【8月30日(日)】

 8時すぎに泣きながら起きて荷物をまとめる。
今日のうちに東京に帰るのはたいへんそうなので、もう一泊とったんだけど、部屋が変わってしまうため、どっちみちざっと荷物を整理しなければならないのだった。
 昨日のところで書き忘れてましたが、さいとうよしこは三村美衣ともども、名古屋パルコの島村楽器でiMacを購入。しかも店から送らずに、タクシーでホテルに持ち帰り、昨夜の宴会のあいだに箱から出してセットアップ(といっても、Windowsマシンじゃないので、電源入れれば起動してすぐ使える)をすませ、そのへんのMac者に見せびらかしてたんでした。なんか小江さんも買うらしい。みんなどうしてそんなに好きかな>iMac。
 その巨大なiMacの箱をべつの部屋に移動する人もたいへんだと思うけど、まあオレが運ぶわけじゃないからどうでもいいや。さいとうよしこは今年山ほど仕事しているので、このマシンは自分の小遣いで購入したらしい。三村美衣も自分で買ったと主張してますね。

 8時半にホテルを飛び出しタクシーで出発。10分前に会場に到着し、初対面のサンライズの人々(5スタの岩田幹宏プロデューサーと、文芸担当の稲荷昭彦さん)とそそくさと挨拶。きのう、ミステリー企画打ち上げの裏で打ち合わせを兼ねた夕食会が予定されてたんだけど、そっちはパスしちゃったからな。
 もっとも、細かい段取りは、企画主宰者であるところの松岡さん@星界軍情報局(旧:九大森岡浩之帝国)が詳細なメモを用意してくれてるので、そこに書いてあるネタを消化してるとちょうど時間いっぱいになりました。うーん、みごとだ。
 赤井さんはがんがんしゃべってくれたし、サンライズの人たちも積極的で、アニメ業界に疎い雇われ司会者としては楽でした。
 とばしまくってたのは、WOWOWの海部正樹プロデューサー。海部さんならきっとウケるだろうと思ってたけど予想通り。あとで赤井さんが「電波業界の人はちがいますね」と言ってたけど、あの弁舌は父親譲りでしょう、たぶん。
 しかしやっぱり朝9時からの企画はつらかったな。パネルの途中でトイレに行きたくでしょうがなくなり、必死にがまんしていたのはひみつだ。司会じゃなきゃ一時中座も可能だったんだけどな。

 終了後、とりあえずトイレに行ってから(笑)、さいとうよしこが出場しているアニソンクイズ大会を覗きに行く。おりしも決勝が行われているところで、優勝は予想通り日下三蔵。この企画のためだけにさいとうが送り込んだ甲斐はあったというか。クイズの仕切りはすばらしかった模様。
 ロビーでしゃべってると、いしかわじゅんととり・みきが通りかかり、しばし雑談。いしかわさんがオレの上着をじっと見て一言。
「それさあ、ジーンズメイトで見たようなきがするんだけど」
 なぜそんなことを見破るいしかわじゅん。いしかわさんは吉祥寺のジーンズメイトで短パンを2枚買ったらしい。24時間営業の謎と深夜割り引きクーポンについて語っているとお昼になったので、星界企画打ち上げのために7階の展望レストランへ。いしかわさんは企画に去り、とりさんは食事をするっていうので、そのままいっしょにWOWOWが予約した席に着いてしまう。とりさんにはかえって迷惑だったかも。
 ……と思いつつ、毒カレー事件報道をめぐる最新情報のブリーフィングを受け、かわりに星雲賞の得票数と早川書房の最新人事動向の話を伝える(が、まさかその話が星雲賞受賞スピーチに生かされるとは知る由もないのだった。『SF大将』の装幀のせいで担当者が社長に怒られた話はほんとうですが、そのせいで会社を辞めるっていうのはたんなる冗談なので)。
 そのうち、アニソンクイズ流れの日下、さいとう、水玉、大高さん@セガなどなどがやってきて別テーブルに陣どり、ひとりでやってきた小林泰三氏をそちらへ誘導する。小林さんの該博なおたく知識は、あのへんの濃い人々をもうならせた模様。
 そういえば、ゆうべ小林さんは武田さんに拉致されて、ガイナックスの人々とバドガールの店に連れてかれちゃったんだそうで、
「なんかバドガールが歌を歌ってるんですよ。それがうるさくて。まわりはガイナックスの知らない人ばっかりなんで、小林です……と自己紹介したんだけど、全然聞こえない。しょうがないから、バドガール見ながらひたすらビール飲んでました」
 という悲劇の話を聞いているところへ当の武田さんが通りかかり、
「いやあ、バドガールがようけおって最高でしたな。そらもう、SFなんかよりバドガールのほうが全然ええでしょう」
 って、それはSF大会参加歴が二桁に達してからだと思うな。

