一般的な住宅の価格とは


まず、ログハウスに限らず、家というものは、家電製品や自動車などの完成された工業製品を買うわけではありませんし、条件の違う土地に不動産として建てるわけですから、プレハブ住宅や建て売り住宅も含めて一軒として同じものはないと考えた方がよいでしょう。ですから、かかる予算も千差万別です。と言っても、一軒の一般的な住宅が100万円で作れるわけはありませんし、1億円かかるはずもありません。そこで、およその目安として坪単価というものがあります。

これは床面積一坪(3.3平米)あたりの価格です。一般的な木造住宅は坪あたり、50万円〜70万円位のようです。この頃の一般住宅の平均延べ床面積は約40坪(約132平米)ですから、総額2000万〜2800万円というところでしょう。私たちの作っているログハウスもおよそこの範囲に入っていると思います。この坪単価というのも、およその目安ですし、延べ床面積が大きくなればなるほど坪単価は安くなります。

例えばトイレ、バスルーム、キッチン、玄関回りなどは金額がかかる部分です。小さな住宅でも一通りは必要なものですし、倍の大きさの住宅だからといって倍必要だとは言えないでしょう(二世帯住宅は除いて)。また、リビングや一部屋の大きさが広くなったからといって、一坪あたり、50〜70万円も高くなるわけではありません。ですから、やや大きめな住宅のほうが、坪単価は安くなるのが普通です。

つぎに同じ床面積で坪50万円の住宅と坪60万円の住宅のどちらがお買い得かという問題です。これは一概にどちらともいえないのです。設計、仕様、強度、耐久年数、ランニングコスト、メンテナンス費用、その他様々な要素が関係します。ですから、ある程度詳しい価格は設計、仕様、立地条件が決まらないと積算しようがないのです。
例えば、基礎ですと、強固な地盤と軟弱な地盤では設計が全く違います。凍結深度、基礎高さ、基礎の厚さ、断熱性、防水工事、などによって、同じ建築面積の家を載せるのに、独立基礎の60万〜300万円位の幅はでてくると思います。

窓まわりなども、アルミ製シングルガラスサッシと木製ペアガラスサッシでは三倍以上の価格差があります。ドアも木製無垢ドアと合板のフラッシュドアでは三倍以上も違います。住宅一棟分ですと、60万〜200万円以上の差になります。

床板もクッションフロアーや合板と無垢板での価格差もあります。延べ床面積40坪ですと、単純に比較して、30万〜80万円くらいの違いです。

壁、天井なども、石膏ボードにビニールクロス、石膏ボードに左官、無垢板貼りなど仕上げによって全く価格が違います。石膏ボード(910*1820、12ミリ厚)一枚300円程度です。二枚一坪ですから、坪あたり600円というところです。ビニールクロスが坪1000円としても、壁の材料費は坪1600円というところでしょう。これが無垢板ですと、パイン系の安いものでも、坪5000円程度はします。これに、塗料の値段もはいってきます。ですから、ここでも三倍以上の価格差があります。天井、壁の面積は床面積の三倍以上のことが多いので(部屋数など設計によって違う)、120坪位になります。ここでも、20万〜60万円位の幅があります。
あと、ユニットバスの価格も80万〜200万円
システムキッチンも80万〜300万円位まで、上をみればきりがないくらいあります。
ざっと、基礎工事、内装の原材料価格(工事費別)、設備機器の価格など大まかに挙げて見ましたが、これを安いほうだけですと、

基礎60+建具60+床30+壁、天井20+バス80+キッチン80=330万円

高い方になると、基礎300+建具200+床80+壁、天井60+バス200+キッチン300=1,140万円となります。

建築の構造物、外装、屋根、電気、断熱などの工事が同じだとしても、立地条件による基礎工事、内装等の仕様などだけでも、800万円くらいの差がでています。これですと延べ床面積40坪ですと、坪あたり20万円の差になります。工事全体ですと、坪あたり30万円位の差は使う材料、設計、仕様によってすぐ変わります。ですから、坪あたりの単価は標準的な住宅を建てる場合の一応の目安でしかないのです。そして、標準的な住宅というのは、その施工業者によって違うわけですから、ほとんど目安にもならないというのが実情です。坪単価50万円というのは、延べ床面積40坪の住宅ならば、およそ2000万円で、いちおう住める家ができるという話しで、それが満足できるものかどうかは保障の限りではないのです。


