「買いに行くだけでも付き合おうか?」
雅史は言った。
こいつはいつも変に気をつかう。
「いいって、いいって。ガキじゃないんだから」
「…そう?」
「まっ、いい機会だし、たまにはパンはやめて、食堂
でマルチでも食ってくるとすっか」
オレは目の前に女性がいてその腰に手を回すような
手振りをし、腰をカクカク前後に動かした。
「……」
「黙んなくてもいいって冗談だから、――んじゃ」
食堂に行きゃあ、誰か知ってる顔も居んだろう。
そいつと御一緒させてもらうとしようか。
階段まで来たとき、
「あっ、先輩!」
オレは、ばったり、葵ちゃんと出会った。
片手にサンドバックを持っている。
昼休みまで練習してるのか? 葵ちゃん。
屋上への扉を開けると、眩しい陽射しがさんさんと
降り注いでいた。
葵ちゃんは、コンクリートの床の上に躍り出ると、
「うわぁ、いい天気ですねっ!」
陽の光を浴びながら、うーんと背伸びした。
うんうん。
なんていうか、元気な葵ちゃんには眩しい陽射しが
よく似合うよな。
「先輩、こっち! ここに座りましょう」
葵ちゃんが金網の上を指さして言った。
「おう」
オレたちは、よじ登り、並んで腰掛けた。
バランス感覚をやしなうのには、最適だぜ。でも、
落ちたら命はないな。
「ここから見るとさ、ほら、町がまるで、ミニチュア
のセットみたいに見えるだろ?」
「はい…」
「爆破させてぇよなー」
「…え?」
「ミニチュアセットを大爆破! 火薬をセットして、
こう、ドカーンと木っ端微塵に!」
「…はい?」
「最近の映画とかは、見てないのか?」
「…ええ、」そういうのはあまり」
「最近じゃあ、そういうのが流行りなんだよ。宇宙人
とか怪獣とか、とにかく未知の生物に攻撃を受けて、
都市が大破壊されるのが流行ってんだよ」
「へえ、そうなんですか」
「なんなら、今度、一緒に火薬で、爆破しに行こうか?」
「えっ?」
「日頃の練習の息抜きがてらに」
「って、どこにですか?」
「……中東かな?」
「……」