[ 0019 ]

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ち、力がでない……

 だが。
「あっ、うっ…!」
 結局、脚に力が入らずに再び座り込んでしまった。
「無理すんなって! そのうち本当に怪我するぞ!」
 オレが叱るように強く言うと、葵ちゃんはビクッと
肩をすくめた。

「力が抜けたのは、どっちの?」
「……え?」
「いや、どっちの?」
「……」

 バシッ!
 その直後、オレは葵ちゃんの、力が抜けているはず
の左足からハイキックを食らった。


靴のお約束

「力が抜けたのは、どっちの脚?」
「…こ、こっちです」
「左?」
「…はい」
「よし」
 オレはその場にしゃがみ込むと、葵ちゃんの左足を
持ち上げた。

 スベスベの肌はすっかり火照っていて、珠のような
汗が浮かんでいた。
 オレは足首を持って、シューズを脱がせた。
「…せ、せんぱい!?」
「じっとしてな」
 そしてそのシューズを自分の鼻先に持っていき、す
ーっと鼻で息を吸った。

 って、そういう趣味はないな、とりあえず。


ソックスのお約束

 スベスベの肌はすっかり火照っていて、珠のような
汗が浮かんでいた。
 オレは足首を持って、シューズを脱がせた。
「…せ、せんぱい!?」
「じっとしてな」
 同じようにソックスも脱がせると、自分の鼻先に持っ
ていき…。

「……」

 葵ちゃんの視線が痛い。冗談はこれくらいにしよう。


あかり二世?

 校門前に着いたとき。
「せんぱ〜い!」
 向こうからそんな声が聞こえてきた。
 見ると、しっぽを振りながら葵ちゃんが走ってくる。
「よお、葵ちゃん」
「お早うございます、せんぱいっ」
 目の前にやって来た葵ちゃんが、で息をしながら
言った。
「葵ちゃん、……いつから犬チックになったの?」


コンビは志保です

「葵ちゃん、どうしてこんなとこに?」
「いえ、偶然通りかかったんですけど…」
「じゃ、先に教室戻ってるね」
「おう」
 教室に入ってゆくあかりを、葵ちゃんの視線が追い
かけていた。

「先輩…」
「ん?」
「…先輩と神岸さんって、ド突き合いなさってるんで
すか?」

 いや、それなら志保だな。


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