■私の読書の時間
前屋毅著
小学館文庫 小学館
ISBN4-09-416193-7
今年のインターネット関連ニュースの中で、一般の新聞や雑誌といったメディアにも取り上げられた事件のレポートである。東芝を「謝罪させた男」、東芝という「企業側」双方の証言を掲載し、双方の認識のずれを明らかにする。
私は、この事件がニュースになっている時点で、「謝罪させた男」のホームページも東芝の広報も全く見ていなくて、新聞記事などから中村正三郎氏対マイクロソフト事件を漠然と思い起こしていた。本質的には、個人と組織の問題であると思ってしまうのだが、「謝罪させた男」の性急さも少々どうかと思うし、東芝の組織であること悪い面ばかりが目立つ対応もうんざりさせられる。でも、組織に属していてば、その場の対応としては正しそうでも、事の流れや伝言ゲームのなかでおかしな対応になっていることはままあることのように思うのだ。
●ヨウスケの奇妙な世界18 双子の恋<1999.12.14>
高橋葉介著
朝日ソノラマ
ISBN4-257-72038-7
人喰い種族の女の油断を描いた『人喰い−マン・イーター−』。ふられた女の子の奇妙な逆襲を描く『肉蟲』。好きになった人の意のままにあることを望む女の子を描く『意のままに』。為すことが何もかも同じで困ってしまう『双子の恋』など、ホラー系のマンガ誌に掲載されたものがまとめられたもの。奇妙な世界ではあるんだが、私の知っている初期の頃ほど奇妙な世界ではなく、日常に近づいて描かれているような気がする。それぞれの作品に対する作者の後書きが掲載されている。
●ヨウスケの奇妙な世界17 ここに愛の手を<1999.11.22>
高橋葉介著
朝日ソノラマ
ISBN4-257-72037-9
募金にまつわる奇妙な話『ここに愛の手を』。ちょっと、永井豪のデビルマン的な感じもする『妖獣の女王』。航海にまつわるちょっとありそうな?話『海妖』。ショートショートなマンガ数編。ちょっとウルトラQを思い出させる『テレパス』。高橋葉介にしては珍しく河童が人間的かなと思わせる『河童』。他数編。新旧の作品が割と入り交じった構成。『ここに愛の手を』など、作成年だけで初出掲載誌が書かれていないものが何編あるが、初公開なんだろうか?
●特選 星降る夜のパソコン情話〜Linux狂騒曲〜<1999.11.12>
中村正三郎著
ビレッジセンター出版局
ISBN4-89436-131-0
『Linux Japan』誌等に掲載されたLinux関係のコラムを集めたもの。読めば、ああ、そういえばそんなニュースがあったなぁとLinuxが徐々にメジャーになっていく過程が思い起こされる。ほとんど(全く?)雑誌掲載当時の内容のままなのが、当時(といってもそう昔のことでもないのだが)の状況を思い起こさせる。著者が代表を務めるRing Server Projectについても書かれているので、そちらに興味がある人もどうぞ。
鷲田小彌太著
東洋経済新報社
ISBN4-492-04123-0
哲学の研究者であり、大学教授でもある著者の研究的生活の勧め。研究的生活の方法論について書かれていて、当然、著者の研究分野である哲学関係からの内容も含まれているが、汎用的な研究生活の勧めを主眼に一般論を目指して書かれているので、書斎の話やパソコン利用など、具体的な内容も含まれるが、知的生活を送るための精神を説くといった感のほうがやや強く、それは研究的生活を目指す人の心の支えや共感になると思う。ただし、野口悠紀雄の著書のようなハウ・ツー的内容を期待し過ぎるとと少しそこが浅く感じられて物足りないかもしれない。
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