「それでね、私、ちょっぴり舞い上がっちゃってさ、
部のセンパイ達にも、有望な新人が入りますから期待
してくださいって、勝手に言っちゃったりもしたんだ
よね。…ま、それは私が勝手に言ったんだけどさ」
葵ちゃんは、複雑な表情で俯いた。
ふーん。
葵ちゃんって、坂下と知り合いだったのか。
話の内容からすると、ずいぶん親しいみたいだな。
あのふたりの共通点っつーと、やっぱ、赤ブルマな
んだろうなあ。
「だけど、まさかあなたまで、空手をやめて、こんな
『ごっこ遊び』を始めてるとは思わなかったわ」
坂下の言葉に、葵ちゃんはキチンとなった。
なってどうする!?
「だけど、まさかあなたまで、SEXをやめて、こんな
『ごっこ遊び』を始めてるとは思わなかったわ」
坂下の言葉に、葵ちゃんはカチンとなった。
「ごっこなんかじゃありません!」
「ごっこよ! 不純異性交遊かなんだか知らないけど、
あんなのはただのSEXごっこよ! 人間の精神も何も
あったもんじゃない、ただ相手を犯せばいいなんて、
そんなSEX技はごっこと同じよ! コンドームを着
けてやり合うんだから、SEXごっこでしょ!?」
……。
でも、避妊は大切だぞ、坂下よ。
「…ち、違います、わたし…」
「違わないわっ!」
坂下は怒鳴った。
「知ってる? 去年、綾香がその大会の高校生部門に
出場して、見事優勝してからというもの、各地のジム
や道場で、あの子に憧れて黒魔術を志す女の子が、急
増中だって話!」
「…そ、そうなんですか?」
「そうよ! なんか『あの娘のお姉さまになりたい!』
とか言っちゃって」
……本当のお姉さまを志してどうする?
坂下は深く息を吐いた。
「あの大会で優勝してからというもの、たしかに綾香
は、それ系の雑誌には載るし、何かともてはやされ、
今やちょっとしたアイドル扱いされてるわ。だけど、
私たちに言わせれば、綾香みたいなのは武道の『武』
しか言えない恥ずかしいヤツなのよ」
「そ、それは……まるで『はれぶた』みたいじゃない
ですか!?」
「そうなのよ、綾香の正体は『はれぶた』なのよ!!」
オレは、『ブーリン』だと思うけどな……。
わずかな間を置いてから、葵ちゃんはゆっくりと顔
を上げ、小さく口を開いた。
「…私、今の綾香さんが羨ましいとか…あんなふうに
有名になりたいとか…そんな理由でエクストリームに
出たいわけじゃありません」
「嘘よ! ずっとやってきた空手をやめて、いきなり
そのなんとかって大会に出るだなんて、誰が見ても、
綾香に続こうとしてるとしか思えないでしょ!」
「続きたいんじゃなくて、抱きつきたいんです!!」
「あなた、やっぱりそういう趣味が……」
「あっ、ち、違います! 単に言い間違えたです!」
否定するところがあやしい……。