俺の中に潜むもう一人の俺が、この俺という主格の
意識を押さえ込んで表の世界に現れたのだとしたら?
二重人格。
夜毎夢見る殺戮の衝動。
夢は、無意識の自分を映すラフノールの鏡だという。
……超人ロ●クネタは、ここでは通用しないな。
だとしたら、たとえこの『俺』が眠っていたとして
も『そいつ』が目を覚ましていた可能性もあるのだ。
心臓が、ドクドクと激しく動いていた。
俺は意識を振り払うかのように頭を振った。
とにかく、今は確認しなければならない。
千鶴さんが経験した男の数、梓がかおりちゃんとレ
ズったのかどうか、楓ちゃんのスリーサイズ、初音ち
ゃんの本当の年齢。
ああ、これらを知らずに俺は死ぬことはできない。
目的の場所は、駅を離れ、少し歩いたところにある
公園の付近だった。
回転するたくさんの赤色灯が、遠くからでもよく目
立ち、すぐにそこがそうだと分かった。
俺はさらに近付いた。
数台の白黒のパトカーは、人混みに埋もれるように
停車しており、それに混じり、覆面レスラーと思われ
る男が二人と鑑識のワゴンも止まっていた。
なんだ、新●本プロレスの興行だったのか。なにか
警察沙汰になる試合でもあったのか?
遺体は昨夜のうちに回収され、今はその位置を記る
す人型の絵が、アスファルトの路上にチョークで描か
れていた。
手前にひとつ、離れてひとつ、さらに大きく離れて
ふたつ。
この俺に、『ケン、ケン、パッ!』をやれというの
だろうか?