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髪の毛を中に入れるのがコツだよね

 坂下との一件以来、葵ちゃんの練習はよりいっそう
激しさを増した。
 練習開始から一心不乱に藁人形に五寸釘を打ち続け
ている。
 カコォーンッ!
 カコォーンッ!
 カコォーンッ!
 響く音も、いつもとは違う。

 しかし、いつのまに坂下の髪の毛なんて手に入れた
んだろう……。


『ニッカボッカ』でも可

「なにか手伝うことはないか?」
 オレはそう言った。
「手伝うって…私の練習をですか?」
「そう」
「…じゃあ、お願いしようかな」
 葵ちゃんは遠慮しがちに微笑んだ。
「あっ、でも、まだちょっと危ないかも」
「なにが?」
「あの、キットカットを持ってもらおうかなって…」

「へ?」
「あっ、おやつです」
「……」
「……」


自販機といえば……

「なあ、もう少しペースを落としたほうがいいんじゃ
ないか? いまからそんなに気負ってると、本番前に
体を壊しかねないぜ」
 オレが言うと、葵ちゃんはコクンとうなずいた。
「…は、はい、ありがとうございます。…たしかに、
センパイの言うとおりですけど、だけど、しばらくは
私の好きにさせてくれませんか。どうしても、じっと
してられなくて」
「葵ちゃん…」
「すみません。お心づかい、とっても嬉しいです」

 結局、その日、葵ちゃんは、夕暮れまでぶっ通しで
ハードなトレーニングを行った。
 途中、オレは練習を離れて学校に行き、自動販売機
でHな本を買ってきた。

 オレって、もしかして最低!?


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