「…わかりました。…じゃあ、私が作ってきます」
「ホントか!?」
「は、はい」
「やったー!」
ぱっぱかぱかぱかーん!
どこかでベルマーレ平塚が勝ったような気がした。
気のせいか。
「…わかりました。…じゃあ、私が作ってきます」
「ホントか!?」
「は、はい」
「やったー!」
ぱっぱかぱかぱかーん!
どこかでファンファーレが鳴ったような気がした。
「…でも、あまり、期待はしないでくださいね。私、
毛先が球で…」
葵ちゃんは、よほど嫌だったのか、意味不明な言葉
を発した。
「なんだ、葵ちゃん? そんなこと気にしてたのか?
しょうがねーなあ。格闘家なんだから、もっといっぱ
い食べないと、体力つかねえぞ?」
「そ、そうですけど…」
「大丈夫、大丈夫、運動してりゃ、そうそう太らないっ
て。さっきは、ちょっとからかっただけ」
「からかった…」
葵ちゃんは、大きな目をぱちっと瞬かせた。
「このお弁当のきんぴらごぼう……」
弁当の話かい!?
「パンは、もう、飽きたよなあ〜」
「…あっ、あの、じゃあ、もし、私でよろしければ、
今度――」
「弁当作ってきてくれるか!?」
すかさずオレが、キラキラ輝いた目で言うと、葵ちゃ
んは『あっ』と口に手を当てて言葉を止めた。
「…よく考えたら、私、お料理とか、あまり得意じゃ
ないんでした」
葵ちゃんは、あははと笑った。
「えー!? 割烹着部なのに!?」
「はいぃ?」
「あっ、いや。なんでもない……」