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お腹減ってるんじゃないの?

「…楓ちゃん、話ってなに?」
 楓ちゃんのふたつの目が正面から俺を見つめた。
 真っ直ぐ俺を見据えた、深く澄んだ瞳。
 …これだ。
 まさしくこの目。
 夢の中の少女と同じ目だ。
 俺は目を細め、楓ちゃんを見つめ返した。

 楓ちゃんは、しばらく何も言わず、じっと俺の目を
見つめ続けた。
 不意に、初音ちゃんの言葉が脳裏を過ぎる。
『というわけで、今夜のお夕飯は『肉じゃが』です。
梓お姉ちゃんの肉じゃがって、本当に美味しいのよ。
お兄ちゃんも期待しててね』

 こんな状況でこんな事を思い出す俺って…。


錯乱状態

「…明日、帰ってください」
 彼女は短くそう言った。
「えっ?」
 俺は咄嗟に聞き返したが、楓ちゃんは何も応えず、
また顔を伏せてしまった。

 …帰れ?
 …明日、帰れって?
 楓ちゃんは今、そう言ったのか?
 数秒の沈黙を挟んでから、
「今…俺に好きって言った?」
 俺は錯乱して、もう一度訊き返した。
 楓ちゃんは、ぎこちなく微笑んで、首を振った。


アニメフリーク

「…時間がないんです」
 楓ちゃんは、俯いたまま小さく答えた。
 そして、それっきり、何も言わなくなった。
「時間が…ない? どういう意味?」
 俺が訊いても、彼女は何も応えなかった。

「…さっきから、いったい何のことを言ってるのか、
君が何を言っているのか分からないよ…」
 楓ちゃんは目を伏せたまま、黙っている。
「カヲル…じゃない、楓ちゃん!」

「…」
 楓ちゃんは顔を上げて、呟いた。
「アニメの見すぎです、耕一さん」


楓ちゃんはそんなことしないもん(笑)

 細い身体。
 いきなり強く抱きしめると、そのまま弾けて消えて
しまいそうな気がして恐かった。
 だから俺は、そっと優しく、…そして徐々に強く、
彼女の身体を抱きしめた。

 拒んでいる様子はなかった。
「楓ちゃん…」
 俺はゆっくりと顔を寄せ、楓ちゃんの柔らかな桜色
の唇に、そっと自分の唇を押し当てた。
「…んっ」
 その瞬間、楓ちゃんはきゅっと俺の袋を掴んだ。

 イテテテテ!(謎)


以心伝心 〜楓編〜

 俺は、楓ちゃんを求めていた。
 …心も、そして身体も。
 失っていた何かを取り戻すような気持ちだった。
 この切ない気持ちは、いったい何なのか。
 その答は、彼女ともっと深く身体を重ね合うことで
解るような気がした。
 俺は小さく息づく楓ちゃんの胸もとに手を伸ばし、
服の上から乳房に触れた。
 どうやらブラジャーをつけていないらしい。

 サワサワ。
 …。
 これじゃぁ、つける必要もないな…。

「…んふっ」
 俺と唇を重ねたままの楓ちゃんが、抗議の鼻声を漏
らした。


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