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寝癖直し

「ふふ、ホント、耕一さんって体の大きな子供みたい
な人なんだから。あ、ここ…朝立ちになってますよ」
 千鶴さんの細い指が、はねた俺の朝立ちを押さえる。

 圧迫された『あいつ』は、まるで主人に逆らうかの
ごとく憤るように膨張した。(笑)


影でこそこそ

 彼女が俺のことを子供っぽく扱うのは、この当時の
イメージが定着してしまっているからだと思う。
 いつの間にか、俺のバストは彼女を追い越し、彼女
も俺のことを『耕一さん』と呼ぶようになった。そし
て俺は彼女のことを影で『貧乳さん』と呼ぶようにな
った。
「なんですってぇ!」
 ギロリと睨む。
「わぁ、なんで考えてる事がわかるんですかぁ!?」


枕が変わっても…

「…耕一さん、やっぱり慣れない部屋で寝ているのが
原因なのでは…」
 千鶴さんは夢の話を真剣に考えてくれている。
「私だって、男が違うだけでなかなか寝付けないし、
いまひとつセックスできないから悪い夢を…」
「ち、千鶴さん、あ、あのさ…」
 俺の中の千鶴さんのイメージがガラガタと音をたて
て崩れていった。


セーラー服にエプロン

 この乱暴な口調の女の子は、梓(あずさ)。
 柏木家の次女で、齢は俺より二つ下の18歳。
 セーラー服を着てるのは、もちろんパブでホステス
をやってるからだ。
「んなわけ、あるかぁ!」
 火を吐くような勢いでまくしたてられる。


地獄耳

 ところがその性格に関しては(どうやらこれは血の
成せるものではないらしく)、清楚可憐な千鶴さんと
は似ても似付かず、まるで正反対なのだった。そして
体型の方もまるで正反対なのだった。なによりも重要
なのは胸だ。豊満な梓の胸に比べ…
「あ!」
 なぜかそこには、向こうへ行ったはずの千鶴さんが
愛想笑いを浮かべて立っていた。
 彼女が全身から冷気のような怒気を放っているのを
感じつつ、俺はぎこちない朝の挨拶をすませた。


オチはありません(笑)

 梓に言われて朝食をとりに居間へ赴くと、そこには
末っ子の初音(はつね)ちゃんがいた。
 彼女は俺の姿を認めるなり、にっこりと微笑んで、
「おはよう、お兄ちゃん」
 少女の可憐な声でそう言った。
 その瞬間、全国1千万人の初音ちゃんファンの気持
ちがぱっと明るくなったような気がした。


微笑みがえし

「おはよう、耕一さん」
 可憐を装った声でそう言った。
 その瞬間、ぱっと部屋中が白くなったような気がす
る。
 彼女が底抜けに偽善者だから…というわけではない。
 不純度100%のくすんだ輝きというか、汚れきっ
た根性悪が雰囲気をかたくさせるのだ。
 俺はこれを鬼の微笑みと呼んでいる。


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