 ちなみに、小林泰三、田中啓文、牧野修のマンガトリオに田中哲弥を加えた4人の会話(@怪獣酒場の片隅)を横で聞いていた赤井さんは、
「ボケとツッコミのコンビネーションが完璧で、あれだけの芸を持ってる人たちがどうして作家やってるんでしょうね」と語っていた。職業選択をまちがえたのかも。

 食事のあとは、森下一仁・久美沙織・塩澤快浩の創作講座を覗く。なんか前半はめちゃくちゃ面白かったらしい。せまい会議室は満員で、この時代にSFを書きたい人がこんなにいるのかと感動する。応募作すべてがアンソロジーにまとめられて事前に自費出版されているのもすばらしい。いやまあ、星群祭でやってる星群ノベルスの合評会みたいなもんだとも言えますが、星群祭には久美さんがいないからな。

 センチュリーホールのクロージング、インディーズ映像賞、星雲賞、ファンジン大賞、星雲賞、暗黒星雲賞は各所で既報の通り。吉村文庫の受賞作上映を見逃したのは返す返すも残念。「うどん対スパゲッティ」とか「三分間長崎観光」(タイトル違うかも。これって「大怪獣東京に現わる」の福井観光シーンに引用されてた気がしたんですが、気のせいでしょうか)、過去の名作は熱烈に愛しているのに。
 星雲賞に関してはいろいろ言いたいことがあるんだけど(とくに内外長編部門)、まあ言ってもしょうがないので。P2については、ノミネート時点で連合会議からクレームをつけてない以上、ノンフィクション部門(規約上の対象は出版物)の受賞もいたしかたない。SF大会の賞なんだから『塵も積もれば』が受賞すべきでしょう――というような常識はもはや通用しないし、P2のおかげでこの部門の票数がいちばん多かったという事実もある。
 しかしガチャピンはノンフィクションじゃないので、候補になるとしたら日本長編部門でしょう。

 やねこんの会場のグリーンプラザ白馬は、クヌルプに行ったとき、「最近、こういうのができたんですよ」とパンフレットを見せてもらった記憶がある。まわりはなんにもないので、「クルマで行く」もしくは「クルマで会場入りする知り合いを見つける」と、あちこち足がのばせて便利かも。しかし夏の白馬は行ったことがないのでどういう状況なのか謎ですが。ついでだからクヌルプに前泊しようかな。

 クロージング終了後は当然マウンテンですね。裏日本工業新聞がすでに写真入りでくわしく報じているので(しかし名古屋駅まで行ってたのにわざわざ戻ってくるか、ふつう)、つけくわえることはあまりない。マウンテン・ツアーはタクシー4台、総勢15人の大所帯。インストラクターは地元大学出身の林くんと水上かなみ嬢。参加者は、綾辻、小林、田中啓文、田中哲弥、牧野修、水鏡子、添野知生、蛸井潔(魚扁じゃなくて虫扁です>裏日本工業新聞さま)、小浜、三村、さいとう……など。
 会場からは近いと聞いてたのにタクシーで30分もかかったのは参りましたが、甘口抹茶小倉スパはうまかった。問題なのは量であって、味的にはいけます。名古屋と言えばやっぱり小倉だよね。復活ゴール記念。グランパスファンが大挙してやってきて、ここで小倉デーを祝うのである。ウソだけど。
 タクシーに乗ってるうちに気分が悪くなり死にそうな顔でマウンテンにたどりついた三村美衣は、煮える生クリームの芳香でさらに気分を悪くしていたが、それでもイタリアントマトパフェをちゃんと食べたんだからえらい。
 情けないのはほかのテーブルの人たちで、『殺人鬼』とか『人獣細工』とか書いてる人たちがあんなふつうのピラフしか注文しないのは許せん。作家なんだから、いちばんへんなものをデフォルトで頼むでしょう。イカスミかき氷とかゴーヤーかき氷とか。せめてイチゴスパとか。
 味的にもっとも強烈だったのは生クリームとトマトの衝撃的な出会いなやつ。プチトマト半分に切ったやつや、完熟トマトをザク切りにしたやつが平然と入っている。この凍ったトマトがうまいという三村美衣の見解に賛同した人はほかにいなかった模様。

