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こないだ買いました(爆)

「えっと、クリームパン1個と、ウィンナーロールが…
ええと、2個と、――あうっ!」
 修羅の群れから、弾かれて飛び出てきたのは、マル
チだった。
 だが、マルチはくじけず、決意も新たに覚悟を決め
た表情になると、再び人混みに飛び込んだ。

「――うっ…ウィンナーロールが2個と、ジャムパン
1個と、PC−FX1個!」
「秋葉にでも行っとくれ!」
「えっ!? あっ、あれっ?」

 秋葉でもないぞ、それは……。


おばちゃんの逆襲

「――うっ…ウィンナーロールが2個と、ジャムパン
1個と、プレステ1個!」
「おもちゃ屋さんへ行っとくれ!」
「えっ!? あっ、あれっ?」
 購買部のオバちゃんに冷たくあしらわれるマルチ。
「そんなメモ読み上げてもらってもしょうがないよ!
ここでは、食べた者勝ちっていう、ルールがあるんだ
からね!」
「…はっ、はいっ、わかりましたっ!」

 マルチはくじけず、決意も新たに覚悟を決めた表情
になると、再び人混みに飛び込み、口いっぱいにパン
を頬ぼった。

 って、おばちゃん、そういう嘘を…。


律儀者マルチ

「そんな大袈裟な。気にすんなよ。それより、今から
教室に戻るんだろ? ひとりじゃ持ちきれないだろう
から、オレも運んでやるよ」
「そ、そんな、悪いです!」
「いいっていいって、構わねーよ。ここまで来たら、
最後まで面倒見させろよ」
「すみません…」
「じゃあ、行こうぜ」

「あっ!」
「あん? なんだ?」
「あの、じつは…」
「じつは?」
「まだ、プレステを買わなくちゃいけないんです」
「な、なにぃ〜〜〜〜っ」

 ってそれは買わなくていいんだってば!


通常の4倍(当社比)

 一年の教室前まで来たとき、マルチを見掛けた。
 今日もまた、両手両足にモップを持って掃除してい
る。
 相変わらず一生懸命やってんなあ。でも何もそこま
でしなくても…。


小学生並〜

 誰もいない一年の教室に隠れたオレは、声をひそめ
て笑った。
 ふふふふふ、マルチのヤツ、今ごろは多分、きょろ
きょろとまわりを見渡して、必死にオレを捜している
ことだろう。
 もう少ししたら、きっと、この教室も捜しに来るに
違いない。
 そしたらまた『わっ』と驚かしてやるか。
「……」
 いや、また気絶させちまったら可哀想だしな。
 後ろから、浣腸するくらいにしとくか。

 という発想しているオレって、いったい…。
 ――バカ?


ことわざある処に…

 マルチは泣きながら、たたた…っと、小走りに駆け
寄ってきた。
「――どごにいだんですかぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜?
捜じまじたよぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

「…な、なんだ、マルチ。…ずっと捜してたのかよ?
オレはまた、てっきり…」
「――ううっ、声はすれども姿は見えず…」

「Oh! それ知ってます。正しくは『声はすれども
姿は見えず、ホンにあなたは屁のような』っていいま
す。ニッポンのことわざ、奥が深いです」

 唐突だな、レミィ…。


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