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ニール・スティーヴンスンの本

2001.12.30更新

前回更新2001.11.3



The Big U


The Big U

Neal Stephenson著
305ページ
Harperperennial Library刊
2001年(Paperback)復刊
定価$13.50
ISBN0380816032


処女作待望の復刊。注文をしたばかりで、アメリカからの到着をまっているところです。
Amazonに、古本での購入希望を出しておいたところ、「復刊」したので、古本購入希望はキャンセルしますというメールが来たのでした。

(2001/4/某日記)

ようやく40ページ。2001/4月末には読み終えたいとおもっています。
(2001/4/18記)

と書いて、読んではいるのですが、短い時間の通勤電車中でしか読んでおらず、全然進みません
ようやく200ページはこえましたが。娯楽というより苦行。amazon.comの書評にも芳しからざるものの方が多いの理由はよーく分かります。「始めにコマンドラインありき」と同様、絶大なるファンにこそ相応しい本なのでしょう。そして、著者の意向で長らく絶版になっていた理由も、これまた、分かる気がします。

読みながら1968-69頃の日本の学生騒動の暗い思い出を連想した程度のことで、人様にお勧めする気にはなれません。
あの時も、本書の舞台ではありませんが、日本のメガバーシティで紛争がはじまったような記憶があります。

とはいえ、Snow Crashあるいは、Diamond Ageにつらなるロールプレイングゲームの片鱗は、十分本書の中に現れています。
途中で決してめげないという確信をもったファン専用小説とでも言えそうです。

(2001/6/5記)

Neal Stephenson関連リンク

Amazon.co.jpで購入することができます。


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Cobweb


Cobweb

Stephen Bury著
Bantam Books刊
1997年(Paperback)、ハードカバーは1996
定価$6.50
ISBN0-553-57331-4


Stephen Buryというのは、実はNeal Stephensonと、おじのJ. Frederic George、二人のペンネーム。二人で一緒に書いたミステリーです。
1991年、アメリカ連合軍との戦いに備えて?、イラク側が生物兵器を秘密裏に開発し、使おうとするのにたいして田舎町のシェリフ、クライド・バンクスが乳飲み子を抱えて一人大奮闘する話。(妻は従軍看護婦としてサウジアラビアに派遣中)Zodiacが面白かったと思われるむきにはお勧め。冒頭のアジズ外相とアメリカの高官との面談場面やら、所々にロシア語のかたことが出てきたりしますが、「時計仕掛けのオレンジ」ほどの頻度ではありません。
アメリカからのイラク向け農業援助費用の一部がどこかに消えてしまっているのがおかしいと気がついたCIAの女性分析担当者ベッツイーと、それまでの親イラクの立場上これを握りつぶそうとする有力者、CIAの官僚制度との戦いの話にも納得。お役所の目標が自己権力拡大にあるために、どうにも手に負えないのは日本もアメリカも同じなのかも。
今後は、ガイドラインのおかげで、戦争がらみの迫真のミステリーが日本でも書かれるようになるのでしょう。

ガスマスクの表紙は、日本の狂ったカルト集団騒ぎを連想させますが、アメリカによる再度のイラク細菌兵器工場空襲計画を新聞でみかけるこのごろ、この小説ますますリアルに思えてきます。

同じコンビで、大統領選挙や、アメリカ政治の裏を描いたミステリーが、Interfaceです。

(1998/1/31記)

3年前に読んだ本ですが、最近アメリカのテレビ報道を見ると、本書表紙の写真をつい思い出してしまいます。読了後行方不明なので、再度注文しようとしたのですが、とても不思議なことにout of printとなっています。
そもそも今注文したら、話題の生物兵器が一緒に届いてしまいそうで、注文をためらっているのですけれど。おぼろげな記憶では、まさに今話題の細菌の話がでてきたような気がします。
広大なために、通販が一大産業になっているアメリカでは、通販業は深刻な打撃を受けるのでしょう。amazon.comから本を買うのが不安とは困ったものです。

(2001/11/3)

Neal Stephenson関連リンク

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Cryptonomicon


Cryptonomicon

Neal Stephenson著
Avon Books
1999年、ハードカバー
定価$27.50
ISBN0-380-97346-4


この人のハードカバー版を購入したのは初めて。すごい大冊。Dimond AgeやSnow Crashなどのペーパーバックをみても、大変と思いませんでしたが、今回はびっくり。いつになったら読み終わるか想像がつきません。
第二次大戦当時の暗号解読の話と、現代のインターネット上での暗号とがからんで展開する話のようです。表紙の裏フラップには、少年が暗号の本を読んでいる写真がのっています。作者の暗号趣味を示しているのでしょうか。
Diamond AgeやSnow Crashと違って読者評はまちまちなようです。どちらに共感するかわかるのは、しばらく先の話。あるいは、永久に読み終えないかも。

