「なあ、もう少しペースを落としたほうがいいんじゃ
ないか? いまからそんなに気負ってると、本番前に
体を壊しかねないぜ」
オレが言うと、葵ちゃんはコクンとうなずいた。
「…は、はい、ありがとうございます。…たしかに、
センパイの言うとおりですけど、だけど、しばらくは
私の好きにさせてくれませんか。どうしても、じっと
してられなくて」
「葵ちゃん…」
「すみません。お小遣い、とっても嬉しいです」
そう言って、葵ちゃんはすっと手を差し出した。
お小遣い? これは暗に『お金が欲しい』って言っ
ているのだろうか? もしそうだとしたら……これっ
て援助交際!?(爆)
結局、その日、葵ちゃんは、夕暮れまでぶっ通しで
ハードなトレーニングを行った。
途中、オレは練習を離れて学校に行き、自動販売機
でスポーツドリンクを買ってきた。
戻ってきて、ちょうど練習を終えた葵ちゃんにそれ
を渡した。
「…あっ、ありがとうございます。いただきます!」
彼女は礼を言って受け取ると、タブを開け、一息で
全部飲み干した。
よっぽどのどが渇いていたんだろうなあ。でも葵ちゃ
ん、そういう飲み方はちょっと……。