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外にでれば7人の敵がいる

「じゃ、行ってきまーす」
 初音ちゃんがくるりと背を向けた。
「車に気をつけて行くんですよ」
 千鶴さんが言うと、初音ちゃんは『はーい』と素直
な返事をした。
「あ、ちょっと待った、初音ちゃん」
「なに、耕一お兄ちゃん?」
「散歩がてら、その辺まで送るよ」
「え、ホント?」
「天気もいいみたいだし、食後の運動ってことで」
 俺は立ち上がって初音ちゃんに近づくと、ぽんと肩
を叩いた。
「うん、じゃあ一緒に行こう!」
 初音ちゃんが頷く。
「初音、車だけじゃなくて、耕一さんにも気をつけて
行くんですよ」
 千鶴さんが言うと、初音ちゃんは『はーい』と素直
な返事をした。
 ううっ、俺って信用無いんだなぁ…。


御飯食推進委員会

「…ただ、叔父ちゃんが生きてた頃みたく、みんなで
笑ってご飯が食べれるようになればいいなあーって、
そう思って…」
 そんな初音ちゃんの健気な態度に、俺の胸は、痛い
ほど締めつけられた。
 それはやがて心の中で、親父に対するさらなる怒り
へと形を変えていった。
「…お兄ちゃんが来てくれる前はね、…わたし、ご飯
食べるのすごく嫌だった。…だって、ずっと千鶴お姉
ちゃんがご飯作ってたんだもの…」
 うっ、それは確かに嫌だろう。


朝からハード

 帰る途中の道で、ばったり梓と会った。
「よお、暇人」
 エナメルの靴に浣腸用注射器、どこから見ても女王
様ルックである。
 って、お前はどこに行く気だぁ!!


血は争えない…

「待って、楓ちゃん!」
 言うと同時に、手が無意識のうちに伸び、楓ちゃん
の胸を掴んでいた。
 楓ちゃんは身体をぴくっと震わせて、足を止めた。
 ゆっくりと、振り向く。
「こういちさんの………えっちいいいぃぃぃぃぃぃぃ
ぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーッ!」
 ビュンッ!
 どこからともなく、ケ○ヨンと書かれた黄色い洗面器
が飛んできて、顔面に命中した。


とっても元気な耕一さん

「私は…」
 彼女が初めて積極的に話し始めた。
「…私は、なにも変わってません。…変わったとすれ
ば、それは…あなたのほうです」
 なんとも意味深なセリフだった。
「変わったって? 俺が?」
 俺は半笑い気味に言った。
「例えば、どの辺が?」
 そう訊くと、楓ちゃんはやや躊躇いがちな目を俺に
向け、その視線がゆっくりと下方向へスライドしてい
った。彼女の視線の行き着く先は…。
 そこには…。
 楓ちゃんがじっと見つめるそこには…。
 一段と元気になった『彼女に一番見せたくなかった
もの』が、のびのびと天を仰いでいた。
 げっ、いつの間に元気になったんだぁ(笑)


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