(1999/5/30記)

と思ったものの、2000年になってようやく読み始めたら、とまりませんでした。ところが、この900ページを超える本で、話が終わるわけではないのです。まだ話はようやく始まったところ。過去のいきさつ説明で一冊が終わってしまったという感じ。amazon.comの著者インタビューによれば、この先何冊になるのか未定のようです。Trilogyといってしまうとそれで完結してしまう感じがするので、そうは言いたくないというのです。

amazon.com読者評の中には、「編集が甘いので、途中で死んだはずの人物が、巻末近くになって、唐突に現れたりする」というものがありました。けれども、これは考えるに、彼が再現するにいたったくだりは、別の巻で描かれるのではと想像します。とにかく、話はまだ途中なのですから。

日本語版Hot Wiredの大変詳しい書評Culture news from Wired Newsには、はじめてのサイファーバンク小説とあります。サイバーパンクの間違えではなく、暗号と、銀行の話ですから、確かにサイファーバンク小説、といえるのかも知れません。
二次大戦当時の話題の場面で、バターン、コレヒドール、ガダルカナルと、フィリピン付近の地名が頻出するので、大岡昇平の戦史ものを読みたくなってきます。山下奉文の隠し財宝伝説が背景にあるのでしょう。アラン・チューリング、プリッチャード・ウオーターハウス、ボビー・シャフトー、といった英米の登場人物に混じって、日本軍の兵士Goto Dengo(後藤伝吾?)も重要な登場人物の一人になっています。最後の方には、秋葉原やら、高層ビルの光景もでてきます。

暗号理論やら、OS, Perlなどの記述はチンぷんかんぷんでしたが、それで文脈がたどれないわけではありません。LinuxらしきFinuxや、NT, BeOSの話もでてきます。こうしたOSの変化進化は極端に早いので、たとえば6年経って日本語になったとしたら、膨大な訳注が必要になってしまうかもしれません。早く日本語の翻訳と、英語原書の続きとを読みたいものだと思います。

(2000/02/08記)

雑誌中央公論の2000年、4月号に、「ネットビジネス」米国の罠 という岸宣仁さんの論文があります。ビジネスモデル特許の話、暗号技術の重要性などが、わかりやすく説明されています。そういう視点でみると、この本は、まさに新しいビジネスモデルと、その基礎となる暗号技術の壮大なお話、ということのようです。SFファンのみならず、むしろ、賢明な経営陣の方々にこそ、急いでお読みいただきたいものです。

(2000/03/12追記)

文春新書で「ネット・ウオーズ」という本がでています。諜報作戦、あるいはEchelonの話やら、軍用ナノテクノロジーの話があって、あたかもスティーヴンスン本解説のように読めました。

(2000/06/07追記)

早川書房から、文庫本で翻訳が刊行されました。全四冊。

  1. クリプトノミコン 1 チューリング
  2. クリプトノミコン2
  3. クリプトノミコン3 アレトゥサ
  4. クリプトノミコン4 データヘブン

(2002/08/25追記)

Amazon.co.jpで、本を購入することができます。
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The Diamond Age or, A Yound Lady's Illustrated Primer


Diamond Age

Neal Stephenson著
Bantam Books刊
1995年
定価$5.99
ISBN0-553-57331-4

小説はほとんど読まないのですが、牛に引かれて善光寺参り、やむなく読んだものです。1996 San Francisco Seybold Seminarの閉会セッションで、スピーカーの一人 、Sunのジョン・ゲージ氏が紹介したためです。本、インターネット、あるいはインターラクティブということを考えるにあたって、本書を是非よめと壇上で勧めました。話を聞いて、これは読もうと早速買い求めたものの半年積ん読。最近ようやくよみおえました。さすがは1996 Hugo賞のSFだけあります。
Illustrated Primerというインターラクティブな本を中心に?、それによって育ってゆく家庭的に薄幸な少女Nellをめぐって話は進みます。童話、冒険談、のからみあったSFで、本の記述部分には多少辟易しながらも、手から離せなくなります。本についてというよりも、教育について、あるいは家庭というものについて考えさせられます。
本のカバーにはアメリカ有力新聞、雑誌の激賞があり、Amazon.comの該当部分にも、読者の絶賛が並んでいます。アメリカ製の主要ソフトについては、2byte対応つまり日本語化が、いつも時間がかかるのと同様、翻訳も時間がかかってしまうのでしょうか? あるいは日本のSFファンの趣向にはあわないのでしょうか?499ページもあるので、日本語で読めたら楽だっただろうに、と恨めしくなったというのが本音。
(1997.5.8記 )

