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千鶴さんの本性 その壱

「もう、謝るくらいなら、最初から言わなければ良い
のに」
 彼女は人差し指でちょこんと俺の頬を小突いた。
 その瞬間、俺の頬骨がバキンと折れ、少し遅れて頬
が熱っぽくなり始めた。

 ち、千鶴さん……そんなに怒ってるんですかぁ(涙)


耕一の本性

 俺はある『重大なこと』に気が付き、あわてて布団
から出るのを止めた。

 そういえば今は朝だった。
 朝といえば、男だったら誰でも無条件に元気が出て
『あの状態』になる時間じゃないか。
 そう、いまの俺はとても千鶴さんの前に出ていける
『状態』ではなかったのだ。
 今出ていけば、きっと千鶴さんは『そ、そんなにし
たいんだったらこの私が…』と言って、押し倒してく
るに違いない。ああいやだ、貧乳はいやだ。
 どうせなら巨乳の梓のヤツに起こしに来て欲しいの
に…。


素直な千鶴さん

 ところが、千鶴さんが次に口にしたのは、意外な言
葉だった。
「…ごめんなさい、耕一さん」
「えっ、な、なにが?」
 俺はキョトンと彼女の顔を見た。
「…朝立ちの話です。耕一さん、本当はすごく朝立ち
しているみたいなのに、私、ふざけた態度できいてし
まって」
 えっ、あ、あれ? 
「いや、そういうわけじゃ…あるん…だけど…」
 ば、ばれてたのか…


千鶴さんの本性 その弐

「…こ、耕一さん、あ、あの、その、きょ、今日も、
お、お元気そうで…その…」
 え? きょ、今日も?
「今日もってことは、昨日も見てたんですかッ!」
 千鶴さんがぎこちなく微笑む。


素肌のままで

すがすがしい朝だというのに、早くもブルーな気分
の俺は、のろのろと居間へ赴くことにした。
 そのとき。
「うわッ!」
 廊下に出た途端、真っ直ぐ俺を睨みつける素っ裸に
エプロン姿の女の子が立っていた。
「お、お前は太田香奈子かぁ!」


初音ちゃん 尽くす!

「おはよう、初音ちゃん」
 俺が応えると、テーブルについていた初音ちゃんは
弾むように立ち上がった。
「耕一お兄ちゃん、座ってまっててね、いま草履を懐で
あっためるから」
「お、サンキュー…ってお前は豊臣秀吉かぁ!」


朝の食卓…

 レモンと大根おろしが添えられたシャケの切り身、
ほうれん草のおひだしに、二切れのお新香。
 手前には箸と、逆さに置かれた茶碗とお椀が並ぶ。
 まさに素朴な和食の朝飯という感じだ。
 俺はこの、『立派なお屋敷を構えてはいるが、実は
貧乏で偽善的』な柏木千鶴のノリが、非常に気に入って
いる。…ってオイ!


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