[ 0007 ]

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どきどき…

 ガバッ!
 俺は勢いよく布団から上半身を跳ね起こした。

「きゃっ!」
 瞼を開けて最初に視界に入ったのは、びくっと身体
をこわばらせて驚く、女性の姿だった。
 長い黒髪が舞い、再びゆっくりと肩に降りていく。

「…も、もう、驚かさないでくださいよ、耕一さん」
 目の前の女性は自分の胸もとに手を当てて、深く息
を吐いた。
「まだ心臓が、どきどきしてます」
 彼女はそう言って、苦笑いを浮かべた。
「どれどれ…」
 俺は寝ぼけた振りをして千鶴さんの胸に手をあてる。
「えっ、あの…」
 千鶴さんは戸惑い、そして俺をじっと見据えた。
 しかし、拒否はしていないようだ。

 ぷにぷに…ドキドキ。ぶにぷに…ドキドキ。
「あっ、本当だ。どきどきいってる…」
「こ、耕一さん…」
「でも、千鶴さんだと心臓の音がよく分かるよ」
「…えっ?」
 きょとんとした表情をする。
「薄いから…」
 少し間をおいてから、千鶴さんはようやくその意味
を理解した。

 俺は顔面に強い衝撃を感じて、そのまま意識を失っ
た。(笑)


理性というたがが外れた千鶴さんの本心

「なんだよ千鶴さん! 誘導尋問みたいな真似して」
「い、いえ、その、えっとぉ…やっぱり従姉として、
耕一さんの悩みとかもそれとなく聞いてあげたほうが
いいかなぁーって…」
 千鶴さんはぎこちない笑顔を作った。
「よけいなお世話だよ! だったら俺のを聞く前に、
まず千鶴さんの夢を俺に聞かせてよ」

「え、えっと、そのぉ…最近の夢は、耕一さんがとて
も口に言えない変態行為を強要するって内容で…」
「あ、あのぉ…、千鶴さん?」
「はい?」
 きょとんとした表情をする。
「夢っていうのは、人間の本心を象徴しているという
ことなんじゃ…」
「あっ、いけない」
 千鶴さんはぺろっと舌を出した。


理性というたがが外れた耕一の本心

「え、えっと、そのぉ…最近はぐっすり眠ってるせい
か、よく内容を覚えてなくって…」
「ズルいや。もう、いい。分かった。分かりました。
千鶴さんって人がどういう人か」
「あーん、本当なんですぅ!」
 もちろん俺も、本気で怒ってるわけじゃない。
 こうやって千鶴さんを苛めるのが楽しいだけだ。
「まったく、千鶴さんなんか、千鶴さんなんか…」
 俺はどこからともなく鞭を取り出した。
「こうだ!!」
 ビシッ! バシッ!!
「あーん、本当なんですぅ!」
 こうやって千鶴さんを苛めるのが楽しいだけだ。
 って虐めてどうする!?(笑)


見るべきモノは見ている

「謝るくらいなら、最初からするんじゃねーよ」
「…だ、だって、まさかあんな…」
「あんな? あんな、なんだよ?」
 梓の頬がぽっと朱色に染まっていく。
「あんなに小さいなんて…ごにょごにょ…」
 よけーなお世話だぁ!!!!!


まぜまぜ(笑)

「いまさら照れる仲じゃあるまいし、お前に見られた
ところで恥ずかしくもなんともないぜ。…なんなら、
直に見せてやろうか?」
「ええっ!?」
 梓は大きく目を見開いた。
 ジーーーーーーーー…。
 俺はズボンのジッパーを下ろした。
「…ちょ、ちょっと!」
 梓の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
「ほれ」
 その瞬間、梓の呼吸が停止し、顔がひきつる。

 そのときだった。

 突然、廊下に『ひっ』と息を飲むような音がしたか
と思うと、
「こっ、耕一お兄ちゃんっ! 梓お姉ちゃんっ!」
 声の方向に視線を向けると、そこには目を見開き、
体を硬直させた初音の姿があった。

 って展開が違うぞぉ!(笑)


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