後を左右する重要な検査です。最近は、抗体を用いた免疫組織染色も行われ、細胞の同定や良・悪性の証明、或い は癌遺伝子等の証明も行われています。


 広島安佐市民病院の 田中信利さんより提供いただきました。
パラフィンブロック作製過程における脱水剤および中間剤の使用に関するアンケ−ト 調査についての全文 を掲載しました。



 
免疫染色と固定
  病理学的検索では20%緩衝ホルマリン液で固定された検体より、ヘマトキシリン・エオジン染色や特殊染色を作製し、組織学的診断を実施しています。特に悪 性リンパ腫と分化度の低い癌腫の鑑別や悪性リンパ腫のT,B分類あるいは、肉腫の鑑別診断、更には腫瘍の悪性度(予後推定因子)等においては上記の検索方 法のみでは有用な情報が得られず、免疫染色が重要な検索手段となります。このような検索方法においては特に標本作製が判定を大きく左右する重要なファク ターとなります。貴重な組織材料を有効に検索するためには、適切な検体処理を実施していくことが重要です。

病理技術
(社)広島県臨床衛生検査技師会 病理検査研究班 小川勝成
メタノール及びイソプロピルアルコールを用いた脱水
第28回中国・四国臨床衛生検査学会病理シンポジウムにおいて病理検査研究班では「パラフィンブロック作製までの至適条件の検討」と題するシンポジウムと それに関するアンケート調査を100施設の参加を得て実施した。
病理検査法は、施設間で色々と工夫され、経験的な要素が大きく占めるため他の検査と比べると精度管理が難しい事が上げられる。我々が、行ったアンケート調 査においても、それがよく現れていた。パラフィンブロック作製法、特に脱水工程では、一般にアルコールが多く使用されているが、それに替わる良い脱水剤、 あるいは中間剤がないか各シンポジストに検討を頂いた。


広島市民病院:メタノール脱水の有用性について検討。
 メタノール脱水に関してはエタノールよりも脱水速度が速く組織の硬化が少ない点が利点である。広島市民病院では100%メタノールからの脱水法を用いて 良い結果を得ている。


山口大学第一病理学講座:エタノール、メタノール、ア セトンとイソプロピルアルコールの脱水能力及び脱脂能力について比較検討。
特にイソプロピルアルコール脱水は他の脱水剤と脱水能力に差がなく、組織内部への浸透性が早いことが見いだされた。特に鉛、カドミウム等の重金属を用いた 固定では、脱水にイソプロピルアルコール脱水を用いれば、従来、凍結切片でしか染められなかった T cell マーカーも可能と報告された。更にイソプロピルアルコールはキシレンとの相溶性が他の脱水剤より良いとされており、これらの事よりイソプロピルアルコール 脱水を推奨した。


高知県立中央病院:キシレンとそれに代わる Hemo De、レモゾールについて検討。
キシレンと比較して Hemo De、レモゾールは浸透に時間がかかる傾向を示した。特に中間剤の浸透には、組織の厚さと浸透時間が組織の硬化に大きく関与する事が報告された。


考察:検討ではパラフィン包埋法における脱水には脱水力の強いメタノール脱水あるいはイソプロピルアルコール脱水を用いた高濃度からの系列を用いた方法が 推奨された。特に100%エタノールは脱脂力は他の溶剤より優れているので上記の脱水剤と組み合わせれば、よりよい脱水・包埋法が可能である。尚、中間剤 にはメタノールとクロロホルムとの組み合わせ、あるいはイソプロピルアルコールとキシレンとの組み合わせが理想的とされる。
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このページは 98.1.15 にアップデートされました