納得のいく価格で建てるためには

私たちは設計、仕様が決まれば、原材料の原価や取り引き業者の見積り等で、その住宅の価格を積算します。当然そこに利益も含まれます(利益がなければ責任を取れませんから)。それでは、セルフビルド、あるいは施主自らが元受けになり、各下受け業者に仕事を発注して自分の家を完成させるという直営工事ならば安く工事ができるはずだという考え方もあります。

例えば私の自宅は自分で設計し、自分で積算し、自分で工事を管理し、基礎工事、丸太工事、内装工事、建具製作、家具の製作等を自分で行ないました。ほとんどセルフビルドといえるでしょう。ほぼ一年近くを自宅の工事に費やしましたが、納得のいく価格で建てることができました。(実はまだ未完成の部分もありますし、工事に対する責任は自分でとるしかありません)

ただ、まったく建築工事の心得がない一般の方が、仕事を犠牲にして何年も費やすのは難しいと思いますし、直営工事(施主自らが各下受け業者にそれぞれの工事を分離発注して工事すること)をしても、総工費は安くなるとは限りません。もし、仮に直営工事をしても、各下受け業者(例えば、基礎工事の業者、設備工事の業者、木工事の業者、電気工事の業者などなど)の請求は、私たち元受け業者が発注した場合より割高になることが多いようです。

これは、当然といえば当然で、下受け業者にとって、その施主からの発注は殆どは一度限りですから、請求が高くても安くても次ぎの仕事が貰えることはないのです。これが元受け業者からの発注ですと、請求が高ければ次ぎの仕事がもらえません。また、請求は直接、施主にいくわけですから、お金を払って貰うまでのリスクを負わなければなりません。これが元受け業者ですと長い付き合いがあり、信用にかかわりますから、リスクは少ないのです。さらに、下受け業者の仕事は他の業者の仕事に絡みます。例えば電気工事の仕事は木工事に絡みますが、木工事の業者は電気工事の仕事が進もうと進むまいと関係ないのです。

つまり分離発注の場合、極論すれば、各々の業者は自分の仕事だけ終われば良いのです。ですから、お互いに工事がうまくいかずに手間が余分にかかったり、責任が曖昧になったりするので、請求が高くなります。また、自分の工事のミスは全て自分で負うことになりますからその分も考えなければなりません。ところが、元受け業者がいると、各業者の調整や、小さなミスなどは殆どカバーしますから、その点安心して仕事ができるのです。

私たちの受けた工事でも、施主様の都合で、基礎工事、設備工事、屋根工事など、分離して発注される場合もありましたが、内緒で価格を聞いてみると、2割〜3割以上も高い請求になっている場合が殆どでした。また、施主様自らがシステムキッチンやユニットバス、ストーブ、照明器具等を買い付けて支給する場合がありますが、それもやはり割高になっているようです。建築資材等も一般価格と業者価格という二つの価格があります。これも理由のないわけではありません。やはり、信用、そして取り引き量の多さにおいて業者間の方が、メリットが多いので個人相手の価格よりも業者間の価格のほうが安く設定されているのです。

ですから、一般的には、納得のいく価格で家を建てるためには、信用のできる元受け業者(工務店でも建築家でも設計事務所でも)を見つけることが肝心です。ただし、自分の家を自分で建てることを楽しみとし、2〜3年間をその工事に当てることができる方、そして、完成度の高さをそう求めなくても良い方はセルフビルドに挑戦してみてください。

では、どうすれば信用できる業者を見つけられるでしょうか?そのためには、より多くの家を見て回ること。街で気にいった家があれば、ちょっとずうずうしい気もしますが、そこの家の人に話しを聞いてみること。わざわざ玄関からブザーを押してというのも難しいかもしれませんが、家の人が庭にでも出ていれば、挨拶がわりに、家を褒めて、建てた工務店などを教えてもらうのも良い方法かも。その家の人が満足していれば喜んで施工業者を教えてくれると思います。

私自身はこの方法をとったことはありませんが、私たちが建てた施主様の半分近くがよく話しを聞いて見ると、前に建てた家の人の紹介のようです。もっとも私たちのログハウスという業界はちょっと特殊ですので、この比率が高いのでしょう。