バベル・プレスの「洋書ハンターズ」2フィクション編、97/12/12刊の91ページに、この本の紹介があるのに気がつきました。...ある程度の読解力を要するが、この作品の「体験」させてくれる未来は、その努力に十分見合うものだ。という山岸真さんの評価記事です。
(1998.1.27記 )

待つこと四年、とうとう翻訳がでました。年末年始に最高の読み物?

amazon.co.jpでも購入できます。

(2001.12.30記)

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The Snow Crash


Snow Crash

Neal Stephenson著
Bantam Books刊
ハードカバー初版は1992年
定価$5.99
ISBN0-553-56261-4

The Diamond Ageの著者の本なので、同時に購入。
黒人を父に、韓国系日本人?を母にもつ、マフィア経営ピザチェーンの配達人ヒロと、偶然彼の配達を助けたクーリエ(ローラーコースターによる速配便)の少女Y.T.が、近未来の現実社会とバーチャル社会で、強力な団体を相手に戦いを繰り広げます。漫画風というかアニメ風というか、映画のトロンを思い出しました。いつか映画で見たいもの。
日本のソフト生産を痛烈に皮肉ったりすると思えば、オーウェルの1984を思わせる役所の滑稽なトイレットペーパ利用規則(清水義範風?)、テレコミュニケーションの潮流、神話、言語の起源、宗教と薬物にいたるまでが、うまく編みこまれていて飽きさせません。この著者、雑誌Wiredに、KDDの海底ケーブル敷設等について秀逸な記事、(原文はMother Earth, Mother Board)を書いているのもうなずけます。Diamond Ageより、ずっと読みやすく思えました。エージェント、ミュータント犬などが脇役として出てきます。原子力機関銃というすごいものも出てきますが、これに対抗するのは、敵のガラスナイフ。
たまたまロシア旅行中に読んでいたので、あのオウムも連想したり。(富士山麓に飛ばないヘリコプターがありましたが、本書の中では、戦闘シーンでロシア軍用ヘリコプターが活躍します。)ロシア正教の重要な宗教行事パスハ(=イースター)の最中に読んでいたので、ロシア正教まででてきたのには驚きました。とはいえ、そもそも主人公が一緒に暮らしている友人の名前がヴィタリー・チェルノブィリ。彼がメルトダウンの歌を歌ったりします。
おりしも4月26日はチェルノブィリ爆発記念日。ロシアのテレビは、当時の映像や、生き残った消防士の集いなどが報道していました。この本の前にかいたのがZodiacという本で、SFというより現代の環境問題がテーマというのは偶然ではないようです。470ページもありますが苦痛にはならないと思います。

(1997.5.8記 )

Snow Crash Jacket日本語訳スノウクラッシュが出ました!
日暮雅通訳
アスキー出版局刊 ASCII DIRECT on the Webで購入可
1998.10.12初版(とあります。)
ISBN4-7561-2003-2
2400円
訳者あとがきによれば、Diamond Ageの日本語訳もそう遠くない時期に読めそうで嬉しいことです。

(1998.10.7記 )

ハヤカワ文庫で、スノウ・クラッシュ  二巻本が刊行されています。

(2001.4.18記 )

この方面には丸で疎いので、SFオンラインに大森望さんによる書評があるのにようやく気がつきました。

(2000.02.08記 )

今井達也さんのTOMMYおじさんのSF綴れ織り『スノウ・クラッシュ:ニール・スティーブンスン』記事があります。

(2000.3.21記 )

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In the Beginning was the Command Line


In the Beginning was the Command Line

Neal Stephenson著
Avon Books刊
1999年9月(Paperback)
定価$10.00
151ページ
ISBN0380815931


Avon booksから刊行されていますが、 Cryptonomiconから、全文の圧縮ファイルが入手できます。

OS論議は全く分からないので、原書は購入したものの涙を飲んでスキップ。とはいえ彼らしい論議も展開されているので、無視もできません。
知らなかったのですが、『週刊アスキー』に(2000年)翻訳が連載されていたようです。
「太初にコマンド・ラインありき」伊東奈美子・坂和敏/訳 最後は2000年5月24日号?
単行本にはならないのでしょうか。

