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未知の領域へ その参

 あたしはズボンのチャックに手を掛けて、前を全開
にすると、中に手を突っ込んだ。
「あっ、てめっ、なにすんだ!」
「こうするんだよ〜ん」
 むにゅっ!
 あたしはパンツの中にある、未知の物体に触れた。
「うっ…」
「うっ?」
 い、いけない、思わず漏れちゃった。
「おいっ! こらっ! 何が漏れたんだ! なにが!!」
「…それは、ひ・み・つ! …でも、耕一って早いのね」
「…」


初音ちゃんパニック その四

 突然、廊下に『ひっ』と息を飲むような音がしたか
と思うと、
「こっ、耕一お兄ちゃんっ! 梓お姉ちゃんっ!」
 声の方向に視線を向けると、そこには目を見開き、
体を硬直させた初音の姿があった。
「…ろ、廊下で…な…なにしてる…の?」
「え? …! いや、はっ、初音っ、ち、違うの!
これには、ふかーい事情が…」
 理由を説明しようとした。
 だけど。
「…お、おにいちゃん。そ、それより、ズ、ズボンの
チャ、チャック…チャックウィルソン!!!」
 よく事態が飲み込めない初音がキレた。これには、
ちょっとびっくりかも。ってそんな場合かぁ!?


初音ちゃんパニック その五

 だけど。
「…お、おにいちゃん。そ、それより、ズ、ズボンの
チャック…し、しめたほうがいいよ…」
「え…」
「…そ、それに、わたし、そういうことは、ビデオで
撮ったほうがいいと思うよぉーーーーーっ!」
 ダッ!
「あっ、初音! 初音っ! 初音えぇぇぇ〜〜〜!」
「待っててぇ、いま、ビデオとってくるからぁぁぁぁ」
 真っ赤な顔の初音は意気揚々と、脱兎のごとく走り、
廊下を曲がって見えなくなった。
「…ううっ、はつねぇ〜、いつからそんな子になったん
だぁ〜〜〜〜」


梓ちゃんパニック その壱

 あたしは、のっしのっしと、浴室に近づいた。
「そこまでだ、こういち〜〜〜〜〜〜っ!」
 叫びながら、あたしは戸を開けて、そのまま浴室へ
なだれ込んだ。
「やべっ!」
「耕一さんっ!?」
 耕一と千鶴姉が、同時に顔をひきつらて、こっちを
見た。
 どうやら、ふたりでおしっこしてたらしい。
 …
 間違えた、背中の流しっこだ(笑)


初音の本音 その壱

「…それにしても、いくらお風呂を覗いたからって、
千鶴お姉ちゃんも、もう少し手加減してくれればいい
のにね…」
 無理だな、とあたしは思った。
 もともと不器用な千鶴姉だ。
 あの女の辞書には、手加減という文字がないのだ。
さらに味加減もないのだ。 そう、料理をやらせれば
失敗ばかり…。いや料理だけじゃない。何をやらせても
失敗ばかりの、のろまな亀…
 くそう。
 なんで、料理の上手い私が人気投票で4位で、千鶴
姉が1位なんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!
 千鶴姉の妨害さえなけりゃ、あともうちょいで1位
になれたものを。
「それは、無理だと思うよ…」
 初音はそうポツリと呟いた。
「…ううっ、はつねぇ〜、あんたまで〜〜〜〜」


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