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すごいよ、初音ちゃん

「ねぇ、スゴイよ、大事件だよ」
 初音ちゃんはそう言うと、再びテレビのほうに視線
を移した。
 テレビでは、見覚えのある顔の女性リポーターが、
中継先から何やら興奮した声で喋っている。
「大事件って?」
 訊きながら、俺は座布団の上に腰を下ろした。
「人が死んだんだってさ、ここのすぐ近くで。それも
たくさん」
 梓が言うと、
「四人もだよ」
 初音ちゃんが口を挟んだ。

「死人だけにしにん(四人)……」
 ポツリと呟いた初音ちゃんのこの駄洒落を、俺は聞
き逃さなかった。
 ううぅ、初音ちゃん、ラブリー!!


お約束

「すぐ近くって…」
「隣駅だよ。電車で3分くらいのとこ」
 梓が言う。
「そんな近くでか。事故か何かか?」
 初音ちゃんが首を振った。
「ううん、千鶴お姉ちゃんが暴れてるんだって」
「千鶴さん?」
「うん、千鶴お姉ちゃんが町に紛れ込んで、人を襲っ
たの」

「初音ちゃん、なんだか俺の後ろから冷たい殺気を感
じるんで、そういう冗談は止めようね」
「ヒッ! うっ、うん……」


どうせ……

「…日吉かおりさんは昨夜、学校から自宅に戻らず、
両親は、警察に対し捜索願を出していました。警察は
彼女がこの事件の第五の被害者である可能性も強いと
見て、現在全力で彼女の捜索に…」
「ちょ、ちょっと、ちょっと。これって、同姓同名?
それとも同性愛!?」
 いや、この場合レズかどうかは問題じゃないだろう
……。


快感?

 だが、それは全て実際の出来事だった。
 夢じゃなかったのだ。
 現実に、四人の男は遺体となって発見され、かおり
ちゃんは行方不明になっているのだ。
 そして俺は、事件の一部始終を知っている。
 予知夢?
 テレパシー?
 エクスタシー?
 ……最後だったら、ヤバイな。


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