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高度な科学は魔法に近い

 ここ最近のメイドロボは、ぱっと見た程度じゃ人間
と見分けのつかないものが増えている。
 実際オレも、メイドロボを人間と間違えてしまった
恥ずかしい経験がある。
 だが、その中でも、このマルチは、飛び抜けて人間
に近い。
 喋り方もスムーズだし、表情だって自然だ。
 これまでのメイドロボに感じられた人形っぽい部分
などまったく見当たらない。
 あの耳の飾り(センサーだっけ)がなきゃ、本当に
人間と区別がつかないぜ。

 …もしかして、メイドロボだと言いつつも、じつは
普通の女のコがコスプレしてるだけなんじゃないか。
「そういうのは、コミケに行けばいるかもしれません
よ〜」
 マルチは屈託のない笑顔でそう言った。


千鶴メイド

「でも、階段から転げ落ちたりするなんて、結構ドジ
な最新型だな、お前は」
 ちょっとからかい口調でそう言うと、マルチは苦笑
を浮かべた。
「…はい、そうなんです。わたし、最新型のくせに、
なぜか失敗が多くて…。せっかくいろいろと高性能に
作ってもらっているのに、これじゃ、開発者の方々に
申し訳ないです」
 だが、マルチはそこで落ち込まず、
「ですが、そのぶん一生懸命頑張って、駄目なところ
は笑ってごまかしたいと思います」
 にっこり微笑んでそう言った。
 うーむ、偽善なロボットだな。


初参加で大ハマリ

「う〜んっ」
 歯を食いしばって力を入れるマルチ。
 その肩を、オレはポンと叩いた。
「なんでしょう?」
「…ほらっ、どきな」
「えっ?」
「こんなのいっぺんに運ぼうなんて、また、さっきの
二の舞だぜ? よいしょっと」
 そう言って、オレは重ねた2個の段ボール箱を持ち
上げた。
「あっ…」

 同人誌が詰まった箱だった。
「マルチ…」
「はい?」
「買い込みすぎ!!」


戦闘用…

「…あの、本当にありがとうございました。あぶない
ところを助けていただいたばかりか、荷物まで運んで
いただいて…」
「ははは、いいって、いいって、このぐらい」
 まあ、正直ちょっと腕が疲れたけどな。
「これじゃ立場が逆ですね。わたしは人間のみなさん
のお役に立つために作られたロボットなのに…」

「ま、ロボットっていっても、やっぱり得手不得手が
あるもんだ。マルチは女の子のロボットなんだから、
力仕事は向いてないんだろ、きっと。そのぶん得意な
ことでみんなの役に立ちゃーいいんだよ。得意なこと
は何なんだ?」
「得意じゃないですけど、お掃除は大好きです! 特
に、社会に害をなす虫けらどもを掃除するのが好きな
んです! フ…フ…フフフフフ!」

 こ、これは…ブラックマルチ!?


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