また、住宅展示場などのモデルハウスを見て回るのも一つの手段でしょう。しかし、モデルハウスには、部屋を広く見せるためにサイズの小さなモデルハウス用のベッドが置かれていたりするようですし、デザインが一番魅力的にみえるような住宅の大きさになっていたり、敷地や周囲の環境にも注意が払われているようです。ですから、実際に自分の敷地に建てたときにはサイズが変わってしまい雰囲気が違うこともあるようです。

モデルハウスは基本的に見せるためのもので、実際の生活とはかけ離れた部分もあるようです。参考にはなるでしょうが、そのイメージにあまりひきずられると、自分に合った暮らしを見失うことにもなりかねません。その点、街で見かけた家の人に聞く場合はそこで暮らしている本人に直接生の意見を聞けるというメリットがあります。ただ、ここでちょっと注意したいのは、自分で購入した、あるいは自分で建てて自分の財産となった家をそんなに悪くいう人も少ないでしょうから、褒め言葉は少し割り引いて聞くほうが良いかもしれません。

知人友人に住宅関係の仕事(下受け業者でよい)の方がいれば、それとなく、その元受け業者の評判を聞いてみます。下受け業者は元受け業者の内情を知っている場合があります。施主とトラブルをよく起こしているとか、その結果金払いが悪いとか、資材業者の取り引き停止を食らっているとか、下受け業者がころころ変わっているとかという話しがでるようなら、その元受け業者は信用できないでしょう。

あとは、その業者の実績を調べて見ます。ある程度の棟数をこなしていてれば、ノウハウの蓄積があると考えてもいいでしょう。また、その業者の建てた家をできるだけ多く紹介して貰い、直接その家の人に会って話しを聞いてみます。あまり、紹介してくれないようならば信用できない業者でしょう。言い替えれば、その業者は自分の家に満足して、褒めてくれるような施主様を持っていないということですから。私の知人に、「あの家を建てた、この家も建てた」というだけでその施主様に会わせて貰えなかった人がいましたが、急がされて契約してしまい、トラブル続きで完成まで苦労した人がいました。幸い、ほとんど完成までこぎ着けましたが、それまでの心配は大変なもののようでした。

ある程度の業者の選択ができたら、基本的な設計を考え、その見積りをとってみます。できれば複数の業者に見積もって貰いましょう。その際には相見積もりをとっていることを業者に知らせて置くのが一応の礼儀です。相見積もりを取ることは、失礼なことでもなんでもありません。業者にとっても、施主様が相見積もりを取るということは、真剣に家を建てることを考えている証拠ですから、歓迎すべきことなのです。相見積もりを嫌がる業者などは信用できないでしょう。

また、相見積もりは設計や仕様をできるだけ詳しく書いて貰います。設計や仕様が詳しく分からなければ比較のしようがありません。

また、多くの業者、多くの工法で見積もりを沢山とればとるほど、家の価格というものの相場が見えてきます。そうすれば、家というものがある程度の金額がかかるものだということが理解できます。あまりに安い価格では安いなりのものしかできませんし、高ければ良いものができるとも限りません。いろいろな見積もりを取るなかで、自分にとっても、業者にとっても適正だと思われる価格がだんだん見えてくるはずです。

私たちも結果的には相見積もりのようなものを出したことがあります。すると、相手の業者はいきなり200万円以上見積もりを下げ、こちらの価格に合わせたそうです。しかし、そんな業者は信用できません。つまり、下げる前の見積もりはいったいなんだったのかということになります。また、私たちの見積もりは200万円下げることはできません。おそらく200万円下げるなら、仕事を受けないでしょう。200万円下げれば責任のある家は建てられないからです。住宅はバッタ屋の商品のように、定価15000円のところを特別価格980円でご奉仕などというわけにはいかないものなのです。


 満足できる家を建てるためには

セルフビルドで完成させることができれば、それは何物にも変え難い満足感を味わえると思いますが、元受け業者に依頼した場合、満足できる家を建てるためには、どのように考えればいいのでしょうか。

私たち業者としてもお願いしたいのは、第一に、家を建てるのは自分だという意識を持って頂きたいのです。家を建て、そこに住むのは施主様自身なのです。どんなに立派な家を建てても、そこに住む人が不満だらけではいい家とはいえません。もちろん100%満足できることは難しいでしょうが90%以上?は満足してもらいたいものです。良い家を建てるためにはそれなりの努力が必要なのです。家に限らず、物を作るときにまず必要になることは、自分がどんなものを求めているかをできるだけはっきりイメージすることです。家を建てる場合は自分がどんな暮らしをしたいかを良く考え、イメージします。また、そのイメージは現在だけではなく、子供が成長し、家族構成が変わっていき、歳老いていくという、時間の流れにも対応できるイメージを作ることが大事です(もっとも、家を使い捨てできるような財力があれば別ですが)。

