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似て非なるモノ

 しばらくして…。
「あ、あの…。なにか?」
 目の前のオレに対し、顔を上げた女のコが訊ねた。
「いや、話の続きを待ってんだけど…」

「話の続き…ですか?」
「さっき、えくすとなんたらって言いかけて、そこで
止まってんだけど」
「えくすと…? エクスタシーがどうかしました?」
「……」


いまどき、あるのか?

「…ずっと、私の話を聞いててくれたんですか?」
「うん、まあ、後半からだけど。たまたまそこを通り
掛かったら、面白そうな話をしてたんで」
「…え、面白そう!? じゃ、じゃあ、もしかして、
格闘技がお好きなんですかっ!?」
「んん〜、まあ、好きなほうかな」

「本当ですかっ!?」
 その瞬間、彼女は瞳をキラキラと輝かせた。
「つっても、ぜんぜん詳しくはないよ。どろレスとか
たまに見る程度」
「……」

 冗談だってば……。


くどいっ!!

「エクストリームは、たしかに大会の名称でもあるん
ですけど、どちらかというと、むしろ、ルールという
意味あいのほうが強いんです」
「…ルール? あっ、もしかして、そんな名前の新し
い格闘技があるとか?」
「う、うう〜ん、違うとはいいませんけど、ちょっと
ニュアンスが…。正確には、エクストリームルールを
用いた闘いというべきで…」
「?」

「ええっと、つまりですね、エクストリームルールで
行われる異種格闘技戦なんです」
「ああ!」
 オレはポンと手を叩いた。
「わかってもらえました?」
「ああ、そうか。衣服割烹着戦なのか」
「……あの、そろそろそこから発想するの、やめませ
んか?」


両手に持って一人二役

「か、格闘技って、このオレが?」
「はい!」
 大きくうなずく。
「私、このたび新しく、エクストリーム出場を前提と
した格闘技の同好会を作ろうって思っているんです。
ですが、学校の許可をもらうには、まだまだ部員数が
足りなくて…。ですから、少しでも格闘技に興味をお
持ちの方を捜していたんです」

「…ちょ、ちょっと待った! 格闘技なんて、オレ、
お人形遊び程度したやったことがないんだぜ」
「お人形遊びって……。先輩、それはちょっと……」


くどいっ!! その弐

「部室や体育館はまだ使えませんけど、放課後、月曜
日と水曜日以外の毎日、学校裏にある神社で練習して
いますから」
「あんなとこでやってんのかよ」
「まずは見学に来るだけでも、…お願いします!」
 葵ちゃんは深く頭を下げた。

 お願いされてもなあ…。
 ひたむきさはビリビリと伝わってくるし、一生懸命
なのはよく解るが、それでもやっぱり、このオレに割
烹着なんて着れるわけないし。

 ……くどいな、オレも。


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