標本作製に関する工夫

 

肺クリプトコッカス症におけ る菌体の証明法について New
 クリプトコッカス症の染色法として成書には、PAS反応、ベストのカルミン染色、アルシアン青染色が書かれていますが、実際に染色したところ、菌体より もむしろ間質の方が強く染色されました。そこで今回、グリドリー染色、グロコット染色とコロイド鉄染色において若干の検討を試みたところ良い結果が得られ たので報告します。グリドリー染色では、色だしにお湯を使用して発色を促進した。また、グロコット染色では電子レンジを使用して膜を明瞭に染め得た。アル シアンブルーでは不明瞭であったが、コロイド鉄染色を実施したところ非常に明瞭に染色された。写真はStain Gallery に掲載しています。

メラニン産生腫瘍における免 疫・ギムザ重染色について

 amelanotic melanomaの場合は問題とならないが、メラニン色素産生の顕著なメラノーマの症例においては免疫染色の発色と既存のメラニン色素との区別が不明瞭で ある。特に、ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体を使用し、その発色にDAB(ジアミノベンチジン4HCl)を用いた場合は陽性部位が茶色に発色するため にメラニン色素との鑑別が困難である。更にアルカリフォスファターゼ(AP)標識抗体を使用した場合やAEC(アミノエチルカルバゾール)で赤色に陽性部 位を発色した場合も同様に鑑別が困難である。 しかし、後染色にギムザ染色を実施した場合、メラニン色素が青緑色に染色され核が青く染色されるので組織形態も十分に把握できる。
 胸水のセルブロック標本において中皮細胞とメラノーマ細胞を鑑別する目的で免疫二重染色を 実 施した。その結果、メラニン色素は青緑色〜黒色に染色され、中皮細胞は茶色、メラノーマ細胞は赤色に観察され三者の関係が明瞭であった。

電子レンジを用いたグリメリ ウス染色

 グリメリウス染色は通常37℃、一晩の反応を行いますが電子レンジを用いると約10分で染色が終了します。通常の0.03%硝酸銀溶液を用いると共染傾 向が強くなりますが、界面活性剤Triton X-100を加えることで余分な 銀 粒子の沈着を おさえることができます。
   参考文献 佐々木政臣:臨床検査41:471-473,1997
Strip Bioosy の包埋法
 内視鏡検査が急速に発展し、strip biopsyが増加傾向にあります。広島大学附属病院ではほとんど毎日strip検体が提出されます。多い時には、ひとりの患者さんで6個の検体が提出さ れます。私は3年前より、操作の簡単なキムワイプでくるむ方法を取り入れて作業が能率的に 進んでいま す。以前は四つ折りでしたが、もっと簡単にして現在は二つ折りに挟み込む方法で行っています。

『切り出し用臓器カラーコ ピーの作成』

 秋田・中通総合病院病理部 鷲谷 清忠さん提供
はじめに: 病理標本作成のために、最初に手術摘出臓器の切り出し作業が必要となる。これまでは、病理医がスケッチングしながら切 り出しする部位を決めていたが、この方法は作業に要する時間がかかりすぎることと切り出しする部位が正確には解らないことなど、問題が多かった。そのた め、当院病理では3年前から臓器をカラーコピーして、切り出しを行っている。そこで、その方法やメリットなどを紹介する。
方 法: 当院では、毎週2回に分けて切り出しを行っているが、切り出しする臓器を予めカラーコピーしておく。そして、病理医がそ のコピーに組織切片を作成する部位を直接書き込みながら、作業を進めることになる(画像参照)。 組織染色標 本を作成したら、組織診断依頼書とそのコピーを参照しながら検鏡する訳である。
 カラーコピー機は、FUJI XEROX の Acolor636(300dpi)を使用している。臓器コピーは、直接コピー台に載せるとホルマリンや水に濡れるため錆びたり故障を起こしやすいので、 魚拓用のプラスチック容器(ギョタック)をコピー台に載せ、その中に臓器を入れてコピーしている。尚、コピーされた用紙は組織診断書控と一緒に製本して保 存している。
結 果: この方法により、改善された内容を以下に列記する。
1.切り出し作業時間が大幅に短縮された
2.コピー用紙は、写真用印画紙と異なり直接色鉛筆でも書き込めるメリットがある
3.カラーコピーされた臓器は、正確で微細にわたる観察が可能になるため、組織標本と対比検討しやすい
4.正確な切り出し部位が後でも解るので、再切り出しの症例が減少した
5.コピーされた用紙を製本して保存して置くため、症例発表などに利用できる
おわりに: 最近、Acolorのコピー精度が300dpiから400dpiに更新され、価格も大幅に下がっている。そのため、コ ピーされた臓器の精細さは目を見張るものがある。さらにはコンピュ−タとも接続できるため、画像のファイル化も可能になり応用範囲がますます広がってい る。
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このページは、98.12.25にアップデートされました。
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