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葵先輩!?

「それはそうと…」
「はい?」
「葵ちゃん以外、誰もいないみたいなんだけど…」
 オレはまわりを見渡しながら言った。
「他のメンバーは?」
「あっ…」
「休み?」
「…い、いえ、そうじゃなくって、あの…」
「?」

「私以外は、オカルト研究会と掛け持ちの幽霊部員な
んです……」

 葵ちゃんがそう言った瞬間、オレの回りの空気が急
速に冷たくなっていくのを感じた。


一人上手と呼ばないで

「それはそうと…」
「はい?」
「葵ちゃん以外、誰もいないみたいなんだけど…」
 オレはまわりを見渡しながら言った。
「他のメンバーは?」
「あっ…」
「休み?」
「…い、いえ、そうじゃなくって、あの…」
「?」

「まだ、私ひとりしかいないんです。…この同好会」
「ひ、ひとり!?」
 葵ちゃんは、恥ずかしそうにうなずいた。
「ひとりでしてるのか?」
「…は、はい」

 『ひとりでしてる』
 その言葉で、オレは限りなく妄想を発展させていっ
た。
 へっへっへ。
 自然と顔がゆるむ。
 そのとき。

 ずばぁーんっ!!

 葵ちゃんの鋭い蹴りがオレの顔面をとらえた。

 想像するぐらい、いいじゃないかよぉ!!


ドツキ漫才の練習

「学校側の許可さえおりれば、部室や練習場所だって
借りられるんです。そしたら、雨の日も練習できます
し、部費でトレーニング用の器具も買えるし、体操着
に着替える更衣室だって…」
 そういえば、葵ちゃんは制服のままだ。
 いくら着替える場所がないからって、制服のままで
やんなくってもいいだろうに。
 別にいいけどさ。

「…とにかく、ひとりじゃ駄目なんですよね。せめて
ふたりいれば、片方がはりせんを持ったりとか、もっ
と有効なトレーニングができるんですけど…」
「ふ〜ん」

 何のトレーニングなんだろう……。


川島なおみも出ていました

 葵ちゃんはそう言うと、後ろに下がって、深く息を
吸い、構えを取った。
「では、始めます!」
 そして、解りやすい解説を交えながら、いろいろな
技を披露してくれた。
 適当に見物したらすぐに帰ろうと思ってたのだが、
結局その日は、ずるずると夕暮れまで練習に付き合う
羽目になってしまった。

「先輩、今日はどうもありがとうございました! とっ
ても楽しかったです! もしよければ、また来てくだ
さいね! …月曜と水曜は、勝手ですけど、私がお笑
いマンガ道場に通わなくちゃいけないのでお休みです
が、それ以外は毎日やってますから!」
 夕闇に紛れながら、葵ちゃんは笑顔で言った。

 だからそういう古いネタはわかりにくいってば。


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