一年の廊下前で、雑巾を両足で踏んで掃除してる
女生徒を見掛けた。
あの大きな耳の飾り。
見間違うはずがない、メイドロボのマルチだ。
一生懸命、床をズリズリとすって歩いている。
横着は止めなさい!
一年の廊下前で、両手にモップを持って掃除してる
女生徒を見掛けた。
あの大きな耳のあかり。…いや『飾り』。
「よう、マルチ」
「あっ!」
オレの顔を見ると、マルチはぱっと顔をほころばせ
て、小走りに駆け寄ってきた。
「いま、お帰りですか?」
にっこりと微笑んで言う。
「まあな。お前は、まだ掃除がお終わんねーのか?」
「はい」
「ご苦労さん。ところで、その他のヤツらはどうした
んだ? 見当たらねーけど…」
「えびせん」
「え?」
「いえ、その〜、『いません』と『えびせん』を掛け
た軽いギャグなんですけど〜」
「…」
こんな広いとこの掃除なんて、ひとりでやってたら
日が暮れちまうぜ。
いっちょ、手伝ってやっか。
「おう、マルチ、オレにもチップよこしな」
オレは手を差し出して言った。
「え〜!? チップがいるんですかぁ〜?」
…って、掃除を手伝うのにチップを強要してどうす
る!?
こんな広いとこの掃除なんて、ひとりでやってたら
日が暮れちまうぜ。
いっちょ、手伝ってやっか。
「おう、マルチ、オレにもモップよこしな」
オレは手を差し出して言った。
「はい?」
「オレも一緒にやってやるよ」
「…一緒にって、お掃除をですか?」
「ああ。ふたりでやりゃ、早く終わんだろ?」
「あ、はいっ、そうですね。じゃあ、ふたりで一緒に
やりましょう」
オレはマルチからコップを受け取って、バケツの水
を汲んだ。
「え? その水…。飲むんですか〜?」
マルチはイヤそうな顔をして、そう呟いた。
って、コップを渡すんじゃない!!
「ほらっ、マルチ、お前も気合いを入れろ! 速攻で
片を付けるぜ!」
「はっ、はい」
「よしっ、このオレについてこぉーい!」
「わかりましたっ!」
「うぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」(オレ)
「うぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」(マルチ)
「やぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」(オレ)
「やぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」(マルチ)
「たぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」(オレ)
「たぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」(マルチ)
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「ぜーはーぜーはー…」
「ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ…」
「…ど、どうだ、マルチ?」
「…ネタが古すぎて、わかりません〜」
「ぜーはーぜーはー…」
「ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ…」
「…ネ、ネタが切れたんだよ」
オレはヒザに両手をついて、しばらくそのまま、ネ
タが受けなかった苦しさに喘いだ。