つぎに、家に住むことに関しては、自分がプロ(別にお金をもらうわけではありませんが)だと思うべきです。建築家や設計士は他人の家を設計しますが、そこで暮らすわけではありません。ですから最終的な決定権は施主様が持っているわけです。

私たち設計士は施主様の希望をできるだけかなえるような形を提示することしかできません。かと言ってなんでもいいなりになるわけでもありません。この場合はこういうメリットがあるかわり、こんなデメリットができる。こういう希望では構造的に無理がある。この希望は予算的に無理であるが、このようにすれば希望に添える等、経験と知識を動員して、施主様の暮らしのイメージを形にしていくわけです。施主様がこの段階に労力を費やせば費やすほど満足のいく家ができます。また、ここは決して他人任せにしてはいけないところです。

丸太屋のお客様でも、何人もの方に、私の自宅(ログハウス)にきていただきました。メモとスケールを持って図面の寸法と実際の室内の感覚を比べていただき、中には御自分で小さな模型を作った方もいらっしゃいました。「なかなか本物の家ができないね」と笑っていましたが、私は「作り始めたら早いものです。それより、この段階で具合の悪そうな所をみつけておけば直すのは簡単です。本物が完成してから後悔するよりずっといいですよ」と言っておきました。現在、この方には本当に満足したログに住んでいただいてるようです。この施主様が満足できたのは、彼自身が自分の住む家を作る努力をしたからです。

 


一般的なログハウスの価格とは

特殊な建築物と考えられがちなログハウスといえども、主要構造を除けば他の工法の住宅と共通している部分が殆どです。ですから、価格も内外装や設備などの仕様によってかなりの幅がでるのは当然です。しかしここでは、ログハウスの特殊性によって、高価になりがちな理由をあげてみたいと思います。

基礎
上部構造物の重量がかなり大きくなり、ログハウス自体に収納スペースが設計しにくいこともあって、地下部分を収納として使用することを考えると、耐圧盤(べた基礎)になることが多いのです。また、基礎の厚みも180ミリ以上で高さも1800ミリ程度になります。

耐圧盤のダブル配筋

 

ログシェル(丸太壁)

ハンドカットログはとにかく木材(丸太)の立米数が多く、原木の費用だけでも250万円程度かかってしまいます(国産杉丸太、末口22〜28センチ程度)。また、丸太の加工は全て手作業になるので、事業規模を大きくして機械化し大量生産することによるコストダウンが望めないのです。マシンカットログを除いて、大規模な会社がない理由はここにあります。大手企業が参入しないのは大量生産による効率化ができないので、利益があげにくいからだと思います。

国産杉の木口

 

内装
ログハウスを選択するお客様は基本的に自然志向が強いようで、床、壁、天井など内装材に無垢板を希望する方が多く、また、窓やドアなどの建具類も木製ペアガラスサッシや無垢板のドアなど最も高価なものが選択されますので、どうしても価格的に高くなりがちです。階段なども、既成品を使うことは少なく、丸太や無垢の厚板を使うので、高価になります。さらに、一階部分の開口部、間仕切り壁などはセトリングに対応しなければならないために、仕事が複雑になります。

無垢エンジュの7寸の上がり框

設備
一般的な設備は普通の住宅と変わりませんが、洗面台やカウンターなど無垢の厚板(45ミリ〜60ミリ)で作り付ける場合が多いと思います。また、薪ストーブをいれる方も多く、炉台、ステンレス断熱二重煙突も含めると70万円程度の工事費がかかります。

コーナーに置かれた薪ストーブ 機種はRegencyのラージタイプ

 

屋根
丸太部分を風雨から保護するために、屋根を大きくします。ベランダがある場合、けらばの出は1500〜1800ミリ、軒の出も900〜1200ミリ位になります。これは一般住宅の倍以上の面積になります。ただし、二階は小屋裏部屋の形になりますので、二階の外壁が少ないのはコスト的に有利です。
ざっと考えても、ログハウスは一般的な住宅より高価になりやすいことは御理解いただけたと思います。