(2001/3/28記)

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Interface


Cobweb

Stephen Bury著
Bantam Books刊
1995年6月(Paperback)、ハードカバーは1994年5月
定価$6.50
632ページ
ISBN0-553-57240-7


これもCobwebと同じ、Stephen Buryつまり、Neal Stephensonと、おじのJ. Frederic George、二人で書いたミステリー。

大統領候補の知事コザーノが、実は頭にチップを埋め込まれた巨大な組織の操り人形、という設定。知事旧知のメル、知事の娘の神経科医が、脳外科手術研究センター、バイオチップ、メディアをあやつるネットワークと戦います。
大統領選挙キャンペーンなるもので、どれほどイメージ操作が行われているかを想像するのには良いでしょうが、Neal StephensonによるDiamond Ageのようなものを期待すると、あてはずれになるかも。同じ共作でも、Cobwebの方が読ませます。amazon.comに、読者の酷評がありました。「Neal Stephensonが協力した小説とは思われない、協力した部分があるとすれば、それはページ番号だ。つまらない本がいつおわるかと、ページ番号ばかり読んでいた。」というのですが、一部うなずけるような気もします。
選挙民、テレビ番組のレベルの低さの辛辣な指摘、あるいは、HDTVになると、その画面にあう政治家が登場するだろうという話など、小説であるのをわすれて読んでしまいます。
大統領ものということでいえば、今の時点では、映画にもなったAmerican Heroが、時代の先取りということになるのかもしれません。

(1998/2/11記)

カリフォルニア知事就任記者会見で、この本を思い出しました。物理的な「手術」など施さずとも、テレビ写りが良いだけで、はじめからロボットそのもの、という政治家が登場するのを、この本は予告していたのでしょうか?東京も大阪も?子は親の背中を見て育ち、属国は宗主国の背中をみて育つのでしょう。

(2003/11/16記)

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Zodiac


Zodiac

Neal Stephenson著
Bantam Books刊
ハードカバー初版は1988年
定価$5.99
ISBN0-553-56261-4


面白くて、あっけなく読みおえてしまいました。The Diamond Ageの主人公ヒロを思わせるS.T.が、公害源の大企業と決死の戦いを繰り広げます。素早い展開で、思わず先に先にと読み進まされます。アメリカには、レーチェル・カーソンの『沈黙の春』と合わせて読むと良いという読者もいるようです。それはその通りですが、日本の読者として連想したのは、『公害摘発最前線』、『四日市・死の海と闘う』 を書いた今は亡き田尻宗昭さん。SFというより、カバーにもあるように環境問題をめぐるスリラー。読後、吉田文和『ハイテク汚染』(以上の岩波新書は絶版のようでしたが、1998/6現在『ハイテク汚染』はアンコール復刊されています。また、この話題に直結する『ゴミと化学物質』が98/6刊行されています) を取り出してみた所、最初の刊行1988年は、まさにデュカキスとブッシュの大統領選挙論戦で、ボストン湾の水質汚染がとりあげられた年だったようです。 ボストンといえば、世界史で習う、ボストン茶会事件という単語が裏表紙にあります。1772年に、イギリスが東インド会社に北米での茶の独占販売権を与えたのに怒った反対派が、モホーク族に変装して舟を急襲、茶箱を港に投棄した事件です。あちらでは、大企業が悪さをすると、たれながし大本営報道をしないマスコミがあって、やむにやまれぬ実力行使もきちっとレポートして巨悪を暴いてくれる、といううらやましい小説。
67ページに『共有地の悲劇』が出ててくるのは、話のはこび上当然のこととはいえびっくり。 PCB環境汚染が主題なので、ダイオキシン御嵩町豊島、日の出町、諫早干拓、動燃事故など、色々と考えずにはいられません。
彼の他の二冊同様、お勧めできる本です。
(1998.6.22追記 )

ダイオキシン、PCBの深刻な害については、
ゴア副大統領が序文を寄せているOur Stolen Future
長尾力訳『奪われし未来』翔泳社
ISBN4-88135-513-9
1800円を御勧めします。
Zodiacにでてくる変圧器とPCBについても詳しい記述があります。
(97.10.22追記)

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