 2時間ほど奮闘してから、タクシーを呼んだんだけど全然来ないので、地下鉄のいりなか駅まで歩き、伏見で降りてヒルトンホテルにもどる。


 きのう、うちの部屋に来てばったり倒れ、殴っても起きなかった蛸井くんは、朦朧状態で起きた帰り際、じぶんのカバンといっしょにオレのコンストラクトなデッキ3個が入った紙袋をがしっとつかんで持ち帰ろうとしたので、それは必死で阻止したんだけど、自分のデジカメとまちがえてオレのカメラを持ち帰っていたことが判明。
「ぼくのカメラありませんでしたか?」というので、新しい部屋に上がって、荷物の上にちょこんと置かれていたカメラをとってきてわたす。小浜夫妻は荷物を引き上げて今夜のうちに豪雨の東京に(というか、川越に)帰還。たいへんなことである。

 というわけで、フロント前で名古屋駅に行く人々と別れ、部屋に帰って爆睡。


【8月31日(月)】

 12時間寝て、ホテルの朝ごはんを食べ、荷物をクロークに預けて栄近辺を歩く。お昼は山本屋総本家で味噌煮込みうどん。松坂屋地下の天むすで天むす10個入りを買い、おもちゃ屋(というか、フィギュアとカードの店)を冷やかし、中野ブロードウェイ状態のパルコ西館を歩き、タクシーでホテルにもどってから、無料クーポン使ってプール&サウナ。
 宿泊客でも通常3000円って料金設定は、たんにスペースがせまいので、利用者が増えるのを避けようとしているとしか思えない。プールは貸し切り状態で快適でしたが、サービスはエグザス西葛西に毛の生えた程度かな。設備はエグザス以下かも。やっぱりホテルなんだからレストルームはほしいよな。

 夕食は、ホテルに入ってる《王朝》で中華のコース。ほんとはオーダーバイキング食べるつもりだったんだけど、休日・祝日のみだったらしい。お昼に利用すべきでしたね。でも、前菜、魚介、肉などの各アイテムを自分で選べる1万円のコースはけっこうお値打ちでした。

 9時前に名古屋駅にたどりつき、ひかりに乗ったら、静岡方面の豪雨のため、浜松でストップ。しかも床は斜めになってるぞ、みたいな。こりゃ天むす食べて夜明かしか、とかいってるうちに20分ほどで動きだし、東京駅到着は10分遅れ。タクシーでまっすぐ帰宅して、ガイナックスの佐藤取締役からわざわざ送ってもらった「エヴァと愉快な仲間たち」をはじめる。


【9月1日(火)】

 午後遅く起きて、ミストラルで日記を書き、夕方から出かけて新橋ヤマハホール。「ダーク・シティ」の試写だったんだけど、着いてみると柳下毅一郎がいてタニグチリウイチがいて、あとから堺三保と添野知生もやってきて、まるで名古屋のSF映画パネルが引っ越してきたような状況。
「ダーク・シティ」は、「こりゃまるで(以下12字抹消)」なシーンをはじめ、SFおたくウケすること確実の秀作。美術が「クロウ」を引きずりすぎてるのと、音楽があたりまえすぎて面白くないのが弱点ですが、今年のSF映画ではベストワン級でしょう。
 問題は冒頭のネタバレナレーション(キーファー・サザーランド)。どう考えてもあとからくっつけたしか思えない説明で、たぶんスクリーニングしたとき、「これじゃなにがなにやら」な声が多かったんじゃないかと推察されますが、これは『殺人摩天楼』のネタバレオビより罪が重いかも。これから見る人は、タイトル前の語りのあいだ耳をふさいで字幕を見ないのが正解。

