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葵ちゃんの『ツッコミのために』 その壱

 バシィッ、バシッ、バシィッ!
 バシィッ、バシッ、バシィッ!
 歯切れのいい音が、一定間隔を置いて辺り一帯に鳴
り響いている。
 その音の源は、もちろんPCMである。

「そ、そんな身も蓋もないことを……」
 葵ちゃんはそう呟いた。


葵ちゃんの『ツッコミのために』 その弐

 今度はローキックからのワンツー、プラス回し蹴り
を始めた。
 これを実戦的にシミュレートすれば、まず、内もも
のローキックで相手の意識を下に集中させ、そのまま
いっきにインステップからのワンツー、さらにたたみ
かけるように、葵ちゃんの伝家の宝刀上段回し蹴りが
炸裂するわけだ。

 さすが得意技というだけあって、葵ちゃんのコンビ
ネーションのほとんどに、上段回し蹴りが組み込まれ
ている。
 速いし、安いし、店舗も豊富にあり、そのうえボリ
ュームもあるときた。

「吉○屋じゃないんですから」
 葵ちゃんは蹴りを止め、ちょっと冷たい視線で呟い
た。


セクハラオヤジィ

「…あっ、そうそう。それより、そろそろ休憩した方
がよくないか? かれこれ1時間近くも、ぶっ通しで
やってるぜ?」
「えっ。もう、そんなに経ってますか」
「経った経った。いい加減、この辺で少し体を休めて
やらないと、また前みたくペロペロしちゃうぞ」
 オレがそう言うと、
「はあ? はあ? ふう? ふう…?」
 小さな胸の膨らみが、激しくオレを避難しているよ
うだった。


縫い付けられたクリントン大統領のチャック

 オレたちは、木の下で腰をおろした。
「ほい、タオル」
「あ、すみません」
 葵ちゃんは、オレからタオルを受け取ると、それで
額の汗を拭い、そして、木にもたれかかった。
 じつはかなり筋肉に疲労が溜まっていたのだろう、
葵ちゃんは、両手両脚を伸ばすと、糸の切れたロウ人
のようにぐったりとなった。
「?」
 うーん、我ながら意味不明。


葵ちゃんの『ツッコミのために』 その参

「……」
「……」
 なんとなく、お互いに見つめ合ってしまった。
「……」
「……」
「葵ちゃん…」
「…せんぱい」

「よしっ」
 オレは葵ちゃんの頭をポンポンと叩いた。
「わかった!」
「…先輩?」
「こうすると神経衰弱が弱くなるんだ!」

「……」
 葵ちゃんの視線が冷たい。


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