 映画終了後は、近所のインド料理屋にぞろぞろ流れてたらふくカレーを食い、椿屋でお茶飲んで深夜帰宅。帰ってから「エヴァと愉快な仲間たち」のつづきを朝まで。


【9月2日(水)】

 エヴァ麻雀やりながらぼんやりCXの「めざましテレビ」見てたら、菊間アナがなんだかビルの窓から飛び降りようとしている。防災器具の実験らしい。「え、もう降りるの?」とかあわてた感じの菊間アナ、うしろのスタッフに押し出されるようにして窓の外へ。帯状のロープが胸の上、窓枠が胸の下に食い込む状態でへばりついている。そして……。
 落ちました。いやもうまっすぐストレートかつ一直線に、すとんと。ビルの5階から人が落ちるのを見たのははじめてなので素直に感動する。が、もちろんそういう趣旨ではなかったらしい。緩衝材の上に落下した菊間アナは身動きできない。あれ、けっこうかたそうだもんなあ。カメラはしばし、うめいている(らしい)菊間アナの倒れた姿を映しつづける。あわててスタジオに切り替えるディレクター。しかしスタジオでも当然なにが起きたのか把握しているわけではない。司会者コンビはただ茫然。思わず、「ロープが切れたんでしょうか」と言っちゃった小島アナとか。アメリカならたちまち裁判かも。
「菊間さん、だいじょうぶでしょうか」と言いながら、なにごともなかったかのようにお天気コーナーに移り、さらに次のコーナーを消化しようとするんだけど、気もそぞろな空気が濃厚に漂ってましたね。2度目のCM明けに、ようやく「先ほど転落した菊間さんですが、さいわい別状はなく、意識もはっきりしているようです。みなさまにはたいへんご心配をおかけしました」とか説明したけど、腰を骨折して全治三カ月の重傷だそうで、いやまったくそれ行けキクマもたいへんだ。

 4時ごろ起きて、5時からミストラルでアルクの《CAT》誌の取材。理系作家人気の秘密とか、そういう趣旨。瀬名秀明と森博嗣の話が中心で、原稿で書くんならよほど強引にまとめるしかなさそうな感じ。石黒達昌と藤田雅矢の話もしたのでさらにわけがわからない。

 7時半からは、両国のももんじゃとかいう店で『逆襲の〈野獣館〉』の打ち上げ。担当のT田くんが決めた場所で、
「野獣の打ち上げですから、野獣料理の店にしました」
「野獣ってなに?」
「だから野獣です」(きっぱり)
 としか聞いてない(笑) オレ、カンガルーとかわりと苦手なんですけど。トマトパフェのあとは野獣かあ。と思いながら店に着いてみると、表のウィンドウに猪の死体が逆さ吊りになっている(笑) 中に入ると壁から下がる鹿と狸の毛皮。そうですか。
 というわけで、料理は猪鍋(というかすき焼き)と鹿のタタキと鹿の唐揚げと狸汁。猪肉は、牛肉と違っていくら煮込んでもかたくならず、じつに淡泊な美味。いくらでも食えそうな感じでどんどん食べてしまう。鹿は鹿なので当然うまい。が、狸肉入りの赤だしは、仲居さんが「お肉は噛まないほうがよろしいと思います」と言っただけのことはある強烈な芳香でした。
 ちなみに打ち上げの出席者は、「光と影の誘惑」の装幀がやたら評判がよくて天狗になっている(うそ)岩郷重力@Wonder Works。と、扶桑社ミステリー文庫の金子編集長とT田くん、それに添野知生、山岸真、遅れてさいとうよしこ。
 金子さんは一時の不調がウソのような絶好調ぶりでしたね。

 デニーズで休憩してからタクシーで帰宅し、エヴァ麻雀のミサト編をクリアし、フリープレイでしばし遊んでから寝る。


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